ここしばらくの、日本からの仕事も一段落。あとはレポートを数本まとめれば、引っ越し前の仕事は終わる。
インドでの仕事が、それがたとえ難易度が高くなさそうに思われるアテンドの仕事であっても、結構な気構えを要する。
たとえばニューヨーク在住時に行っていた視察旅行や取材のコーディネーションなどに比べると、インドのそれは格段に「たいへん」なのだ。
人とのアポイントメントが入っているときはなおさらだ。視察旅行というのは、たいていスケジュールに余裕のない「タイトスケジュール」が一般である。ましてや不況のご時世。ゆっくりと予備日を設けるなど基本的にない。
そんな状況にあって、普く時間が読めない世界が広がっているインド。ドタキャンなどは当たり前だから、臨機応変な対応が望まれるわけだ。それに加えて、渋滞だの事故だのが多いインド。
だからって、「じゃ、電車で行きましょう」とか、「バスに乗りましょう」などとは決して言えないのがインド。
ドアも閉まらないような、ぎゅうぎゅう詰めの公共交通機関に、クライアントを乗せられようはずがない。というか、わたしですら、ムンバイでは乗ったことがない。
これがニューヨークであれば、地下鉄でもバスでもタクシーでも、あるいは徒歩ででも、目的地にたどり着ける。同じアテンドの仕事でも、濃度が違う。
ともあれ、今回の仕事に関しては、わたし自身は人との会合の約束などをアレンジせずにすんだため、少々は気が楽であった。
気が楽とはいえ、足場の悪いド汚い地元市場や、ハエの飛び交う汚れたエリアに日本の方々をお連れする時には、それなりに気を遣う。
そういう状況に対し、「堪え難い」と思われる人と、「結構OK」な人がもちろんいるわけで、今回は後者の方々だったことから、わたしの気分も楽だった。
この街の随所を、わたしが散らかしたわけでもないのに、わたしが散らかしたような「罪悪感」を覚えさせれるときもあるくらいである。
一方、自分がお気に入りのレストランにお連れして、「おいしい!」と喜んで食べてもらえたりすると、自分が作ったわけでもないのに、「おいしいでしょ〜」と得意げな気持ちにもなってしまう。
なんにつけても、案内している場所に対し、関心を持ってもらえること、楽しんでもらえることは、仕事とはいえうれしいことである。
お腹の不調を訴えられることなく、「また、インドに来たい」との言葉を受け取り、元気なご様子で空港で別れの挨拶を交わすときが、なんともいえぬ達成感だ。
さてさて。「近々荷造りをするのだから」と、放置されたままの資料など、こまごまとしたものが部屋の随所にあり、なかなかに落ち着かない昨今のわが家。まあ、引っ越しを来週に控えて落ち着いている場合でもないのだが。
バンガロール宅に送るものと、ストレージルームに保管しておくものとを仕分けねばならないのが若干面倒だが、実質2日あればすむだろう。
夫の仕事の状況が、一転二転しているが故の、中途半端なマルハン家の状況である。翻弄される妻。とはいえ、彼と出会って以来、ずっとこんな感じではある。
それにしても、夫の仕事に妻が振り回されているはずなのに、なぜか妻が夫を振り回しているような印象がわれわれの間にほとばしっているのはなぜだろう。
そんな自問はさておいて。
アパートメントを引き上げるとはいえ、ムンバイには年明け早々また訪れて、ソーシャルクラブの宿泊施設か、サーヴィスアパートメントを借りて、長期短期の滞在を繰り返すことになりそうだ。
今のアパートメントに住み続けるほうが楽に思われそうだが、これまでも幾度か記した通り、南ムンバイの高級アパートメントは、阿呆のように高いのだ。2ベッドルームに約50万円もの家賃を払っている現在。ソーシャルクラブやサーヴィスアパートメントの方が、交通費を加算したとしても、安い。
そんな次第で、大家との契約がちょうど切れる今、一旦引き上げることにしたのである。
他に安くて住める物件はないのか、と思われそうだが、ない。新興都市の北ムンバイにならあるが、土地が限られている狭い南ムンバイには、ない。決して贅沢を言っているのではなく、安定したインフラストラクチャーのもと、ストレスの少ない先進国水準の暮らしを保つには、今の状況は最低限なのだ。
わたしたちは二人暮らしだから2ベッドルームですんでいるが、子供がいれば、3ベッドルーム、4ベッドルームが必要だ。さらに子どもの安全を考えた、公園やプール、ジム付きの新しいアパートメントになると、月に100万円を軽く超える家賃となる。
先進国からの駐在員家族は、そういう物件に住んでいる。もっとも彼らは駐在員で、会社が家賃を支払っているから問題ないだろうが、それにしても、高すぎる。テロが起ころうが、漁村臭が漂ってこようが、断水が起ころうが、停電が起ころうが、エレベータに閉じ込められようが、高いものは高いのだ。
貧富の差が激しすぎるにもほどがある、過激マキシマムシティ、ムンバイ。この街の、この現状を、文章で伝えるのは本当に難しい。
さて、夫の仕事の拠点が決定し次第、またムンバイのどこかにアパートメントを借りることになるかもしれないため、家具の大半はストレージルームに預ける。もしも次がムンバイでないとしたらどこなのか。それもまだよくわからない。だからといって、バンガロール一都市にずっと暮らす可能性はほとんどない。
つまりは、先の読めない二都市生活が、まだまだ続く。人生、是、体力。である。
【最新の別人格ブログ】
毎日欠かさず書いている別人格ブログ。ところで、あちらのブログは「キラキラした感じ」が漂っていて、いかにも女子向けだが、というか女性対象だが、わたしのブログはたとえそれが「ですます調」であったとしても、基本的には老若男女を問わない方向性で書き進めているので、男性のあなたも、気味悪がらずに、どうぞ立ち寄っていただければと思う。
こちらにはバラバラと書き散らしていることを、あちらでは、テーマごとに少しずつ整理するつもりで書いている。従っては、事情を知らない人でも、インドの断片を理解しやすく、また読みやすいのではないかとも思っている。
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