シムラーでの3泊4日は瞬く間に過ぎていった。思いがけずデリーの実家のインターネットを接続することができたので、シムラーのことは改めて記すとして、昨日と今朝のことを、記しておこうと思う。
昨日の朝、8時半にホテルを出て1時間半ほどのドライヴのにち、シムラーの空港に到着した。そこから一日に一便出てているデリー行きのプロペラ機(キングフィッシャー/エアデカン機)に乗り込む。
11時10分発の飛行機は、しかし乗客が揃ったせいか10時40分と早めに出発し、1時間後にはデリーに到着した。
1年ぶりのデリーは明日のホーリー(春の訪れを祝い、相手構わず色粉や色水を掛け合うクレイジーな祭り)を前に、浮き足立った雰囲気。
明日を待ちきれず、早くも色粉をかけあった人々が、車窓から次々に目に飛び込んでくる。途中、色粉の奇襲を恐れつつも、ヴァサント・ロックの商店街に立ち寄り、昨日誕生日だった義父ロメイシュへのプレゼントを購入して自宅へ。
義父ロメイシュと義継母ウマ、そして義姉スジャータに出迎えられる。
スジャータの夫ラグヴァンが、今週から2週間ほど米国出張なのに加え、ウマが明後日からシンガポールの実娘のところへ遊びに行くため、スジャータはバンガロールから遊びにきているのだ。
久々に、実家料理人のケサールによる美味北インド料理ランチを堪能した後、昼寝などをしてくつろぎ、夕方よりスンダナガールマーケットへ。目的は二軒の茶専門店。
そろそろダージリンのファーストフラッシュの時節だと思うのだが、ミッタル・ティーの店主曰く、今年のダージリンは雨不足など天候に恵まれず、いいお茶が穫れないとのこと。
いろいろ味見をした結果、店長一押しのニルギリ産の紅茶を購入した。
その他、お気に入りのマサラティーやハーブティーほか、各種スパイス類、そして先日のヒマラヤの岩塩(を粉にしたもの)など、ミッタル、レガリア両方の店舗を行き来しつつ、あれこれと購入。
その後、一時は味が落ちてしまったと不評だったが、最近また味がよくなったと評判の(マルハン家周辺情報)食堂にて、おなじみのチャートを食す。個人的にはヨーグルトの酸味が足りないな、と思ったものの、総じて美味であった。
夕飯はまた、ケサールによる料理。ロメイシュ・パパが辛い料理を一切食べられないので、マルハン家のインド料理はいつもマイルド。スパイスの使い方も繊細で、本当に身体によい薬膳のような味わいである。
食後、スイーツと共にロメイシュ・パパの誕生日を再度祝い、平和な一日。
ワイルドフラワーホールが居心地よかったばかりに、本気でもう一日延泊するところだったが、やはり帰ってきてよかったと思った。
朝、実家のすぐ裏手にある公園を散歩する。大きな菩提樹の周辺に芝生の広場があり、その周囲に遊歩道が敷かれている。さまざまな種類の野鳥が飛び交い、さえずる声も愛らしい。
左下の写真、木の背後に隠れている白い建物がマルハン実家だ。目と鼻の先にこんな公園があるのは本当によい。花壇には春の花が色とりどりに咲き乱れ、思えばこんなに心地の良い時候のデリーを訪れるのは初めてである。
暖房も冷房もいらず、ただ自然の風が心地よい季節。敢えて言えば、空気が乾燥しすぎていてお肌が荒れがちだが、それを除けば本当に過ごしやすい。
朝食は、パパイヤ、みかん、そして我が好物の食用ほおずき、そしてミルク粥など。しっかりと朝食をとったあとは、さて、いよいよホーリーを祝するべく色粉の準備。
マルハン家には「お肌にやさしいハーブの色粉」が用意されていた。
市場には、化学薬品を使った、肌に悪い上になかなか色が落ちない染料も出回っていて、そんなものをかけられた日には、しばし青い顔、ピンクの顔、黄色の顔などで過ごさねばならず、それは辛いというものだ。
最初は控えめに少しずつかけあっていたのが、だんだん気合いが入ってきて、顔やら首筋やらもう、粉だらけ。Tシャツの首からも粉が大量に入って、下着まで大変な芸術作品になっていた。
ひどい顔の写真を載せるのは不本意だが、ウマとスジャータから「美穂、自分のその顔の写真も絶対にサイトに載せなきゃだめよ」と言われる。
あたりまえだが、普段は「比較的写りのよいもの」を選んでいる。敢えて変な写真を世間に公開したくはないもの。しかし本日の写真は、我ながらおぞましい写真ばかり。
しかし、彼らの写真だけを載せるわけにもいかず、不本意ながら妖怪顔を披露。
これが一番「まともだった」ということを書き添えておきたい。
家族でひとしきり粉をかけあったあとは、マルハン家に30年近く働いているティージビール(まるで執事)や、料理人ケサールとも、ちょっと控えめに粉をかけあう。
主従の立場などを超えて、皆が一緒に、春の訪れを祝うのだ。粉を掛け合った後、ティージビールと抱き合うロメイシュ。
隣家を見下ろせば、使用人の子どもたちがやはり、色をかけあいながら、キャアキャアと賑やかに騒いでいる。道路を挟んで向かいにあるクラブからは、音楽が鳴り始めた。
北インドの、春の到来。南インドのバンガロールとはまた違う、この土地の空気。インドは広いなと、しみじみ思う。
さて、今夜は親戚宅を訪問し、明日の早朝にはムンバイ。
駆け足とはいえ、デリーに立ち寄ってよかった。