昨夜、バンガロールに戻ってきた。2週間の日本の旅。今回の旅は、今まで以上に、濃厚な滞在だった。
上の写真は、母の家のバルコニーからの光景。多々良川の河口。その向こうに広がるのは、名島の海。この写真の右側のあたりに、ちょうど80年前の昨日、リンドバーグが、寄港した。
■リンドバーグ:名島寄港80周年「空の英雄」に思いはせ公民館で企画展(毎日新聞)
下の写真は、母の家の近く。駅へ歩く途中で、余りの暑さにやられそうになる。なにしろ、木陰がない。容赦なく照りつける日差しは、アスファルトを熱し、逃げ場のない暑さ。軽く35℃はあったと思われる。
きれいなのはすばらしいが、こうも無機質な光景は、心を緊張させる。
日本を離れて15年の間に、戻ってきたのは多分、これで10回目くらいだと思う。父が他界したときの3週間を除いては、いつも2週間に満たない滞在。
東京、福岡を中心に、慌ただしい旅が常であった。
今回もまた、2週間だったとはいえ、福岡にゆっくりと9泊もしたことは、久しぶりのこと。瞬く間に過ぎたとはいえ、いつもとは異なる方位にアンテナを向け、感受することもできた。
帰国前に、少なからず、気になっていたことである。
つい最近、節電が緩和されたと聞いたがしかし、2週間前に東京へ降り立った時には、本当に、その「薄暗さ」に驚いた。
あるはずの場所にない灯りに、寂しく感じたのは事実。
人々から聞く現状にしんみりと頷きながら、この先のことに、思いを馳せた。
翻って、福岡。
いつもと変わりない、いや変わりないどころか、とても不景気とは思えない賑やかさに、驚いた。
八女郡まで足を伸ばせば、最早震災とは遠い、別世界のような日常。「小さな島国の広さ」を肌身に感じた。
「たとえ不景気だといっても、日本はスーパー・リッチな国なんだよ。いくらインドが好景気だといっても、比べ物にならない。そもそもの豊かさが、違うんだよ」
なにかにつけて、夫が口にするその言葉を、幾度となく反芻しながら、街を見た。
1945年に、なにもかもを失ったかに見えた国が、猛烈な勢いで復興し、彩りにあふれた国を作り上げた。40年もたたぬうちに。
「ある程度」を満喫する余裕もなく、次々に生まれる新しいもの。その新しいものの渦に、帰国するたびに、感嘆を超えて、辟易していたけれど。
独自の進化を遂げる。ガラパゴスのような、日本。
なんと言い得て妙な表現だろうだと思っていたけれど。
これは、避け難い歴史の流れなのかもしれない。人は一定のサイクルで、生まれ、死ぬ。若者は、やがて老い、時代は巡り巡る。
たとえば、若い世代に、「停滞していても豊かなのだから、現状を満喫しろ」と言ったところで。
「不景気とはいえ、衣食住が整い、雨風しのいで生きていけるのだから、ありがたく生きよ」言ったところで。
この国にいる限り、比するなにもなく。見えるは下よりも、上。
望むは、理想は、高い場所にあるのが常。
真に在るべき姿など、生き方など、誰が説くことができようか。とも、思うのだ。諦観ではなく、ただ、率直な、感じとして。
最早わたしも、46歳で、昭和のころをよく覚えているからこその、現代に対する諸々の所感であり。
わたしがもしも、1980年代に生まれていたとしたら、間違いなく、わたしはわたしでは、なかった。
あってもなくてもいいものがあふれていることが、「豊かな世界」だとの価値観のなかで。
この国で日常を過ごしていれば、削り落として生きることのほうが、遥かに困難だということも、よくわかる。
たとえ、モノの洪水に、溺れてしまっても。
たとえ、情報の濃密に、窒息してしまっても。
胃袋は一つ。身体は一つ。とっかえひっかえしなくても、毎日を送ることはできる。でも、目の前に与えられると、欲しいような気がする。必要なような気がする。
動物としての人間にとっては、多分削り落とす方が、軽やかに、純粋に、清々しく、生きられるような気もするのだが。
ただ、敢えて言うならば、この豊かさを「有り難いこと」と感じられぬことが、致命傷になるのではないか、ということ。
