↑義兄ラグヴァンの研究室があるIISc(インド科学大学院)のキャンパス。タタ・グループの創始者であるジャムセジ・タタによって創設されたことから、地元では「タタ・インスティテュート」と呼ばれている。
昨夜、クライアントは無事に帰路につき、今年最初の仕事が無事に終わった。年末のアーユルヴェーダグラムでの日々が遠い昔のことに思えるほど、新年早々濃密な1週間だった。
普段のアテンドにも増して、今回は、連日インドのことをしゃべり続けた。1週間に亘り、こんなにも毎日毎日、話し続けたのは、多分半年前に日本に帰省したとき以来のことだ。従って、今は少々、喉が痛い。
今回のクライアントは、「激しく若い女性2名」と、「結構若い男性1名」と、「それなりに若いわたし」の合計4名での旅だった。
みな、他国への旅行経験はあるものの、インドは初めてとのことである。この場合、コーディネーターの責任は、なかなかに重要だ。
わたし自身の経験を鑑みるに、旅の経験は上書き保存できない。同じ異国の、同じ街を複数回訪れた場合、最新の旅の記憶が鮮明かといえば、そうではない。むしろ、一番最初に訪れたときの衝撃が、心にくっきりと刻まれていることもある。
昔、好きだった人と旅した土地を、改めて夫と訪れて、密かに「思い出の刷り直し」を図った経験もあるが、今となっては15年前の旅も10年前も旅も、過去の思い出の引き出しにまとめて収納されており、前後関係が混沌としている。むしろ「最初に訪れた旅」の方が、鮮明に思い出されたりもする。
つまり何がいいたいかと言えば、旅もまた、第一印象は大切なのである。
さまざまに異なる目的のもと、視察旅行に訪れる人々があれど、いずれの場合も「インドが初めて」という人に対しては、まずはインドを好意的に捉えて欲しいと願う。
ネガティヴな先入観なしに、多様性炸裂のインドを肌で感じてもらいたいと思う。
たとえインド人を家族に持ち、インドに久しく暮らそうとも、「インド通」を自称することはできない。わたしが知るインドは、この広大無辺な亜大陸の、無尽蔵な世界の、ごく片隅、あるいは上辺の部分である。
とはいえ、少なくとも、知る限りの部分と、深淵の存在を伝えることはできる。
旅を楽しむためには、良好な体調を維持することも大切。特にインドでは、身体を壊す人が多いと聞く。聞くが、わたし自身を含め、実際これまでわたしがコーディネーションをしてきたなかで、体調を崩された方はいないので、それは幸運なことだと思っている。
もちろん、食事に際しては、安全な店を選んでいるし、避けるべき飲食物についても言及しているから、体調を崩さなくても不思議なことではない。
ただ、日本とは著しく異なる、見目麗しくない光景があちこちに広がっていることもあり、精神的な衝撃が身体に少なからずダメージを与えることもある。
インドに限らず、旅とは普段以上のエネルギーを消耗するものだ。それが心地よい疲労感として肌身にしみる程度が、多分よいのだと思う。
それにしても、今回の仕事はまた、いつもに増して楽しいものだった。日本を離れて14年。激しく若い女性たちから聞く日本の話は、わたしの知る日本とは異なり、興味深い。
ついでにいえば、彼女たちが「カッコいい〜!」と判断するボリウッド俳優(脇役)のどこがカッコいいのかわたしには理解できず、その嗜好のギャップがおもしろい。
物乞い対策のために大量に買って車に積んでいる1パック5ルピー前後の素朴なビスケット。わたしはその素朴な風味が好きなので、小腹がすいたときなど、自ら車内で食べたりもする。
彼女たちの口に合うかどうか疑問だったが、渡したところ「おいしい!」といいながら食べている。日本へのおみやげにすら買っている。
さまざまに趣向を凝らした味わいの菓子にあふれた日本から来た彼女たちが、「ミニマムな味」のビスケットをおいしいと感じていることが、新鮮でもあった。新鮮であると同時に、なんだかほっとした。
詳細は割愛するが、ともかくみなが積極的で、「あれこれと試してみよう」というスタンスであったことが、なによりであった。わたし自身もまた、彼らと行動を共にし、普段とは異なる視点からインドを眺め、会話を分かち合うことで、新しきを知ることができ、実に楽しかった。
文章を書くこと。ラジオなどで話すこと。講演をすること。コーディネーションをすること。今年は今まで以上に、日本へインドを伝える仕事を、増やしていきたいと思う。
それにしてもインド。街の様子の変化の速度がめまぐるしく、この2日間バンガロールを巡っただけでも、新しい発見が少なくなかった。情報は伝えた先から古くなってゆく。気ぜわしいものである。
ともあれ2010年。寄る年波を意識しつつ、無理せぬ程度のほどよいペースでやっていこうと思う。このブログも、そろそろ『インド発、世界 2010』に移行せねばならない。
先月の引っ越しの余韻もまだ残っており、未開封な段ボールが書斎の隅にごろごろとしている。まずはそのあたりから片付けるべし。
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