4泊5日の北ムンバイ滞在を経て、夕べのフライトで戻ってきた。
昨日最終日は、バンガロールへのフライトが夕刻だとのこともあり、ホテルにレイトチェックアウトを依頼して、4時ごろまでゆっくりとホテルで過ごしたのだった。
夫の出張に同行の旅ゆえ、もちろん平日の夫は朝から晩まで仕事だが、土曜日の昨日はもちろん休みで、幸いにもモンスーンのただ中の快晴で、窓から見下ろす景色も曇天のときとは打って変わって爽やかな青空だ。
遅い朝食を終えてからは、プールサイドで過ごし、束の間「海辺のリゾート気分」を味わったのだった。
しかし、そこはムンバイ。カモメの代わりに飛来するのはカラスだ。
岩山からプールに流れ落ちる水辺の、その上流に、何羽ものカラスがやってくる。
水を飲むくらいならいいが、ざぶざぶと全身水浴びをして気持ち良さそうなカラスもいる。
カラスが行水したあとの水で泳ぐ、人間である。
これもムンバイらしさ。
高級ホテルも、スラムも、分け隔てなく、鳥は自由なのである。
ともあれ、わずか数時間ながらも、青空の下で、海風を受けながら過ごせたことで、わたしも夫もずいぶんとリフレッシュできた。
夫の仕事先が南インドの北部にあるウォルリであることから、今回は南ムンバイではなく北ムンバイのタージを選んだのだが、とてもよかったと思う。
部屋はもちろん、南ムンバイよりも広めだし、宿泊料も南よりは安いはずである。ただ、各種ダイニングやスパなどの値段の高さについては、呆れるばかりだった。
この件については、ウダイプールのタージ・レイクパレスに滞在した時にも書いたし、最近ではテロのあとの改築を経て再オープンしたオベロイのカフェのクラブハウスサンドイッチが850ルピーだったことに憤慨したことも書いた。
なので、毎回毎回書くのも憚られるのだが、書く。
「原価」と「人件費」の安さを知る者としては、どうにも、ひと言、言わずにはいられないのだ。
昨今のインド、農作物の高騰が取沙汰されてる。富裕層にとっては痛くも痒くもない程度の価格差だろうが、そもそもの収入が非常に低い低所得者層の人々にとっては、2円、3円の違いが大きい。
とはいえ、そんな事情を踏まえた上で、しかしだ。
トマトやタマネギ、ジャガイモなどの野菜は平均して1キロが30円前後。食パンが一山40円とか50円の国である。卵も6個で40〜50円。
クラブハウスサンドの材料費で少々高いものといえば、ベーコン程度だろうが、いずれにせよ一人前の原価は100円を切るはずだ。
それを1,700円もチャージするのだから、いくら不動産の高いムンバイだからって、それはないだろうという話である。
更には、雇用している従業員が、先進国に比して非常に多いとはいえ(この件についても後日きちんと書きたいのだが)、それでもホテルのウエイターなどの給与は月に2、3万円程度のはず。
物価が上昇したからといって、彼らの給与が劇的に増えているとも思えない。
インドの高級ホテルの強みは、「隔離された安全な世界」であることだ。海外からの旅行者、出張者が、気軽にふらりと外で食べることは容易ではないインド。
地元を知る人にお勧めの店に連れて行ってもらう以外、「お腹の心配」もあるから、ホテルで食べるのが無難ということになる。
最近でこそ、市井のレストランでも、よいところが次々に増えているが、しかしインドでは、ホテルのレストランが無難であるとの印象は根強い。
なお、これは一般的なビジネストリップの話であり、バックパッカーの旅の話ではないので念のため。
だから先進国並みの、いや場合によってはそれ以上の値段がチャージされても、そこで食べるしかないということになるのだ。
この5年間をみても、その価格の上昇率はすさまじい。メニューの大半が「倍以上」になっている。料理によっては3倍、4倍するものもある。
調子に乗って、気分で値段を上げて、メニューをどしどし変更しているとしか思えん。5年前のメニューを発掘して、値段を見比べてみ! という話である。
実は今回、このタージ・ランズエンドでのラウンジで、到着初日、ゆっくりとコーヒーを飲もうとエントランスでメニューを見て、目を見張った。
カプチーノやカフェラテが350ルピー。数種類のフィルターコーヒー(普通のブラックコーヒー)が、すべて400ルピーなのだ。
インドで、コーヒー1杯800円。あり得んやろ!!