為政者に対して、無闇やたらとぶつけられる不平不満。
メディアの皮肉や揚げ足取りを、あたかも自分の言葉のようにして。
自分の有り様は棚に上げ、うまくゆかぬことは、世間や社会のせいにしやすく。
この国に戻るたび、「足るを知る」「身の丈を知る」ことの尊さを、大切さを、感じずにはいられない。
抽象的な雑感は、このへんにしておいて。今回は、「新生・博多駅」の探訪も、楽しんだ。天神はといえば、バーニーズ・ニューヨークなどもオープンして、いつも通りの華やぎを感じた。
博多駅もまた、3月12日に開業した九州新幹線と相まって、活気にあふれている。最初は、その入り組んだレイアウトがわかりにくかったが、2度目に訪れた時には、だいたいが把握できた。
それにしても、日本のトレンドは、依然「若者/女性中心」であり、飲食関係の店が、異様に多いということに、改めて気づかされる。
ところで、博多駅のデイトスにて、博多織と久留米絣の専門店を見つけた。「久留米絣・博多織 そのや」という店。
手工芸品ゆえ、高価なものが少なくないが、洒落たデザインの商品が揃っている。
インドで廉価な手工芸品を見慣れている身にとっては、どうにも購買意欲が沸かない。しかし、うまく着こなせば、きっとすてきに違いない衣類が多々ある。
ところで下の写真、左側のたてよこ絣の反物と、その下のインドのサリーを見比べていただきたい。実によく似ているでしょ?
バンガロールで開催されたシルクマークのエキシビションで撮影したサリー。シルクのダブル・イカットだ。藍染めも美しいが、この華やかさもまた、たまらんのよね。
絣、絣と言いながら、結局、購入したのは艶やかな色合いの博多織。パスポートケースとメガネ入れ。どちらもかなり好みの色合いだったのだ。
しかも、実用性の高い小物と化しているところがすてき。他にも、小物入れやポーチなど、なかなかにお洒落な商品があったので、義姉らへのお土産に購入した。
次回の帰国時には、博多織の工場を見学したいと思う。
さて、今回の福岡滞在。主には、仕事を通して知り合った友人知人らと、時間を共にした。
聞くこと、語ること、経験を分かち合うことで、互いに新しきを知ること多く、豊かな時間を過ごすことができた。本当に。
会う方々がそれぞれに、気遣ってくださる「食の場」の、幸せなこと。
食べ物をやたらと載せるのは憚られるため、大半は『裏ブログ』にのみ、掲載した。
ここでは「新しい場所」ということで、博多駅ビルの光景のみ、載せておこうと思う。FM熊本の『マジカル・フライデー』という番組を通して知り合ったDJの相越久枝さん。
初めてお会いして以来、意気投合。ここ数年の帰国の際には、必ずお会いしているひとりだ。
久枝さんが案内してくれたおかげで、決して一人では気づくことのなかった「駅の屋上」にも訪れ、夕暮れの福岡の街を一望した。
その後、「JR博多シティ」の上階にあるレストラン街「くうてん」へ。
数多くあるレストラン街の飲食店の中から、連れて行ってくださったのは、「ごはん家 椒房庵(しょぼうあん)」。なんというか、激しく「ビンゴ!」な店であった。
明太子や無添加だし(茅乃舎だし)などで知られる明治26年創業の老舗らしい。そもそもは、現在の久山と呼ばれる地にて、醤油と酢の醸造会社「久原醤油」として誕生したとのこと。
自然に囲まれた久山の本店は、博多の古い町家を移築した建築物で、食事もさることながら、その環境がすばらしいらしい。
「今度、ご主人とぜひ、行ってみて」
と、久枝さんに勧められ。次回はマイハニーと一緒に帰国したいものだと思う。
炊きたてのご飯がまたおいしくて、久々の明太子もおいしくて、本当に幸せであった。
それにしても、「くうてん」のヴァラエティ豊かなレストランの数々には、実に圧倒された。
全店、網羅したい。
とさえ、思えた。
平日にも関わらず、大勢の人々で込み合っているという「景気のよいムード満点」さにも、圧倒された。
夕食のあとは、場所を変えて、同じ「くうてん」内の、ポール・ボキューズへ。
食事をせずとも、ドリンクやスウィーツだけを楽しめるのがすてき!
