ここ数日、ブルーである。わたしも人並みに、ブルーになることくらいはある。昨日の朝。朝っぱらから冴えない気分で庭を歩きつつ、夫に言った。
「わたし、ちょっとブルーなんだよね」
「え? じゃあ、ミホは今、グリーンってことだね」
「なにそれ」
「イエロー(黄色人種)にブルーを混ぜると、グリーンになるでしょ」
「……」
「あ、ごめんごめん、今の、人種差別だよね。気に触った?」
もういい。あなたに弱音を吐こうとしたわたしが悪かった。
と、ここまで書いていると、自分が何に対してブルーだったのかを説明するのもくだらなく思えてくるのだが、一応書いてみるならば、理由の一つは「コンピュータ関連」である。
思い返せば十年前。ニューヨーク在住時、起業したMuse Publishing, Inc.のホームページを作り上げ、その一部を、我が「発言の場」にしていた。
インドに移住するにあたり、一時的にブログを試してみるつもりが、その利便性のよさに5年も続いている。こちらの更新はこまめに行っていたが、ホームページの更新は怠りがちであった。
コンピュータを買い替える
↓
古いホームページ用のソフトが使えない
↓
放置
古いコンピュータも、使えないわけではないので、立ち上げてみるのだが、放置している間にサーヴァーの会社が吸収合併されて、アップロードの仕組みがかわっていた。
あれこれと調べて、ようやく新しい会社からの仕組みを知り得てアップロードしたにも関わらず、しかしなぜかサイトに反映されない。
米国のサーヴァーにメールで問い合わせるも、なにか設定が変わっているのか、ソフトウエアが古すぎるのか、うまくいかない。
気を取り直し、古いドメイン「museny.com」は過去のものとして、インド拠点のドメインで心機一転始めようと、インドにちなんだドメインを取得、ソフトウエアはMacBookに搭載のiWebを使うことにした。
しかしiWebも最新版でなければ独自ドメインにアップロードしにくいというので、数日前、imagine storeで新しいソフト (iLife)を購入してダウンロードしてもらった。
さて、これでなんとかなるだろうかと、設定をしてアップロードするのだが……うまくいかん! のだ。
昔は、わからなくても「やらねばならない」との切羽詰まった状況が常にあった。会社の営業のために、仕事を得るために、ホームページは不可欠になるだろうこともわかっていた。
コンピュータが苦手、などといいながらも、ハード面はさておき、ソフト面はがんばった。独学でソフトウエアの使い方を学び、クオークも、フォトショップも、イラストレータも、一通り使いこなして、DTPを自分でやって、会社を運営していた。
あのころは、今では信じられないほどの猛烈な集中力で、さまざまをこなしていた。
なのに、今のわたしときたら、すぐにくじける。面倒になってすぐに席を立つ。そんな自分にも、がっかりだ!
と思うと、自ずと、ブルーになってしまったのだ。
ま。自分で言うのもなんだが、贅沢な悩みである。くだらんな。このほか、インド日常にありがちな、小さな面倒が頻発して、ブルーというよりは、単に「くさくさしていただけ」のようである。
根気づよく!
がんばろうと思う。
この野菜群。先日開拓したオーガニック野菜の店で、今回初めて注文/購入したものだ。普通の野菜に比べると、少々割高とはいえ、安い。これだけで1100円程度。野菜や果物の豊富さは、インド生活の醍醐味である。
詳しくはきれいなブログに記しているので、ご覧いただければと思う。
■初注文! オーガニック農家の野菜たち (←Click!)
さて、昨夜はご近所さんを招いて、夕食を共にしたのだった。同じアパートメントコンプレックスに住む、時折顔を合わせていたご一家だ。
彼らも米国在住歴が長く、6年前にインドに戻って来たとのこと。ご主人の仕事とわが夫の仕事に共通項もあり、時折、立ち話などをしていた。
つい最近、二人のお嬢さんのうちの一人が「激しく日本好き」になられたとのことで、わたしに会いたいと切望されていたという。
日本好きの理由は「日本のアニメを通して」とのこと。アニメには詳しくないが、しかし今日は日本食でもてなそうと、料理をすることにした。
とはいえ、我が家には日本の食材がほとんどない。それに加え、食器類も、ないに等しい。
箸置きもある。
久々の登場で喜ぶ鳥たち(箸置き)である。
が、箸と箸置きがそろったところで、満足している場合ではない。
ややこしいことに、母親はヴェジタリアン。残る3名はノンヴェジタリアンだ。
インド人を招く場合、そこんところ、非常に注意深くする必要がある。ヴェジタリアンとは、当たり前だが肉類、魚介類、一切禁止。目に見えなくても、だしにかつおなどを使うこともできない。
しかし今日のところは日本の味を供したい。正直なところ、彼らの口に合うとは思えないのだが、しかし「インド的に」アレンジせず、直球日本の味覚に仕上げようと思う。
と、メニューを考えるに、どれもこれも醤油まみれになってしまう。日本食って、本当に醤油だらけなのね。ということに改めて気づく。
