インドとは、乳製品王国である。インドの牛乳はおいしい。と、わたしは思っているのだが、そうは思わない人、またそれに気づいていない人もいるようで、折に触れてこのブログでも紹介して来た。
しかし、過去に数回紹介したからと言って、この膨大なブログの記録からそこへたどりつく人は少ない。
ということで、改めて、牛乳の話題。先月、我が家に来訪した旅人の学生が、「インド人って、あまり牛乳を飲まないんですね」と言う。
彼曰く、スーパーマーケットでロングライフのパック入り牛乳を少し見かけたが、それ以外の主要な牛乳の存在に気づかなかったらしい。
インドにおける一般的な牛乳は、上の写真のようにビニル袋入り。これを「煮沸して一両日中に飲む」のが基本である。
殺菌のために煮沸し、防腐剤が入っていないので即飲むことが望まれる。たとえば、夜、煮沸して、冷ますのを待って冷蔵庫に入れようと思い、うっかり冷蔵庫に入れ忘れていたら、朝、腐っていた。ということもある。
貧困層の人たちが冷蔵庫を欲しがる理由の一つは、この牛乳の保存。
一方、食品を冷蔵することは食べ物のエネルギーを奪う、すなわち作り立てを食するのがよいとされる伝統があるので、牛乳さえ冷蔵できればいい、という家庭も少なくない。
家電メーカーは、低所得者層向けに、電気代のかからない、そして場所をとらない、小型の冷蔵庫を発売すればいいのにと、常々思っている。
という話はさておき、牛乳だ。旅人がインドの牛乳事情を知らないのは仕方がないとして、先日、サロン・ド・ミューズに集われた駐在員ご夫人数名も、ロングライフのまずい牛乳をお飲みだとのこと。
そこで、前夜に煮沸したばかりの牛乳をグラスに入れてお出ししたところ……みなさん、目を輝かせて、
「おいしい!!」
とおっしゃるではないか。
早速、ご自宅で試され、「インドで、こんなに美味しい牛乳が飲めるとは!」という感動のメールを送って来た方もいた。
インドの牛乳に対して否定的なことが書かれている日本人のブログなどを見るにつけ、「なんでだ?」と不思議に思ってきたが、久々に自分の味覚がインド寄りになりすぎていないことを確認する思いだ。
ローファットの牛乳も売られているが、わたしは濃厚な「リッチミルク」が好みだ。ローファットを1杯飲むなら、リッチを1/2杯飲む方がよい、というくらい、味が違う。
そのまま飲んでも、温め直しても、カスタードクリームやフレンチトーストなどを作っても、ホワイトシチューやグラタンに使っても、ともかく味が濃厚なので旨い。
しつこいようだが、我が家のホームメイドのタルトやカスタードクリームなどが好評なのは、インドの牛乳やバターや小麦粉がおいしいからである。
ちなみに温めた牛乳にインスタントコーヒーを入れて混ぜて飲むだけでも、おいしい。
わたしが気に入っているのは、Nirgiri'sの牛乳。インド移住後、初めて飲んだ牛乳がこれだった。引っ越しのプジャー(儀礼)のあとに飲んだコーヒー牛乳が、五臓六腑にしみたものだ。
ムンバイに住んでいたころは、お気に入りの乳製品会社、パルシー・デイリーの水牛ミルクも愛飲していたものだ。ここのクルフィー(インド版アイスクリーム)がまた美味おいしい。
■引っ越しを祝うプジャー(儀式)に参加 2005/11/18 (←Click!)
■ミルク手帳とミルク券 2005/12/28 (←Click!)
■ワイン/牛乳/蛇/マンゴー/ゲーム/蒸しパン 2009/06/22 (←Click!)
■電球求めて喧噪へ。クロフォード市場で野菜。2009/08/02 (←Click!)
煮沸が面倒だ、油断すると噴きこぼれるのがいやだ、と言う人も少なくない。
確かに面倒だ。が、その面倒を乗り越えてでも、この牛乳は飲む価値がある。と、わたしは思う。
ところで上の写真は、牛乳煮沸用の鍋。二重構造になっていて、ホイッスルの部分をはずして水を入れる。外の水が沸騰したら笛が鳴る仕組みで、沸騰して噴きこぼれるのを防げる。
最近購入したばかり。便利だが、笛が鳴り始めるのが早く、「もうちょっと煮立たせたい」のに笛がうるさいのが難。
ともあれ、大鍋で煮沸するなどの工夫をして、インドの濃厚牛乳を楽しんでほしい。
ついでだが、そして何度も書いて来たが、体調が悪い時など、温めた牛乳にハチミツとターメリック少々を入れて飲むと、効く。風邪の引き始めなど、就寝前の1杯が明日の健康を招くのだ。
お試しあれ。
ああ。なんか知らんが、牛乳を熱く語ってしまった。