デスクワークに煮詰まる午後。夕暮れ時の買い物が気分転換だ。いつものように、ワールドトレードセンターの1階にあるNATURE'S BASKETへ行こうと外へ出たところ、大きなエキシビションのサインが目に飛び込んで来た。
毎年ここで開催されている食品、ワイン、調理器具の一大フェアUPPERCRUST SHOWだ。思えばちょうど一年前も訪れた。あのときは、テロの直後でムンバイの街はしんみりとした空気に包まれていた。あれから一年。
このショーでは、国内外の食品関連会社が一堂に介し、自社の商品をセールスしている。詳しくは、下記のサイトを参照されたい。
■UPPERCRUST SHOW(←文字をクリック)
海外食品メーカーが積極的にインド市場に参入していることは、ここ数年のインド生活を通し、皮膚感覚で実感している。従来、加工食品が少ないインドは、スーパーマーケットすら一般的ではなく、増え始めたのはここ4、5年のことだ。
わずか2、3年前までは、同じ商品ばかりが単調に並び、品揃えが少なかったスーパーマーケットも、月日を重ねるごとにそのヴァラエティを増やし、売り場が賑やかになる一方だ。目新しい輸入食品も、次々に参入している。
まずは屋外のデモンストレーションエリアで、インスタント食品などを試食してみた。夕方でちょっとお腹が空いていたこともあり、普段は食べないようなインスタントラーメンがおいしく感じて、思わずご購入。インド料理のレトルト食品や冷凍エビなどの冷凍食品も見られる。
さて、館内のエキシビションホールに足を踏み込めば、初日で平日ながらも、すでに熱気に満ちあふれている。左上の写真は日本の食材を輸入している会社のブースだ。醤油やみりん、ごま油にマヨネーズ、豆腐、海苔など、ベーシックな日本の食材がインドでも買えるようになった。便利なものである。
目立つのはイタリアンの食材を扱う貿易会社のブース。イタリア人のシェフが試食を料理しているところもあり、真剣味が伝わってくる。インドで最も人気のある欧州料理と言えばイタリアン。使用する食材に共通点が少なくないのも、浸透が早い理由の一つだろう。
ネクタイが邪魔なのでは? と心配になる左上のイタリア紳士。自ら試食のためのパスタを茹でている。湯にどっさりと塩をひとつかみいれるさまに、さすがイタリアン! とうれしくなって、
「イタリアからいらしたのですか?」
と声をかけたら、満面の笑みで、
「そうですよ! あなたはどこから?」
と返す。わたしは日本人だがインド人と結婚してインドに住んでいると告げたところ、料理をほっぽりだしてブースの外へ出て来て、うれしそうに話を始める。
アジア地区でパスタのセールスをしており、日本も担当しているという。
「明治屋との付き合いは長いですよ」
「明治屋は、昔ながらの由緒ある輸入食品のスーパーマーケットですよね」
「イトーヨーカドーにも行きました」
「イ、イトーヨカードー……。も、いい店ですよね」
立ち話をしつつ、パスタを20%オフにしてくれるというので、2種類ほど購入。熱い握手を交わして別れを告げたのだった。この情熱、さすがイタリア紳士である。
インドの伝統的なスナックがあるかと思えば、きれいに包装されたチョコレートもある。右上写真のブースは、輸入した原材料をインドで加工、成型したというチョコレート。試食をさせてもらったところ、かなり美味なので、あれこれと選んで購入。
と、こちらにも、おいしそうなチョコレートが。左上の写真がそれだ。この店は「個人商店規模」らしく、店舗も今のところムンバイに1軒しかなく、他のリテールに卸してはいないらしい。
しかしながら、ベルギーから輸入した粒チョコを加工して作られたチョコレートはまた、これもかなり美味。インドの平均的いまいちおいしくないチョコレートに比べれば高価だが、輸入品を買うことに比べれば、安い。
一方、ベルギーチョコレートのレオニダスや、スイスアイスクリームのモーヴェンピックのブースも出ているが、どちらも高い。