まずはスパークリングワインで、改めて乾杯し、そのあとは、スウィーツとコーヒーのセットを注文。
ブラッスリー(庶民的なレストラン)と冠されてはいるものの、ポール・ボキューズといえば高級フレンチの響きだが、お値段は比較的リーズナブル。
フレンチ・コロニアル風のインテリアが、なんとも居心地のよい店内。飲んで、食べて、語り続ける、本当にワンダフルな夜である。
さて、日本滞在最終日の金曜は、母を誘って、再び博多駅へ。母は、オープン当初の、過激に混雑していた時期に一度訪れたきりだというので、案内しようと思ったのだ。
左上は、箱崎駅。筥崎宮の放生会。訪れようと思っていたが、機を逸した。
千早駅から博多駅までは、本当にすぐ。便利な場所である。バスでの移動が多い母だが、たまには電車で出かけるのもいいのではないかと思う。
博多駅が込み合っており、乗るべき電車がわかりにくいのが、玉に瑕だが。
ランチはまたしても、「くうてん」へ。平日だが、ずいぶんと込み合っている。人気店には行列もできている。
ざっと見て回ったところ、母は「ポール・ボキュースがいい」というので、昨夜に続いて、またしても!
思えば数年前、久枝さんと夕食をとった店に、翌日改めて、母と妹を伴って訪れたこともあった。
あの店も、すてきだったなあ。
ランチのセットは、メインとデザート、コーヒー(紅茶)がセット。ほどよいヴォリュームで、味わいもよく、母もとても、うれしそう。
昨日の洋梨のタルトも美味だったが、今日のブランマンジェも非常においしい! 風味豊かでクリーミー。母のチョコレートムースもまた、ラズベリーソースとの相性が絶妙であった。
今回は、福岡に10日ほども滞在し、ゆっくりしていたはずなのだが、振り返ればなんとも濃縮された短い時間であった。
行きたかった場所、行きそびれた場所も多く。しかし、このほどほどのペースで行動したのはよかったと思う。というのも、このごろは、さすがに体力が落ち気味だ。
認めたくはないが、事実である。
昨日は、朝のフライトだというのに、福岡からシンガポールの便では爆睡。食事のあとに飲んだワインが利いたのか、目が覚めたら「免税品の販売は、まもなく終了します」のアナウンス。
おかしいなあ。まだまだ到着までは時間があるだろうに。と映画を見ようとした矢先、そろそろシンガポール到着との案内が!
シンガポール空港では、4時間の待ち合わせがあったのだが、いつものトランジットホテルでマッサージを受けてシャワーを浴び、食事をして、ちょっと買い物をしていたら、あっという間に乗り継ぎの時間。
シンガポールからバンガロールまでの3時間余りも、食事以外はほとんど寝ていた。
夕べ、自宅についてからも、早めに就寝し、目覚めたのは8時間後。いったいどれだけ寝るんだという話だ。
そして今日、日曜日。荷解きをしたり、食事を作ったり、メイドが休みなので洗濯をしたり、こうしてブログを書いた以外はもう、何ら生産的なこともできず、庭でぼけ〜っとしたり、昼寝したりのだらけた一日。
という次第で、なかなかに、体力の低下を痛感する昨今。
休めるときには適度に休み、無理なく元気にアクティヴに生きたいものである。
さて、現在午後10時。早くも、眠たい。
今日はとっととシャワーを浴びて、就寝しよう。明日月曜から、「通常営業」目指して、がんばろう。おやすみなさい。