味にコクを出すためにカツオ、もしくは鶏ガラだしでも使いたいが、それもできず、淡白な昆布だしである。こんな繊細な風味、わかってもらえんだろうなと思いつつ、だしを取る。
さて、彼らは数秒で到着するご近所に住んでいるにも関わらず、40分遅れで登場だ。長女は不在とのことで、ハズバンドのラメイシュ、妻のバラティ、そして日本好きの次女、ラスヤの3人がやってきた。
ラスヤ、玄関先でいきなり、
「こんばんは! あたしはラスヤです」
と、驚くほど流暢な発音で自己紹介をする。すべてアニメーションで日本語を勉強しているのだと言う。好きなアニメは、"UFO BABY"と、"Alice Academy (Gakuen Alice)"らしい。なんのことやらさっぱりだ。
「わたし」ではなく「あたし」というのは、きっとアニメの影響であろう。一応、正しい発音も教えておいた。彼女は早速、アニメを描いたノートを見せてくれる。
日本人であるわたしに会いたかったらしく、バラティに何度も、
「ねえ、いつミホサンに会えるの?」
と尋ねていたらしい。今日はとても、うれしいのだという。わたしも照れつつ、うれしいのである。
とはいえミホサン、日本人だけど、あまり日本人らしくなくてごめんね。我が家も全然、日本風味がなくて、ごめんね、というもんである。
それにしても、現在10歳だと言うラスヤの、インターネットを通しての独学による、驚くべき学習能力については、書き始めるときりがないので書かんが、ともかく驚いた。
文字が読めないのに、すべて耳で聞いて、会話を学んでいる。アニメの主題歌まで歌ってくれた。これがまたうまい。
さま、さん、くん、ちゃん、の違いについて尋ねられる。なんとか答えきったと思ったら、
「ちゃま、は何ですか?」
ちゃま……。そうきたか。
そのほか、「みたらし団子を食べてみたい」とか、「お茶漬け、おいしいですか」とか、激しくマニアックな質問が飛んでくる。
バラティ曰く、ラスヤがみたらし団子を食べたいから作ってくれというので、インターネットで検索したらしい。結局作るのは断念したらしいが、断念した方がいいと思う。
みたらし団子……。そそる形状をしているが、多分、あなたの口には合わない。今度、白玉で団子と小豆あんの串団子でも作ってあげようかとも思う。そっちの方がまだ、インド少女の口には合うはずだ。
さて、以下は今夜のメニューである。
●エビ、カボチャ、ナス、マッシュルームのフライ(日本のパン粉使用)
これらは前菜(おつまみ)とした。インドでは、食事の前に、ドリンクを飲みつつの会話タイムが延々と続くのだが、その際に、タンドーリチキンやサモサなどつまみ類を食する。その代用である。これらはかなり好評だった。ラスヤは、好物マッシュルームを食べ過ぎて、食事があまり入らなかった様子。
●だし巻き卵(刻みネギ入り)
作りながら、「これって、単に、淡白なオムレツだよな」と思う。形状がぐるぐる巻きというだけで、単に卵。夕飯にオムレツ。可もなく不可もなく、といったところだ。ふんわり、とか、出汁の風味、とか、伝わりそうにない。第一、ふんわり焼けなかった。
●白菜とダイコンの煮浸し
マイハニーの好物だが、彼の味覚は最早インド人ではない。この繊細な風味、素材の持ち味を生かした味付け。南インド出身の彼らには、物足りなかったに違いない。先日、友人にお土産で貰っていた「七味唐辛子」をかけて食べるよう促す。
●鶏肉の煮付け
これは、味付けを濃いめにしたので、好評であった。
●冷や奴
日本食に慣れないインド人にとっては、最早いやがらせのように淡白過ぎる一品だ。醤油だけでは気の毒なので、ラー油をかけた。刻みネギと海苔もかけた。ラスヤは、「おにぎり」も知っていたので、これはおにぎりを巻いている黒い紙なのだ。海藻でできているのだ。と伝えたら、おそるおそる食べていた。微妙な笑顔だった。
●ポテト&ニンジンサラダ(キューピーマヨネーズ和え)
出張で何度か日本を訪れたことのあるラメイシュ。しかし今日の彼に一番おいしかったのは、このポテトサラダだったようだ。豆腐、煮浸しは少量を食べ、あとはひたすら、ポテトサラダを食べていた。キューピー、ありがとう。
●贅沢。日本米
デリーで購入していたヒマラヤ産コシヒカリ(オーガニック)を惜しみなく炊いた。しかし、予想通り、さらさらインド米に慣れている彼らに、日本米は微妙のようだ。しかし、これが日本の味。試していただいた。インド米は大量でも軽くお腹に入るせいか、ラスヤ、たっぷりとお皿に盛った。しかし途中で食べられなくなった様子。「残していいよ」とわたしは言うのだが、両親が「ちゃんと食べなさい」と厳しく、ちょっとかわいそうだった。でも、食べていた。
ラメイシュ、バラティにも日本の文化をあれこれと伝授し、大いに笑ってもらった。
いったい何を伝授したのだ、という話だ。
ともあれ、ご近所付き合いもそこそこにある、我が家周辺。
インドの日常が、しみ込んでくる。
やはりこの物件を選んでよかったと、つくづく思う。
今度はラスヤに、折り紙でも教えてあげよう。
インド発、元気なキレイを目指す日々(第二の坂田ブログ)(←Click)