味は格別だとわかっているのだが、気軽に買う気にはなれず。
高級チョコレートがあるかと思えば、またしても、昔ながらのチャトゥネが並んでいたりもして、この対照が面白い。
さて、このフードフェアで最も関心をそそられたのは、インド産ワインの充実ぶりだ。昨年よりも遥かに、銘柄が増えている。聞けばマハラシュトラ州のワイン産地であるナシックには、すでに70近くのワイナリーがあるのだとか。
つい数年前までは、ナシックのワインと言えばSULAばかりを味わっていたものだが、今や選択肢は幅広い。それぞれのワイナリーが欧州やカリフォルニアのワインメーカーと提携し、味の向上に努めている。
左上はZAMPA。以前、ウィリンドン・クラブのダイニングで赤ワインを試飲した。なかなかに美味だったので、以降数回、購入している。
右のREVEILO。一番のお勧めだというシラスのレゼルバ (Reserve) を試飲したところ、かなり美味! だが、1500ルピー近くもして、インドワインにしては高い。それなら輸入品を買いたくなってしまう。
左上は、今やインドワインの「老舗」とも言うべくSULA。ここのワインは、このブログでも何度となく記して来たが、移住以来、たいへんお世話になっている。年々味が向上していて、スパークリングもおいしい。
右上は、初めて見るブランド GOOD EARTH WINERY。カベルネ・ソーヴィニョンを味わったところ、ドライでとてもおいしい。とてもおいしいが、ハイクオリティなワインばかりを生産しているようで、すべて1本1500ルピー以上。
8年前、結婚式のときに初めてインドを訪れ、デリーで、闇市みたいな掘建て小屋の酒屋にて、怪しげなラヴェルの怪しげなインドワインを買い、その泥のような味の赤ワインを飲んだ時には、愕然としたものだった。
インド移住前、カリフォルニアで暮らしていたころは、
「インドに移ったら、おいしいワインが飲めなくなるから、今のうちに飲んでおこう」
と、美味なカリフォルニアワインを飲み、ワイナリー巡りをし、名残を惜しんだものである。あれからわずか4年のうちに、こんなにも国産ワインの選択肢が増えるとは、インドはワイン業界一つをとっても、すさまじい成長ぶりである。
さて、上の写真は、今回このフードショーに初参加だという新しいワイナリーINDUSだ。あちこちのブースでわたしが熱心に試飲をし、写真を撮ったりしているのをみたスタッフの女性が、「うちものワインもどうぞ」と声をかけてくれたのだ。
赤ワインは、インドワイン特有のこげ臭みがあって今ひとつだったが、白はさっぱりと爽やかでおいしかった。ロータスが描かれたボトルもかわいい。何種類も勧められ、熱心にセールスされたので、白ワインを1本買った。
「ちょっと買い物に」のつもりが、フードショーで1時間近くも過ごしてしまい、外に出るころには、あたりは夕闇に包まれている。
重い荷物を携えて、NATURE'S BASKETで夕餉の買い物をし、帰宅した。
こちらが本日の「思いがけない」お買い上げ品。ハーフボトルのワインはRENAISSANCEというワイナリーのピノ・ノワール。ミディアム・ボディながら、味に深みがあり、しつこいようだがインドワイン特有の「こげ臭」がなく(期待値が低すぎ?)、喉越しがよかった。
20%オフにしてくれるというので、それならばと購入。さっそく開けて飲んでいる。
このアパートメントに暮らした1年半余り。このワールドトレードセンターのエキシビションに、いったい何度訪れたことだろう。
各業界のイヴェントに、買い物ついでにふらりと立ち寄れた環境は、やはり恵まれていたと改めて感謝しつつ。
さて、明日からはいよいよ、引っ越しの準備を始める。ぼちぼち、がんばろう。いや、その前にヘッドマッサージに行って、少しネジを緩めよう。
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