瞬く間に過ぎてゆく、ディワリホリデー。それにしてもここ数日のバンガロールは、夢のように爽やかな気候だ。青空は高く澄み、久しく降り続いた雨に洗われた緑が、陽光に照らされて、瑞々しくきらめいている。
昨日はTAJ WEST ENDのヴェトナム料理レストラン、BLUE GINGERで友人とランチを共にした。
「え? BLUE GINGERに行くの? 僕も久しぶりに行きたいな。一緒に行ってもいい?」
という夫を振り切って、今日は友人とゆっくりと話がしたいのだ。一人で車に乗り込み、ディワリホリデーで閑散とした道路をすいすいと走り、西へ向かう。
ゲートをくぐり、蓮池を左手に眺め、さてオープンエアのこのレストランはまた、リゾートのような雰囲気を漂わせて心地よい。
シーフードのランチセットを注文。よく冷えたスパークリングワインを飲み、本当に気分がよい。何を話していても、楽しい話のような気分になり、笑ってばかりいる。単に酔っぱらっているだけともいえる。
移住前の旅行時に、また移住直後に滞在していたこのホテルは、わたしにとってことのほか落ち着く場所。
コロニアル様式の上品な建築。規模が大きすぎないのがよい。
スタッフは、ほどよい距離感でフレンドリー。
庭の緑は豊かで、花々は美しい。
あたりは静寂に包まれていて、時折、鳥のさえずりが聞こえてくる。
ランチのあと、ホテルの裏手にある庭を散歩する。
芝生に寝転がってまどろみたいほどの心地よさだ。
古(いにしえ)のバンガロールの、のんびりとした魅力がまだ、この場所には残っているような気がする。
散策の後、RAINTREEに立ち寄って買い物をし、友人と別れて、帰路につく。
途中、野菜や果物を買い求めに、Namdhari'sに立ち寄る。長雨のせいか、流通のせいかで、トマトが高騰していると聞いていた。普段は1キロ10数ルピーのトマトが30ルピーだった。
数日前には50ルピーにもなっていたとスジャータが言っていた。日本に比べれば遥かに安いが、この国の人々の平均年収を思えば、決して安くない。インドの食卓に欠かせないトマトやタマネギ、ジャガイモの価格は、庶民の生活に大きく影響する。
ディワリ前に、トマトがこんなに高騰するとは、「ちょっとした問題」である。
さて、夕飯は久しぶりに鶏の丸焼き。ニンジンやタマネギ、インゲンなどを適当に切って、ガーリックもたっぷり。
塩こしょうとオリーヴオイル、そしていつもならバターだが、先日アーユルヴェーダのドクターが「ギーの方が身体に良い」と言っていたことを受けて、ギーをまぶす。
鶏肉も野菜も一緒に、油や塩こしょうを刷り込んで、オーヴンに入れて焼くだけ。トマトスープを添えて、シンプルだけれどとてもおいしい食卓。
夜はあたりで、花火や爆竹の音。もう、すでに耳が慣れてしまったのだろうか。そんなには、騒がしいと思わなくなっている。
そしてディワリの本日。朝、ニューデリーの義理両親から電話がある。「ハッピー・ディワリ!」と挨拶を交わし、今日は一日灯火をともしておくように言われる。
キャンドルやオイルランプに火を入れて、ガネイシャはいつものように、メイドのプレシラが庭の花を摘んで飾り付けてくれた。
アパートメントビルディングの玄関の随所に、ランゴリが描かれている。色粉で描く吉祥紋だ。祝祭日、祭壇の前や玄関先の床に描かれるこのランゴリ。女性たちが、下描きすることなく、慣れた手つきで描いていく。
さて、メイドのプレシラ、庭師一家、ドライヴァーにディワリのボーナスと、買って来ておいたロッテのチョコパイ(メイド・イン・インディア)を渡す。
みな、とてもうれしそうだ。
わたしたちの不在時、この家を守ってくれるプレシラと庭師一家には、特にお世話になっているので、これからもトラブルなく、お互いがよい関係でいられるようにと願う。
午後、わたしは書斎で仕事。
夫は庭で本を読んだり、書き物をしたり、思い思いに過ごす。
やはり今回は旅行に行かず、こうしてバンガロール宅でゆっくりと過ごすのはよかったと思う、
そういえば、今朝、アルヴィンドは久しぶりに義姉スジャータたちの通うヨガ教室へ行ったのだった。自分ひとりでやるのとは違い、師匠から手ほどきを受けながらのヨガは、格別だったようだ。
ヨガのあとも、いろいろと話をしたそうで、とてもリラックスして帰って来た。明日も明後日も早起きをして行くという。
ところで我が家の庭には、さまざまな蝶がやってくるが、今日はまた、格別に美しい「天竺揚羽」がやってきた。以前もここで紹介した蝶(←文字をクリック)である。この蝶の美しさは、角度によってその白い部分が、青のような、銀のような光を放つことだ。
左の写真は白く見えるけれど、上の写真は少し青みを帯びているかと思う。
ちょっと角度が変わっただけで、微妙に異なる色を見せてくれる。
飛んでいるときはなおさら、その微妙な色の変化が美しい。
洗濯物が気持ちよく乾く日差しが、うれしい。
青空から届くプロペラ機のエンジン音が懐かしい。
ブランケットがほかほかになって、うれしい。
パンケーキを焼いただけのランチがおいしい。
なんでもない、ささやかな心地よさがうれしい。
夜はまた、義姉スジャータたちと、南京酒家(ババリンの店)で夕食。5人だと、いろいろな料理が注文できるのがいい。
自宅に戻れば、アパートメント界隈は花火大会のオンパレードで。あちこちで鳴る爆竹の轟音。
インド生活も丸三年が過ぎようとしている。
わたしはすっかり、インドに住んでいる。
今年のディワリは、これまでになく、心身に染み入ってくるディワリである。