■アカデミー賞たっぷり受賞の『スラムドッグ・ミリオネア』のことなど
月曜の朝。米国のアカデミーアワード授賞式の様子を見るべく、目覚めて早々、テレビをつける。
日本の映画『おくりびと』が外国語映画賞に選ばれた瞬間、拍手しながら大喜びしてしまった自分に驚く。よくわからんが、とてもうれしかった。
モッくん。同じ歳なんだよな。『2年B組仙八先生』懐かしいな。あんまり見てなかったけど。
シブがき隊。人気だったな。ほとんど興味なかったけど。と言うわりには、
「ナイナイナイ! 恋っじゃない!」
「じたばったするなよ! 世紀末がく〜るぜ!」
「欲しけりゃ今すぐ! す~が~り~つ~け~!」
バスケの部活が終わった後、後輩たちと振り付けしながらよく歌ったものである。
それにしても、シブがき隊。なんて名前だ。それでもって、この歌。なんて歌詞だ。
モッくんは、当時から「ザ・ベストテン」なんかで書道の腕前を披露するなど、顔はアイドルなのに、やってることはあまりアイドルっぽくないところが、印象的だった。
ちなみに彼は、20代後半のときインドを旅行して、死生観に影響を受けたらしい。その延長線上にこの映画があるのだという。
遠藤周作の対談集『「深い河」をさぐる』にモッくんは登場していて、とても真摯にストレートに素直に、自分の意見を語っていて、感銘を受けたことがあった。
ぜひとも『おくりびと』を見てみたいと思う。
『スラムドッグ・ミリオネア』は、監督賞をはじめ、脚色賞、撮影賞、編集賞、作曲賞、歌曲賞、録音賞の全8冠を受賞した。
イギリス映画とはいえ、インド色たっぷりの映画が、こうして世界的な映画賞を受賞することは初めてのことであろう。たとえ瞬間風速的な出来事とはいえ、ムンバイという地名が、テロ以外でも世界の人々に知られる大きなきっかけである。
インドではすでに、正規のDVDも出回り始めているかと思う。
ムンバイに住んでいることもあり、わたしは先入観たっぷりで映画を見てしまった気がする。だから、今ひとつ、「エンターテイメント」として楽しみきれてなかったのだと思う。
もう一度、まるでムンバイを知らない人間のような心持ちで、この映画を見てみようと思う。
空港そばのホテル、グランド・ハイアットでヴェンチャーキャピタルのカンファレンスが行われていた。
昨年11月末にオベロイ・ホテルで行われる予定だったが、テロのため延期となっていた。
カンファレンスに出席していた夫をピックアップして、ともに空港に向かったのだった。
ホテルには、世界各国からのビジネスマンたちが集っていた。夫のMBA時代の友人、クリシュナも来ていた。彼も近々インドに戻ってくるという。
きらびやかなホテルの、澄んだ空気のなかに身を置いて直後、空港に向かう途中の小さな脇道は、スラムに面している。写真の左側に小さく見えているのは、スラムの屋根屋根だ。
多分スラムにさえおさまりきれない彼らは、路上で寝起きしている。ムンバイでは、人口の半分以上が、こんなスラムに暮らしている。いったいどういう街なんだ。
このごろは、バンガロールに戻ってくるたびに、思う。ムンバイとの二都市生活を始めて、本当によかったと。インドは、どの国にも増して多様性の国であることは幾度も記してきた。
バンガロールに住んでいて、のんびりとしているだけでは、この国のごくごく一部だけを知ることしかできない。言葉や情報を発信する者として、さまざまな土地の、さまざまな都市の実情を、自分の経験を通してじっくりと把握しておくことは大切だ。
デリーは夫の故郷であり、実家があり、身内が暮らし、それだけで切っても切れない縁のある都市である。それに加えてムンバイとバンガロールに住まう機会を得られたことは、実に幸運だったと、このごろは切にそう思う。
■UBシティで過ごす午後。まずはAppleのimagine storeへ。
ムンバイ宅では停電のトラブルがほとんどない。古くからの住宅地であるせいか、信じられないことに電力供給が安定しているようである。
一方のバンガロールは相変わらず停電が多く、流れてくる電流も、寄せては返す波のようにそのレヴェルが一定せず、不安定だ。
停電時に自家発電時に切り替わる時には数秒のブランクがある。その際、家電製品に与えられるダメージは少なくない。
従っては、ダメージを最小限にすべく、コンピュータやプリンターには、小型のスタビライザー(UPS: 電力安定供給装置)を、リヴィングとダイニングの照明や電源は大型のスタビライザーに接続している。
さて一昨日。電力源が切り替わる際、コンピュータ用のスタビライザーが不審な動作を行った。聞き慣れないビープ音が鳴り続けるので、一旦リセットしたのだが、その際、数カ月前、購入したばかりのMacBook Proの電源をつないだままだった。
と、何が起こったのかわからぬが、MacBook Proの電源コードのパワーアダプター「バチッ!」と音を立てて、事切れてしまったのだ。
な、なんてこったい!