しかしラウンジは、常に商談やら談笑やらをする人々で賑やかだ。その事態も十分に理解できる。が、インドに暮らし、インドの日常に密着しているものとしては、価値観を、尺度を変更するのが簡単ではない。
海外ならともかく、ここはインドである。踵を返して、部屋に返ってコーヒーを煎れたのだった。
それはさておき、興味深いのは、ウエイターたちの対応だ。
ウダイプールのレイクパレスのインド料理レストランを訪れた時、メニューの高さに呆れていたところ、ウエイターたちが頼んでもいないものを次々に「サーヴィスしてくれる」ことを記した。
夜のコンチネンタルレストランにて。
さほど空腹ではなかったので、二人でシーザーサラダとビーフステーキ、野菜のソテーをシェアすべく、一皿ずつ頼んだ。
シーザーサラダのドレッシングを「軽めに」と頼んでいたのに、むしろ、野菜が泳ぐほどたっぷりとかかっていたので、取り替えてくれて頼んだ。
すると、ウエイターが、たいそう恐縮して取り替えてくれた。
それだけでもう、十分なのだが、ウエイターが、
「これはサーヴィスです」
あればついつい食べてしまう、これはむしろ、我々夫婦のデブ化促進攻撃だ。
実は初日、夫が一人で食事をしたときにも、チキンのグリルと野菜のソテーしか頼んでいないのにスープやデザートをおまけにつけてくれたらしく、
「夜遅かったし、食べ過ぎるし、むしろ要らなかった」
と夫が言っていたのだった。
さらには、チャージされたのはチキンのグリルだけだったという。
この夜は別のウエイターだったのだが、しかし攻撃はフライドポテトに終わらない。
ブッフェにあるデザートをピックアップして、盛り合わせをを二人分持ってきてくれる。
左の写真のプレート×2である。
多すぎである。
妙に太っ腹というか、サーヴィス過剰なのである。
従業員が、メニューの値段の高さに「罪悪感を覚えている感じ」が伝わって来るのが痛ましくもユニークで、でもやっぱり、妙な感じだ。
更には、野菜のソテーはチャージされておらず、結局ステーキとサラダの料金だけが請求されていて、むしろお得? な不思議現象なのである。
なんかこう、もっとどうにかならんのか、という気がしてならない。
ちなみに料理は、とてもおいしかった。
インドに住んでいない人にとって、この手の話題は、ピンとこないことであろう。しかし、インドに住む人にとっては、あれこれと思うところがあるのではなかろうか。
ともあれ、何につけても、心に小さな波風が立つ、インドなのである。
とまあ、随分と好き勝手を書いているが、しかしわたしは個人的に、タージ・グループのホテルのサーヴィスが好きだし、やっぱり落ち着く。このホテルのホスピタリティは、心地よく感じる。
ということだけは、書き添えておきたい。
■TAJ HOTELS RESORTS AND PALACES
ここ数年の間に、インド都市部の空港が次々に生まれ変わっていることはこれまでも記してきた。数年前にバンガロールとハイダラバードの空港が新規オープンした。
デリーの国内線もきれいになったし、ムンバイの国際線も、昨年工事がほぼ完了した(はず)。そして今回。訪れなかった1カ月半の間に、ムンバイ国内線のターミナルもずいぶんときれいになっていた。
行きはいつものジェットエアウェイズを利用したのだが、帰りは夫と同じく、キングフィッシャーのフライトを選んだ。
キングフィッシャーとジェットはターミナルが異なる。上の写真はキングフィッシャーだ。わたしの愛飲しているビール、Kingfisher ULTRAと同じ名前を冠したバーなどもできている。先進国的!
