ムンバイに戻って来た。いつもと同じ人ごみで、いつもと同じ喧噪で。蒸し暑く、日本の寒さがすでに遠い。9/11の1週間後、ワシントンDC宅からニューヨーク宅に戻ったときのような悲愴感は、当然ながらまったくない。
空港からの帰路、オフィスにいる夫をピックアップするため、タクシーでナリマンポイントに立ち寄った。アラビア海に面して弧を描く「真珠の首飾り」と呼ばれるマリンドライヴ。
海に面する2棟のビルディングの明かりが消えている。オベロイホテルとトライデントホテルだ。間近を通過するとき、両手を合わせた。
数日ぶりに再会の夫が、オフィスの入り口の前で、満面の笑みで、大きく手を振っている。ずいぶん会っていなかったような気がする。
自宅に到着し、水を飲み、一息ついて窓の外を見やる。昼間はもちろん、夜は照明に照らされ、いつも見えていたタージマハル・パレスホテルのあのクーポラ(天蓋)が、闇に溶けて見えない。
ホテルが再び機能するまでに、1年はかかるようだ。
日本滞在中、心に巡った「日本のこと」を綴りたいのに加え、今回テロが起こったことで、それに関するさまざまな思いを記したいところだが、さすがに疲労困憊である。
少し落ち着いて、しかし時間を見つけて、自分の考えを整理するためにも、これらは必ず記録しておこうと思う。
さてさて、インドでの日々が始まる。それにしても、蒸し暑さのせいか身体が重い。いや、日本滞在中に1、2キロ増量したせいだろう。身も心も、とっとともとに戻して、軽やかにいきたいものだ。
今朝は早朝5時に起床。7時10分の便で福岡から成田へ向かい、成田とムンバイを結ぶ全日空の直行便に乗り換えた。上の写真は、福岡から成田への機内から撮影した「日本の夜明け」だ。
2007年7月の就航開始当初は、全席全便ビジネスクラスで始まったこのANA Business Jet。途中からプレミアムエコノミー席のある便も加わり、ムンバイー成田間を毎日往復している。
さてテロから約一週間後。全36席がビジネスクラスの小型機ボーイング737によるこの便は、空席がちだろうと予測していた通り、乗客はインド人男性1名、日本人男性1名、そしてわたしの計3名である。対する客室乗務員は4名と、まるで貸し切り状態。
客室乗務員によれば、当初は20名以上の予約が入っていたが、キャンセルが相次ぎ、とはいえ今日は7名が搭乗する予定だったが、他の4名がNo Show(キャンセルせず現れない)だったとのこと。
こんなことなら、荷物30キロなど言わず、100キロ分くらい載せてもらいたかったと思う。あれこれと買ったものの、荷造りの最中に重量超過が発覚して、実家におきざってきた米、味噌、醤油、日本酒がしのばれる。
ところで往路はムンバイから成田に直接乗り入れたが、復路はジェット気流の関係で、長崎で一旦給油。正午ごろ、再び九州上空にとんぼ返りして、長崎空港の待合室で待機した。
左の写真は、成田から長崎に向かう途中の富士山。東へ飛んで、西へ飛んで、と面倒だったが、富士山が見られたのはよかった。右の写真は長崎上空。数々の島が浮かび、美しい眺めであった。
短い待ち時間にも関わらず、成田空港の免税店で、日本酒だのおかきだの雑誌などを大急ぎで購入した。ここで買う分には、重量の制限なども、基本的にはない。
さらには長崎空港での待ち時間、夫好物のカステラも数本(冷凍保存しようと思う)、加えてやはり夫の好物である長崎皿うどんの素なども買い込む。
長崎空港では、乗客である日本人男性と話をした。彼は以前、インド企業に十数年勤めていたとのこと。現在は日本企業に勤務しているものの、日印間の仕事をしており、今回はボードミーティング(役員会議)に参加するため、1泊滞在で渡印するらしい。
日本とは、有事の際の対応が非常に早く、「自粛の国」である。これから先、日印間ビジネスが一時的でも冷え込むことは、間違いないだろう。……といった込み入った話は後日にまわすとして、今回、機内食が非常においしかった。
往路の機内食は、インドの食材をうまく使った日本料理で、なかなかに美味であったものの、「それなり」だった。しかし帰路は、すべて日本で調理されたであろう日本食だっただけに、かなりおいしかった。
なにしろ前菜に「ふぐ刺し」が出たのだ。ふふふ。数年ぶりのふぐである。メインのビーフハンバーグも美味で、食後のチーズとワインもおいしく、やったら贅沢な気分。デザートの入る隙がなかったのが悔やまれる。
それにしても、がらんとした飛行機は超快適。後部座席はわたしだけだったので、途中で足腰を伸ばしてエクササイズをしたり、歩き回ったり、まさに「完全貸し切り」である。燃料が、本当にもったいないというものである。
ビジネスクラスを満喫しているわたしであるが、実は往復路、貯めたおいたマイレージでビジネスクラスのチケットを購入した。以前もこの手段を使ったので、かつて記したかもしれないが、有効な情報なので再度書く。
ANAのマイレージだけでは足りない分、アメックス (AMERICAN EXPRESS CARD)で貯めたポイントを移行して使用している。アメックスのポイントは、スターアライアンス系の航空会社のマイルに移行できるという点において、非常に価値がある。
少々年会費が高くても、それを補ってあまりあるサーヴィスだと、旅の少なくないわたしはそう思う。わたしは米国で入手したアメックスを使っているが、日本のアメックスも同様のサーヴィスがある。
手荷物の重量を増やせることができればなおよいが、ともあれ、日本の銀行口座から引き落とせる日本初のアメックスにも、今回、発行の申し込みをしてきた。天神の大丸の入り口あたりでちょうど申し込みのキャンペーンをやっていたのだ。
今回、80,000マイルでムンバイ-成田往復のビジネスクラス及び福岡-成田往復の航空券に引き換えた。空港使用料など数万円の現金は支払ったが、かなりのお得感である。
尤も、80,000マイルを貯めるのは、決して容易いことではないのだが、ともあれ。
さて、明日は帰国早々ではあるが、結婚式に招かれているので出席する予定だ。疲れを取るためにお隣のタージ・プレジデントホテルでマッサージでもしてもらい、「万全な態勢」でインド生活を楽しもうと思う。