2001年の夏、初めてインドを訪れ、ニューデリーで結婚式を挙げた。あのときはまさか、この街で、こんなに気軽に、おいしい日本料理を食べる日が来るなんて、想像できなかった。
と、大げさに回想してみたくなるほどに、充実の夕餉だった。
場所は、MGF Metropolitan Mallのai(アイ)という日本料理店。ムンバイやデリー、バンガロールでOLIVE BARやOLIVE BEACHといった人気レストランを経営しているA.D. Singh氏の店だ。
昨年8月にデリーを訪れた際、初めてランチに訪れて以来、二度目だ。当時は「ディナーはかなり高価」だったのだが、メニューが刷新されたのか、全体に「お手頃価格」になっている。
今回、飲んで食べてしゃべるのに夢中で、料理の写真などはないが、去年のランチの様子をこの日の記録に残しているので、念のため。
ちなみに平日(月曜から土曜)は午後9時半までがハッピーアワーになっていて、ビールやカクテルなどのアルコール類、そして小鉢料理(小皿料理)が、かなりリーズナブルに提供されている。
店内はバーラウンジとダイニング、テラスの大きく3つのエリア(多分)に分かれており、わたしたちが到着した午後7時には、ラウンジで「タンゴのレッスン」が行われており、数組の熟年カップルが踊っていた。ちなみに火曜の夜は「カラオケ・ナイト」で、日本の最新の曲が歌えるらしい。
それをバーカウンター越しに眺めながら、我々はインドにしては早すぎる7時と言う時刻に待ち合わせ、夕食開始である。
さて本日、夕食を共にしたのは、カナコさんとナオキさん。二人は以前バンガロールに暮らしていて、当時は時折、顔を合わせていた。数年前よりデリー赴任となっていた。わたしたちよりもインド生活が長い、駐在歴4年超である。
今、懐かしくなり、2006年のブログを見てみたところ……。
★エミとショーンのお別れパーティ、とか、
★突然のGET TOGETHER、とか、
★クリスマスパーティ、とか、
★バンガロールクラブでのニューイヤーズ・イヴなパーティ、とか、
思っていた以上によく会って、よく遊んでいたことに気づく。
ビールで乾杯したあとは、揚げ出し豆腐に和風サラダ、エビのテンプラ、鶏肉やレバーやフォアグラ、豚の角煮の串焼き、豚キムチに餃子におにぎり各種、夫の好物茶碗蒸し……と、小皿料理をまるで「タパス風」に次々と注文し、みなで分けながら平らげてゆく。
少しずつ、色々な種類を食べられるのがいいし、そのおいしさにも感嘆する。このように「居酒屋感覚」で日本料理を飲食するのは久しぶりだったせいか、感動もひとしおであった。
なにしろ「夕食開始時刻が遅い」インドである。7時8時は、まだ店もガランとしているが、9時を過ぎたころから人々が入り始め、ハッピーアワーが終わる9時半ごろが夕食開始のムードである。
従っては、たとえば米国ならアーリーバードやハッピーアワーが7時半ごろまで、とされるところが、ここでは9時半でOKなのである。
わたしたちはといえば、正規のディナーメニューからは注文することなく、ハッピーアワーの小鉢メニューで完結したのだが、十分に満足であった。
気がつけば、ラウンジ側はタンゴレッスンが終わり、いつしか雰囲気のよいバーとなっている。わたしは気づかなかったが、夫が、
「ミニスカートの、きれいな女性たちが多かったよねえ」
としみじみとコメントしていた。こういうところ、見事に抜かりなく視線を走らせる夫に、毎度感心する。
最後には日本酒も注文し、どこにいるのだかわからない雰囲気で、最早何をしゃべっているのかもよく覚えていないほどに、しかしよく食べて、よく笑い、よく飲んだ夜だった。
しらふのときに撮影しておけばよかったのだが、みんなもう、酔っぱらいきってしまったあとに、写真撮影。食後でテーブルも散らかり、全体にやや見苦しいが、これもまた思い出である。
彼らが帰任してしまう前に、バンガロールへも遊びに来て欲しいものだ。
でもって、バンガロールに戻る前に、もう一度、aiで日本食を食べたいとも思う。日本の演歌が流れるような、こてこての日本料理店ではなく、日本料理が好きなインド人たちにも入りやすい、この無国籍なムードがとてもいいと思う。
「どこの日本料理店がおいしい?」
ニューヨークやカリフォルニアで、おいしい日本料理を食べ慣れた元NRIのインド人の友人らに、尋ねられることが少なくない。そんな日本人以外の彼らにも、かなり自信を持って勧められる店である。
バンガロールにもぜひ、このような店がオープンして欲しいと思う。