本日、日本の終戦記念日に因んで、3年前の5月16日の記録の一部を転載する。
5月3日、竹内浩三という人のことを知ったことは、当日のブログに書き残しておいた。
彼の作品をどうしても読みたくなり、先日、全作品集『日本が見えない』をはじめ、日本で話題の本、かつてから気になっていた本、インド関係の本などをamazon.co.jpにて注文したのだった。(中略)
竹内浩三の、そのユーモアに満ちた漫画や、小説や、その一方で戦地からの本音の、矛先が向かってくる。一篇を、ここに転載したい。
●骨のうたう
戦死やあわれ
兵隊の死ぬるやあわれ
とおい他国で ひょんと死ぬるや
だまって だれもいないところで
ひょんと死ぬるや
ふるさとの風や
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や
苔いじらしや あわれや兵隊の死ぬるや
こらえきれないさびしさや
なかず 咆えず ひたすら 銃を持つ
白い箱にて 故国をながめる
音もなく なにもない 骨
帰っては きましたけれど
故国の人のよそよそしさや
自分の事務や 女のみだしなみが大切で
骨を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい
高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨は骨 骨は聞きたかった
絶大な愛情のひびきを 聞きたかった
それはなかった
がらがらどんどん事務と常識が流れていた
骨は骨として崇められた
骨はチンチン音を立てて粉になった
ああ 戦死やあわれ
故国の風は 骨を吹きとばした
故国は発展にいそがしかった
女は 化粧にいそがしかった
なんにもないところで
骨は なんにもなしになった。
■竹内浩三全作品集 全1巻より 「骨のうたう(原型)」
終戦前に、戦地で命を落とし、戦後を知らない彼が、この詩をしたためていたことこそに、驚き、胸が潰れた。
昭和22年三重県庁の公報によると、1945年4月9日、「陸軍兵長竹内浩三、比島バギオ北方1052高地にて戦死」。23歳だった。