午後6時を過ぎるともう、夕闇迫り、四季のめりはりないバンガロールでも、晩秋のころの遣る瀬なさが、かすかに感じられる日々。
まもなくバンガロール生活も6周年を迎えるが、今年ほど雨が多かった一年を知らない。モンスーンの時期が、延々と続いているような日々。
この時節の雨は冷たく、しんと滲みる。
さて、夕べは、インディラナガールにあるライブハウス、The BFlat Barへ。ここではライヴを聴きながら、食事やドリンクを楽しめる。
バンガロールには、こういう店が意外に少なくないのだ。
心地のよい音楽に包まれていると、ここがバンガロールなのか、マンハッタンなのか、わからなくなる。刹那、ニューヨークでの日々が恋しく思えるのもまた、いいものだ。
などと、感傷に浸るは束の間。
音楽のヴォリュームを超える声でしゃべり始めるお客がいて、うるさい。業を煮やして注意をせねばならないあたり、やはりここはインドである。
ボーカルはニューヨーク在住のフランス人。
サックスは米国在住のアメリカ人。
ベースはパリ在住のスペイン人。
そしてドラムはデリー在住のインド人。
てんでバラバラのメンバーが、ほんの一時期、一つのバンドを構成し、チームワークも見事な調和で、心地のよい旋律を生み出してくれる。
もう少し頻繁に、ここへ訪れ、音楽を聴こうねと、夫と語り合いつつ。
旅情、かきたてられる夜。
さて本日。土曜日だというのに、慌ただしくも不毛な朝だった。最後の治療のために歯科医へ向かったのが11時。しかし、アポイントメントは10時だった。
わたしとしたことが、1時間、勘違いをしていた。ジャーナルには確かに10時と書いていたのだが。歯科医を待たせた挙げ句、わたしも無駄足となり、申し訳なくも不毛に哀しい土曜の朝。
ドライヴァーとのやりとりでもストレスがたまっているなど、ネガティヴな事態が重なって、結構、不機嫌な朝。
午後は心機一転、ひと仕事片付けようか、それとものんびりしようか……と思案しつつ、FaceBookを見ていたら。
ローカルフード探検隊なU-KO隊員が、日本語弁論大会について言及しているコメントを発見。
本日午後2時から開催されるという。
諸事情につき赴く予定ではなかったのだが、急に思い立ち、訪れてみることにした。
バンガロールにて、日本語を学ぶインドの人たち。
個々人によってレヴェルは異なるものの、みな、一生懸命に思うところを伝えようと話している。
インドの人たちの日本語の発音は、欧米人のそれよりもかなり聞き取りやすく、クリアだ。
驚くほど流暢に話す人もいる。
しかし、話せるからといって、理解しているかどうかはまた別問題。
流暢に話せても、スピーチのあとに受ける質問の意味がわからない人もあるし、その逆もある。
日本語の教授法を「ほんの少しだけ」勉強したことのあるわたしは、日本語を教えることが、どれほどに難しいことかが、よくわかる。
同時に、それを学ぶことがどれだけたいへんかということも。
だからなおさら、彼らの努力に敬服する。そもそも、母国語でさえ、ペーパーを読まずに人前で語ることは簡単ではないのだから。
一人一人のスピーチの内容について言及したいところだが、異様に長くなるのでやめておく。
スピーチが終わった後の審査時間。
突然来訪したわたしまでもが、壇上に立っている理由。
それは、「箸づかい競争」に急遽、駆り出されたからだ。
「余興」として、参加者がグループにわかれて箸で豆をつまむ競争をするらしい。
日本人チームの参加者が足りないので、出てほしいと、お世話係のU-KO隊員改めFさんに頼まれた次第。
お気づきの方もあるだろう。TARO隊員もなにげに参加している。ローカルフード探検隊、こんなところでも、お役に立っております。
それはそうと。
箸遣いに慣れている日本人は、左手を使えという指令が。
ちょっと待ってよ。左手で箸など、使ったことないし。豆を掴めるかどうか、見当すらつかない。ちょっと練習してみたらこれがもう、難しいこと!
こんなことなら、前の晩に自主練しておくんだったよ!
って、なにをそんなに熱血してるんだよ自分。
そもそも、来るつもりもなかっただろうに自分。
それがもう、豆を掴もうものなら、箸の先がぷるぷる震えたりして、コントロール不能。
髪振り乱しながら集中したものの、30秒間で左の皿から右の皿に移動できた豆の数、わずか3個。
日本チーム、惨敗。
左手って、本当に、不器用なのね。
などというしょうもないレポートを書くくらいなら、スピーチの話でも書けという話だな。
日本語の能力云々もさることながら、日本語を学び、日本を少なからず知る彼らが、日本や日本人に対して、どう感じているか。
日本へ留学した際に、どのような思いをしたか。何を学んだか。
それらを聞くことによって、わたし自身が学ばされることも、少なからずあった。
突っ込みたいところもたくさんあったが、それはそれで、楽しめた。
日本語を学ぶインド人のスピーチを「聞きにいってあげる」のではなく、「聞かせてもらいにいく」という心境である。
今回、日本人の来訪はあまり多くなかったが、これはぜひ、家族皆さんで出席すべきイヴェントだと思われた。
来年もバンガロールにいらっしゃる方、参加をお勧めします。
最後に。
ヴォランティアで、この日本語弁論大会をお手伝いされていた方々、お疲れさまでした!