せっかくヘアサロンで前髪ブローの仕方を教えてもらったのに、うまく再現できぬ上に、朝は小雨に降られて、元の木阿弥な感じの我。そんなことはさておき、本日、FM熊本である。
「マジカルフライデー」という番組で、今年の1月より隔週金曜日の朝、インドの話題を電話でレポートしている。写真は、いつもインドの話を興味深く聞いてくださっているDJの相越久枝さんだ。
今朝は7時半に家を出て、まずは博多駅を目指し、そこから8時過ぎの「特急リレーつばめ」に乗り、上熊本へ向かった。熊本へ行くのはいったい、いつ以来だろう。小学校のとき以来だろうか。
電車で行くのは、ちなみに初めてだ。小雨の降る中、自宅から西鉄名島駅まで5分ほど歩き、そこから西鉄電車で隣の千早駅まで行き、JRに乗り換えて博多駅へ行き、そこからまた電車を乗り換えて……。
久しぶりに通勤時の込みあった電車に乗って、もうそれだけで、ぐったりだ。いくらムンバイ&バンガロール二都市生活とはいえ、ドライヴァーがいて、自分で重い荷物を運ばずにすむインドでの生活の方が、よほど楽だと数日目にして痛感する。
日本に帰って来たら、あれこれと写真を撮りたくなるだろうと思っていたのだが、初日からあまり撮っていない。撮りたいという衝動があまり沸かないということもあるが、荷物で両手が塞がっていて、気軽にカメラを構えられないのだ。
それにしても。ホームに並ぶ人たちを見て思う。企業の重役も、パートの主婦も、通学の小学生も、日雇いの土木作業員も、みんな同じ列車にすし詰めになって、揺られてゆく。
なんと平等で、「格差のない社会」だろうか。
この国で生まれ育ち、他国を見ないままにいれば、尺度は日本の価値観であるから、その範囲内での基準となる。しかし一歩この島から足を踏み出したら、たちまち尺度は揺さぶられる。
いちいちタクシーに乗りたくなる衝動を、ぐっと抑えることしきりのここ数日。日本のタクシーは本当に高い。マンハッタンのイエローキャブですら、もっと安い。
ムンバイの市井を走るおんぼろタクシーが懐かしい。なにしろ初乗りが30円とか40円だもの。少々汚くったって我慢しなきゃというのものだ。
さて、右の写真が「特急リレーつばめ」である。
クリーム色の車体に、赤とか緑のストライプが入った列車を想像していたのだが、いつのまに、こんな姿に?
グレーのモダンな車体である。
モダンはいいが、こんなローマ字では、これが「つばめ」とすぐにはわかりにくいのではないか。特に年配の人には。乗り間違えたりする人はいないのだろうか。などと思いつつ、列車に乗り込む。さすがにきれいで快適な電車だ。
博多駅を離れてほどなくすると、周囲はたちまち田園風景。
ゆっくりゆっくりと農地を移動する耕耘機の周囲に、何羽もの白鷺が集まっているようす。
橙色の柿をたわわに実らせた木々が点在しているさま。
車窓からの光景をぼんやりと眺めながら、心地よい振動に身を任せる。
さて、福岡県と熊本県の県境にある「荒尾市」を通過。
わたしは、父が若かりしころ一時転勤していたこの荒尾市で生まれた。
左の写真がそのあたりの光景だ。
さきほどインターネット上の地図で確認したところ、どうやらこの場所から数キロ圏内の場所が「わが生誕地」のようである。
それにしても、のどか。というか、(ど)田舎だ。
さて、上熊本の駅に到着し、タクシーでFM熊本へ。
タクシーの運転手さんがまた女性だった。昨日のバスに引き続き、女性の運転手さんの存在に、小さく感動する。駅から5分ほどのところに、FM熊本のビルがあった。
少々早めに到着したので、30分ほど、久枝さんが収録しているのをウェイティングルームで聞きつつ、待たせてもらう。歯切れの良さ、無駄のないコメント、絶妙なタイミングでの切り返し、声の美しさ……。
さすが、プロの話しぶりは見事だと感嘆しながら、耳を傾ける。その後、久枝さんはじめ、スタッフの方々と挨拶を交わして後、わたしもスタジオに入り、収録。
いつもは電話なので、久枝さんの顔が見えないのに加え、我が家の電話が悪いのか、回線が悪いのか、音が聞き取りにくいことが多々ある。
しかし今日は向かい合っての会話。なんて話がしやすいのだろうと感激である。いつもに増して、お話ししていて楽しかった。
収録の後は、久枝さんをはじめスタッフの方々へ、インドからのお土産を手渡す。みなさん、喜んでくださった。
ちなみに今回、インドから持って来た30キロの荷物のうち、およそ半分がお土産類であった。布製のポーチやバッグ、天然素材の石けんやお茶など、さまざまだ。すでにここ数日でたくさんの方々にお渡ししたが、とても好評だ。
特によい香りのするさまざまな種類の石けんが人気で、多少重かったが買って来てよかったと思う。
向かって左のお二人は番組のスタッフの方、そしてわたしの隣にいらっしゃるのは、高野さん。わたしの「前任者」だ。
彼女のご主人もインド人で、1年前までデリーにお住まいだった。現在は出産を控えて熊本のご実家に滞在中だ。
このサイトを通してわたしのことをお知りになり、デリーを離れる際に、このFM熊本の仕事をわたしに引き継いでくれたのだった。
昨年の冬、デリーで一度お会いしたことがあるのだが、今回まもなく臨月のなか、スタジオまで会いに来てくださった次第。このあと、ランチを共にしたのだった。
高野さんの車で熊本駅まで送ってもらい、博多へ戻る。
と、ちょうど博多方面行きの特急リレーつばめが数分後に到着するとの表示が見られた。その表示があった1番ホームに立ち、ほどなくして入って来た列車に乗り込み、一段落。
1時間半ほどで博多だな。と思いつつ、車内放送に耳を傾けたところ、なにかが、おかしい。
「次の停車駅は、新八代です」
八代? そんな駅、途中にあったっけ? ……ま、まさか!