幸い、コンピュータ自体に被害はなかった。プチ・ダメージを受けているかもしれぬが、ともかくは動いている。額の汗を拭う思いだ。
しかしながら、パワーアダプターが壊れたのでは、電源が取り込めない。尤も、古いMacBookのコードを代用することはできるが、新品が必要だ。
そんなわけで、imagine storeへ赴き、交換してもらうべく手続きをしたのだった。シンガポールから取り寄せるらしく数日かかるとのこと。ともあれ、保証期間内なので無料サーヴィスである。
インドでは、何が起こるかわからない。電気関係の商品は、ちょっと割高になったとしても長めの保証期間のサーヴィスを購入しておくべし、である。
それにしても、だ。
MagSafeという名のパワーアダプター。身を挺して、コンピュータを守ってくれたようだ。スタビライザーも信用ならない昨今。何を信じればいいのやら。
常にバックアップをとっておき、トラブルに備える。壊れたら速やかに交換。それしか対策はないようである。
■人出が多くて賑わう週末のUBシティ
日曜の夕方、毎度おなじみアンサナ・スパ (Angsana Oasis)でのフェイシャル&ボディマッサージの予約を入れていたので、同じUBシティにあるimagine storeへ赴くのには、便利であった。
UBシティとは、キングフィッシャーグループのビジネス&ショッピングコンプレックス。
特段ここが好き、というわけでもないのだが、便利である。
このごろはバンガロール宅に戻るたびに、一度は訪れている。
世界同時不況の影響もあり、UBグループはかなり苦戦している昨今だが、このコンプレックスを見ている限り、賑やかである。週末のせいもあってか、人々の姿が多い。
しかし、これこそ「物見遊山」で、実際に高級ブランドのブティックでショッピングをしているのは限られた富裕層である。
溶け合っているようで、しかしくっきりと分離している社会の階層を、このモールを歩いているだけでも、視覚的に認識できる。インドとは本当に、独特の国である。
さて、imagine storeでアダプター交換の手続きをすませたあと、アンサナ・スパへ。数カ月前、夫もわたしも「いまひとつ」なエステティシャンにあたってしまったことから、今回は予約時に、「経験豊かで、上手な人を」とリクエストしておいた。
そのせいもあってか、非常に心地の良い2時間を過ごすことができたのだった。
このごろは、ムンバイにあるローカルなアーユルヴェーダの診療所で定期的にオイルマッサージを受けているが、それはあまりにもワイルドで、優雅な気分にはなれない。
身体にはとてもよいが、気分的には、さほどよくない。多分、大半の日本人は、トリートメントを受けるのに難色を示すのではなかろうか。
伝統的な木のベッドに寝転がされるところからして、寝心地が悪い。しかしオイルを使う以上、そのベッドがよいのである。
いちおうは使い捨ての「ふんどし」のようなものをつけてくれるが、左右から二人掛かりでワッサワッサと上へ下へとマッサージをされているうちにも、ふんどしはやがてはだけてしまい、実質「素っ裸」にてのトリートメントとなる。
実際のところ、ふんどしのヒモが障害となって、上から下へと施されるマッサージが突っかかる感じになるのは、むしろ心地よさを軽減する。アーユルヴェーダとは、裸一貫で立ち向かうものなのかもしれない。
羞恥心などを持ち合わせていた日には、くつろぐどころか、苦痛であろう。わたしはといえば、慣れもあってか、「もう、好きにして」の心境で、なされるがまま、油まみれで寝転がるばかりである。
わたしは何を、説明しているのだろう。
そんな次第で、やはり折にふれて、アンサナのようなリゾート的スパでリラックスするのはいいものである。
しばし、高級ブティックをウインドーショッピング。
海外ブランドのブティックよりも関心を引いたのは、オープンしたばかりのKIMAYA AVENUEと呼ばれるインドデザイナーズファッションのセレクトショップ。
天井高く、相当に広い店舗面積。
おなじみインド的「派手派手の極み」な衣類がそろっており、見るぶんには楽しい。
が、着こなせそうにない服が9割方。
いや、10割方。
さて、軽く夕飯を食べていこうと、またしてもTOSCANOへ行くことに。ようやくリカーライセンスが降りたらしく、ビールやワインも飲めるようになっていた。
シーザーサラダにピザ、本日お勧めのポークのグリルなどを注文。しかし、微妙に、味が落ちている気がする。
注文したグラスワイン(イタリア&フランス)はそれぞれに美味であったが、ポークがお勧めの割に、焼きすぎて硬く、ぱさぱさとしている。
すでに顔なじみのオーナー、ジャンミッシェル氏と、和やかに言葉を交わすものの、食後は一応、料理の件をコメントしておいたのだった。
いつ訪れても、同じように、おいしい料理を楽しめる確証がないところが、インドにおけるインド料理以外の外食事情である。
先ほど、早めの夕食を終えた。
久しぶりにチキンカツを作った。アルヴィンドの大好物。わたしも大好き。うっかり大量に食してしまったが、たまにはいいだろう。