蝶よ花よの平和な庭で、鳥のさえずりに耳を傾けつつ、熟したマンゴーを味わう時間……。
は、永遠に続くわけではなく、この隔離された快適な家から一歩外に出れば、いや、毎朝届けられる新聞に目を落とせば、あふれかえる社会問題の数々に、毎度茫然とさせられるのだ。
たとえば日本が昭和30年代の高度経済成長期から今日に至るまでのあらゆるライフスタイルの変化を、インドはこの10年の間に、一気に執り行うとしている。と同時に、その間のすべての時間〈横軸と縦軸〉が、同時に共存している。
というようなことは、これまでにも幾度となく記してきた。
develop. progress. growth.
発展。発達。進化。成長……。
英語にせよ、日本語にせよ、そこにはあくまでも「前向き」で「ポジティヴ」な響きがある。文明の、発展こそ正義。時間の経過とともに、成長することこそ、正常。
発展ではなく、劣化かもしれない。
進化ではなく、後退かもしれない。
さもなくば、なぜこれほどにたくさんの社会問題が発生するだろう。汚染される地球。蝕まれる生物の命。
発展途上国で見られる、人々の、まばゆい笑顔が、どうして先進国で見られなくなったのか?
しかしヒトは、努力や積み上げを、多分無駄とは認めたくない。ましてや劣化や、後退などとは。そんなシンプルな本能が、こんなにも目まぐるしく、世界を変貌させたとも言えまいか。
人間は、どこまで「追求」するのだろう。
文明は、どこまで「暴走」するのだろう。
あらゆる「激変の現状」を、日々の生活において目の当たりにできるこの国に住んでいると、否応なく、かような事柄を思わずにはいられないのだ。
なにも四六時中、社会問題に心を痛めているわけではない。ということは、言うまでもないが、ともあれ、わたしだけでなく、同じ印象を持っている人も少なからず、いるのである。
実はバンガロール在住の友人から、奇しくも今日、メールが届いた。
彼女もまた、わたしと同時期にバンガロールに移り住んだインド人の夫を持つ女性だ。子どものいる彼女にしてみれば、子どもたちの未来もまた、切実に懸念されるべきことだろう。
ご本人の了承を得て、一部を抜粋させていただく。
昨今のインドの変わりよう・・・・私も美穂さんと同じ感想を持っています。マネーパワー炸裂で、インドのいい部分もすごい勢いで変わってきていますね。このままいったらどうなっちゃうのだろう????
先日子どものお友達のお家に遊びに行きました。そのゴージャスぶりに、唖然・・・・・。(1年前に建てたとか)しかし、いろんなテーストがミックスしちゃって、うちの中がおかしな事になっていました。もちろん親は建築関係のお仕事です。ある層の人たちの勢いを感じました。
しかし新聞には、農民の自殺や若者の自殺の話題が絶えず(先日のテストの結果を受けて、でたくさんの若者が自殺しましたね。)、また水不足や農作物の値上がりによるストライキや・・・・・。放射能を帯びた危険物質の廃棄の問題など・・・。
本当にこの国はどうなってるんだー!!!(大声でさけんでいる)
この国では、問題が「目に見えている」だけに、叫びたくもなるのである。
たとえば先進諸国の社会問題は、目に見えにくい。決してないわけではなく、隠れている。
インドのそれは、あらわだ。だからこそ、なおさら切羽詰まる。
先日ムンバイにできた新しい大型書店、ランドマークの "Graphic Novels"というコーナーで見つけた。
というよりも、目に飛び込んできた一冊。
このような本が、インドで発売されているとは、本当に驚きだったし、小さな感動だった。
Our Toxic World わたしたちの、毒された世界。
あるインド人一家をモデルに、日常生活を取り巻く、環境問題を軸にした諸問題……〈工業廃棄物、化学肥料、農薬、食品汚染、有毒な日用品、ゴミ処理問題、シックハウス e.t.c.……〉を、文章と絵(漫画)とで、非常にわかりやすく説明している。
活字の上では既知の事実も、絵で捉えると吸収されやすいし、よりいっそう切実さを覚える。リアルなインドの日常を通して訴えているだけに、臨場感もある。
この本のよさは、いたずらに不安感を煽ったり、絶望的にさせるのではなく(いや、十分に絶望的な気分にはなっているのだが)、「では、どうすればいいのか」という提言があるところ。
結局のところ、それは、「過去への逆行」なのである。
わたし自身、このごろは、「前時代的なライフスタイル」に移行していることは、以前も記した。そのライフスタイルは、少しばかり、手間がかかるところもある。しかし、さほどの不都合はない。
……と、綴ればまたきりがないので、この辺にしておく。
ただ、本の数ページをここで紹介しておきたい。写真を拡大すれば、かなりイメージが掴めると思う。インドに住んでいる人にとっては、この内容に一層親近感を覚えることだろう。
子どもたちにとっても、いい教材となるかと思う。ショッキングな描写もあるが、10歳も過ぎれば理解できる内容だろう。
Our Toxic World/ TOXIC LINK (←Click!)
SAGE Publications India
Little lives wasted in piles of waste.
ゴミの山に打ち捨てられる、小さな命たち
ビハールという貧しい州から、「新聞配達をすれば、学校に行かせる」という条件でバンガロールに連れてこられた少なくとも100人の子どもたち。実際にはゴミ集積場で、ゴミの分別作業を強いられているというニュース。
小学校や、中学校に行くかわりに、日がな一日、ゴミを仕分けている。
ゴミ処理場の一画で眠り、そばに流れる下水で身体を洗い、下水を飲んでいる。
NGOの保護団体が救出に向かうも、37人だけしか保護できなかったという。多くの子どもは警察や労働局の大人たちを恐れて逃げ隠れてしまうのだという。
たまらん。
たまらんが、インドにおいて児童就労はあらゆる場面で見られ、こうしてニュースになるのは、氷山の一角に過ぎないのだ。
うおぉぉぉ〜っ!!!
と、わたしも、本当に、叫びたい。
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