車内を見回すが、どこにも路線図のようなものがない。席を立って、駅員さんを探す。
「この電車、博多行きですよね?」
と、巡回していた駅員さんに尋ねたところ、
「これは新八代行き。鹿児島方面ですよ!」
ががががガガ〜リ〜ン! である。
なんでよぉ〜、1番ホームに博多行きって電光掲示板があったじゃないのよ〜。あれは単なる案内の表示だったの〜?
年寄りの心配をする前に、自分を心配しろ、という話である。
特急で逆走。次の駅まで20数分。これで軽く1時間のロスである。うぉぉぉ〜。
せっかくだから、記念撮影くらいはしておこうと思う。
ま、不慣れな日本。こんなこともあるだろう。
そして、今度は確実に博多へ向かう特急リレーつばめに乗り込んだ。
というか、この特急リレーつばめは八代が終着駅なので、間違えようがないのだ。
列車に乗って一息ついたところ、車掌さんが切符を切りに来た。
「間違って逆方面の列車に乗ったんです」
と言いながら、切符を示したら、
「では、特急料金で600円になります」
と、傷口に塩をすり込むようなことを言う。
「え? わたし、間違えて反対に乗ったんです。駅の外に出たわけじゃないですよ。それなのに払わなきゃいけないんですか」
と聞き直したら、
「特急料金はお支払いいただきます。本当は往復分、1200円をお支払いいただく必要があるんですが、まあ、600円で」
「え〜っ。表示がわかりにくかったんですよ〜!」
踏んだり蹴ったりとはまさにこのこと。
見逃してくれたって、いいじゃん! けち!
そりゃ間違えたわたしが悪いけど、この区間の列車はガラガラだし、多大な迷惑をかけたわけでもないのに。
と心で叫びつつも、ここは日本だし、しかたない。郷に入れば、従いたくないけど、郷に従えだ。
渋々サイフを開いて、渋々600円を支払った。
世知辛い世の中である。
気を取り直して、久枝さんにいただいたお菓子を開封する。
おいしい。
車内販売のコーヒーでも買いたかったが、なんだか悔しくて我慢した。
とまあ、若干、波乱が見られたものの、楽しい熊本旅行であった。
夕刻、博多駅へ到着。
連休明けの火曜から3泊4日で京都へ赴くことは決めていたが、まだ宿を確定していなかったので、その手配をすませようと思う。
実はここ数日、インターネットの旅サイトなどをあれこれと調べていたのだが、紅葉が美しいこの時期、どのホテルも値段は通常の2倍以上だということがわかった。にも関わらず満室ばかり。世間は不況と言うけれど、とてもそうとは思えない。
当初は「旅館に1泊、ホテルに2泊」などと考えていたが、とてもそんな呑気なスケジュールを立てていられない状況だ。旅館をあきらめホテルに絞り込んでみるが、めぼしいところはどこも満室。
昨夜、目をつけていたホテルの中では唯一、京都ホテルグランヴィアだけが、ホテルのサイトからの予約で、空室を見つけられた。何種類かの部屋が提示されていたので、このホテルはまだ余裕があるのだろうと思われた。しかし、どうにも割高感がある。
同じホテルながら、JR九州の旅行カウンターでもらっていたカタログにある新幹線とホテルのパッケージの方がかなりお得だったので、今日、予約を頼もうと、再び旅のカウンターに赴いたのだった。
ところが、窓口で確認してもらったところ、カタログにある数十のホテルは、すでにどれも満室。なんてこったい!
やはり自分で直接予約するしかなさそうだ。ともかくは新幹線の割引チケットだけを購入して、慌ててインターネットカフェへと向かった。
こうなったら割高でも仕方あるまいと、ホテルグランヴィアのサイトを見たところ、一晩でもう、部屋が全部なくなっているではないか!
その後、30分ほど「超集中」してホテルを探しまくり、なんとか希望に合致するホテルを見つけて予約した。やれやれ。どれだけ人気があるんだ秋の京都。知らなかった。
いくら紅葉の時季とはいえ、決して安くないホテルが平日にも関わらず満室だらけとは、景気がいいことこの上ないではないか。
海外旅行に出かける予算がないから、国内を旅行するのだとの話も聞いたが、物価の高い日本。国内旅行だって、海外旅行並みかそれ以上に高いと思うのだが。
メディアから発信される不景気の話題と、自分の目で見る街の様子とが一致せず、なんだかわからない、日本である。
●マジカルフライデーのサイトの「番組ブログ」に今日のことが記録されていました。
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