目覚めて、昨日の京都巡りの写真を載せようとインターネットにアクセスしたら……ムンバイのTHE TAJ MAHAL PALACE……ここでもしばしば紹介している、タージマハル・パレスホテルから火焔が上がっている写真が……!
ムンバイで未明、同時多発テロが発生した。タージマハル・パレス、そしてオベロイホテルなど、わたしたちにとってもあまりにもなじみのある場所、そして国際空港やヴィクトリア駅、病院や映画館などが攻撃されたようで、80名が死亡、250名が負傷と報道されている。
日本人も1名、亡くなったようだ。
犯人は海からボートで侵入したらしい。どちらのホテルも、アラビア海に面したホテルなのだ。現在、テレビでBBCニュースを見ているが、深夜に起こったテロを知らず、早朝の今、オベロイの目前のマリーンドライヴをジョギングしている人も見られるという。
ホテル内はまだ犯人グループに占拠されており、まだ数十名のゲストが部屋に閉じ込められている状態。日本時間の正午を過ぎてなお、銃撃戦が続いているとのことだ。なんということか。
ここ数カ月、タージマハル・パレスのセキュリティは過去になく厳しく、オールドウイング(旧館)の通路は閉鎖され、正面玄関だけがあいていた。そこから入るにも、手荷物検査が行われ、常にものものしい様子だったのに。
なぜそんなにも殺傷力のある武器を、ホテル内に持ち込めたのか。セキュリティが緩む深夜をねらったのか。犯人は米国人、英国人を中心に、外国人をターゲットにしているらしいとのこと。
テロが起こるであろうことは、昨今のインドの様子を見ていれば、予測できないことではなかった。正直なところ、列車やローカルの商店街を狙い、低所得者層や中流層を攻撃するテロリストの意図が、そのテロリストの正体にもよるが、理解できなかった。
もちろん、そんなことを望んではいなかったのだが、富裕層を攻撃する方が、特にインドのような国においてはダメージが大きいに違いないということを、ことあるごとに思っていたことは事実だ。
インドの富裕層の社交場であり、世界のビジネスマンが集う、特には、これら外資系ではないインドのホテルであるところのタージとオベロイがターゲットになったら、たいへんなことになるだろうと思いを馳せることは、しばしばであった。
インドのこれら高級ホテルは、他国における高級ホテルよりもより、その位置づけ、重要度が極めて高い。その詳細については、今は触れないが、ともかくは重要な存在なのだ。
そこがついには、ターゲットとなってしまった。
英米にとっては「正月並み」に大切なサンクスギヴィングホリデーを前にして、この事件。あらゆる意味で、インド経済だけでなく、インドに関わる世界に、かなりのダメージを与えるであろう。
2001年9月以来、いったい何度、身近な場所で起こるテロのニュースに、翻弄されてきただろう。インドに移住して以来も。しかしこのテロは、移住以来の3年で最も強烈だ。いや、テロの多い、善し悪しは別にして「テロ慣れ」しているインド国内においても、これまでとは異質の、このテロのインパクトは相当に大きいはずだ。
セキュリティが厳しいのは見せかけばかりで、実際は何ら役立っていなかったということもまた、今回、明るみに出た形だ。
タージマハル・パレスのあるコラバは、わたしたちの住まいに近く、オベロイのあるナリマンポイントは、アルヴィンドのオフィスがある。南ムンバイ。我々の、ムンバイ生活の拠点である。
二人してムンバイを離れて、のんびりと京都で観光をしていて、個人的には幸いだったが、しかし幸いだったなどという言葉を使うことを憚られる。
あのとき、ワシントンDCからニューヨークに帰りたかったように、今、ムンバイに戻りたい。わたしが戻ったところで、どうすることもできないのに、ムンバイ宅に戻りたいと思う。
夫は明後日の便で、一足先にムンバイに戻る予定だが、空港が機能するかどうか。
今日のところは、昨日の楽しき旅のレポートを残す気分にはならず。
亡くなった人々の冥福を祈りつつ。
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ともあれ、わたしたちがしんみりしたところで、どうにもなりはしないので、せっかくの京都滞在、今日もまた楽しもうと思う。
●2006年にムンバイを襲ったテロの記録(←文字をクリック)