フードコートも、非常に「モダン」である。KFCやらDOMINO'Sやらと並んで、idli.comなんて店があるのが、そこはかとなく、微笑ましい。
つい5年前、インド移住直前に米国から訪れたムンバイ。国際線の、荷物受け取りの際、カートの数が足りず、乗客同士で奪い合いの喧嘩が起こっていたことが、懐かしい思い出だ。
わたしはエコノミークラスのチケットを買っていたが、夫が出張のためファーストクラスだったことから、わたしの分も交渉してくれ、ラウンジを使用できた。左上の写真がそれである。
まだできたばかりでサーヴィスは不全だが、雰囲気もよく、インターネットのコネクションも完備、快適だった。
ちなみにキングフィッシャー。ファーストクラスと言い張っているが、基本、ビジネスクラスである。エコノミーとファーストの間にはなにもない。
世間ではビジネスクラスと呼んでいるところを、ファーストクラスだと言い張りたい、どこか見栄っ張りな感じのキングフィッシャー航空、ヴィジャイ・マリアCEOなのである。
新しいターミナルの完成でうれしいのは、搭乗ゲートと飛行機が「ブリッジ」でつながれていること。これまでのムンバイ国内線は、ゲートからシャトルバスに乗って、駐機場に止めてある飛行機に向かわねばならなかった。
雨の日も、風の日も、蒸し暑い日も、いちいち外に出るのがなかなかに苦痛であったが、それがなくなっただけ、すばらしい変化のように思える。
さて、離陸前、空港に隣接するスラムを眺めていたら、スラムの住人らが、こちらを眺めているのに気がついた。人々が、ただ、屹立して、飛行機が飛来し、飛び立つ様子を、眺めている。
飛び立てば、たちまち、ムンバイらしい光景が。広がるスラムと、その向こうに住宅地。
こんなに極端に著しい街が、街として機能していることが、貧富だけではなく、宗教やコミュニティやさまざまな差異がぐちゃぐちゃと入り乱れてる場所で、取り敢えず世界が機能していることが、毎度のことながら、奇跡的なことに思える。
飛行機は、北ムンバイから飛び立ち、南東に向けてぐ〜んと旋回する。
左側の席に座って今日は、街全体が見下ろせる。
夕方になり、また雲が押し寄せて、視界が少々遮られてはいるが、しかし南北ムンバイを結ぶ橋、「バンドラ・ウォルリ・シーリンク」がよく見える。
わたしたちが泊まっていたのは、橋の左側のたもとにあるビルディングだ。こうして空から見下ろせば、なにもかもが、ただ小さいだけだ。
「行きは僕、ファーストクラスだったから、帰りはミホが乗っていいよ」
と、「いつになく」スウィートなハニー。
「アルヴィンド、あなたの方が仕事で疲れてるんだから、いいよわたしは」
と、一応は言ってみるものの、乗る気満々である。
これがジェットエアウェイズであれば、わたしは固辞していたところだ。というのも、ジェットエアウェイズのビジネスクラスは、ビジネスマンの「出会いの場」であるからだ。
これまで、ムンバイーバンガロール間のビジネスクラスで、夫は数えきれないほどの人たちと出会ってきたし、旧知の人々とも再会してきた。なかなかに重要な社交場なのである。
しかし、土曜の午後のキングフィッシャー。ファーストクラスの乗客はまばらであり、妻はすんなりと、夫の申し出を受け入れたのだった。
ふふふ。
文句言うな、という話である。
わかっている。
座り心地のよいシートで、わずか1時間半のフライトながら、40分ほどは熟睡して、快適なフライトであった。
今日は、世界で話題のフットボール、ワールドカップについても、人並みに言及したいと思っていたのだが、関係ない話で終始してしまった。
ムンバイ滞在中の、麗しい話題については、毎度、キレイなブログをご覧いただければと思う。
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