あと数時間後には空港へ向かうのだが、荷造りは終わったし、あとは夕飯を食べてシャワーを浴びるだけなので、忙中閑あり、旅の前に記録を。
昨日、MGロードに面した雑居ビルの一隅にあるGANGARAMSを訪れた。
今から47年前、オーナーのガンガラム氏により書店として出発したこの店。徐々に規模を拡大し、1階は文具店。2階は一般書店、3階と4階は専門書店を構える。久しく、バンガロールの人々に親しまれてきた。
この店の向かいに、昨年、メトロのMGロード駅ができた。それにより、このビルディングは、大家がデヴェロッパーに売ることになった。
デヴェロッパーは駅に直結するショッピングモールを作るという。それは最早、時代の趨勢。誰にもその流れを止めることはできない。
新しいモールの賃料は、現在の約10倍に跳ね上がるという。
ここが潮時、と、このビルディングの店を閉めることになった。もっとも書店は、近所(老舗食堂Koshey'sの2階)に移転する。
文具店と、そしてペーパークラフトを扱う部分だけが、閉店だ。
「いや、新しい店はブラザー(弟?)に任せるんだ。僕はもう、この仕事はしない。ずっと仕事を続けてきたから、ちょっと休んで、別のことを始めるよ」
実はこの店の閉店を知ったのは、義姉スジャータを通してだった。数週間前、彼女が左上写真の本を持ってきてくれた。
バンガロールの歴史的背景を始め、さまざまな「物語」と「データ」がわかりやすく編集された本だ。この本の編集に、ガンガラム氏が関わっている。
他にも数冊の本を出版してきたという彼。今後はそちらに仕事をシフトするのかもしれない。
いつ閉店なのか知らないまま、ニューヨーク行きを前日に控え、昨日訪れた。
すでに「友人の方のみ、販売します」とサインがあり、一般客を受け付けてはいなかった。閉店は、翌日、つまり今日だった。
店を覗き込むと、ガンガラム氏がいる。
彼と顔を合わせたことは数回しかなく、決して「友だち」といえる間柄ではなかったが、
「特別に、どうぞ」と、店にいれてくれた。
噂によると、彼は遠い昔、日本人のガールフレンドがいたとのことで、日本語が少し話せる上、日本人女性に対して、とてもフレンドリーなのだ。
ペーパークラフトのコーナーに直行。ここの商品は、ムンバイやデリーでも入手できる店があるのだが、しかし、バンガロールではここが一番の品揃えだった。
ここはもう、「大人買い」である。
グリーティングカードや便せん、封筒、インド版ご祝儀袋にノートブック……。あれこれと、気に入ったものを、選ぶ。
伝統的な手すき紙で作られたもの、艶やかな版画が映えるもの、リサイクルかつハンドメイドのエコフレンドリーなもの……。
さまざまな種類の麗しき紙。
選んでいると、ガンガラム氏がやってきて、しばし、語り合う。
「少し寂しくなりますが、でも新しい門出。次なるステップの幸運を願っています」
と、別れを告げた。
と、書いているうちにも、そろそろ夕飯の時間だ。写真だけを、ここでは紹介したい。インドの、紙製品の麗しさの一端を、堪能していただければと思う。
手づくり隊の活動のヒントになりそうな商品もあれこれとあり。埃かぶった商品を選ぶ束の間、心が温もるひとときでもあった。
さて、そんな次第で、ニューヨーク、行ってきます。
旅のレポートは、多分、iPhoneで写真とともに、記録する予定。
Miphone@India (←Click!)をチェックしていただければと思う。