本日は、買いそびれていた家財道具、リネン類などを調達しに、南ムンバイのパレル地区にあるショッピングモール (HIGH STREET PHOENIX)へ。一通り買い物をすませたあと、すぐ近くにあるGOOD EARTHへ赴く。
●モダン・インドの高級インテリアショップGOOD EARTH
デリーのカーンマーケットにあるこのブティックのことは以前も記した通りだが、ムンバイ店を訪れて驚いた。規模が非常に大きいのだ。
ごちゃごちゃと新旧の店舗が入り乱れた、玉石混淆、路地裏のようなロケーションであるにも関わらず、店内は高い天井を生かしたインテリア。ニューヨークのソーホーのロフトを思わせる。
店内は撮影禁止に違いないのだが、何枚か静かに撮影。リサーチなどの仕事上、店内写真を要求されることが多いのだが、順当な手続きを踏んで取材許可を取っていると百年ほどもかかりそうなので、隠し撮りですませてしまうことが多い。
最近ではファインダーを覗かず、撮っていないふりで撮ることさえできるようになった。多少アングルが悪くても、後にトリミングをしたり傾きを調整したりして、見られる写真に整えればOK。まったく以て、自慢してはいけない特技である。
それにしても、このインド的にはたいそう高級なブティックは、置かれている品々もまた、いやというほどいいお値段。しかしながら陶磁器類はとても素敵。これらは品質にふさわしい値段と思われ、いつか欲しいと思っている。
今日のところは部屋のインテリアになにかを買いたかったのだが、これというものが見つからず。アートフラワーは好きではないのだが、生花を絶やさずにいけるというのも難しいので、夫の名に因んで白い蓮の花を買った。
ARVINDとは、サンスクリット語(梵語)で蓮の花を意味するのだ。
●THE TASTING ROOM で美味ランチ
GOOD EARTHの店内で気になったのは2階にあるダイニングエリア。THE TASTING ROOMという小さなレストランだ。メニューを見せてもらえば、かなり魅惑的なコンチネンタル料理が並んでいる。
午後1時前とランチタイムにはまだ早いせいか(インドでは2時ごろがランチタイムの盛況時である)、お客が入っておらず、料理の具合を見ることができなかったが、ともあれ試してみることにした。
まずはドリンクにスイカのジュースを選ぶ。サンドイッチは250ルピー前後、アントレは全体に350ルピー前後。つまりは1000円前後とインドにしては高いが、しかしこのグローバルスタンダードな雰囲気の店としてはお手頃だ。
ウエイターに、この店でもっともお勧めのアントレはどれかと尋ねたら、フィレ肉のステーキだと言う。そう言われれば、試さずにはいられない。久々のビーフである。ちなみにインドのビーフは米国のそれに比べるとかなり柔らかく、きめも細かく、日本のそれに近い気がする。
ただ、わたしは脂身が適度に入ったものが好きなのだが、インドのはまったくの赤味のフィレ肉が主流である。
食事の前に届くパンもおいしい。スイカのジュースもおいしい。
盛りつけも感じがよく、肉の量もほどよい感じ。
ミディアムレアで頼んでおいたのだが、焼き加減も抜群だ。
肉は汁気を十分に含んでいて、柔らかく、風味もまろやか。
インド人の嗜好にあわせてか、ソースの風味が強すぎる気がしたが、ソースをあまり付けずに、付け合わせの粒マスタードを付けて食べるとちょうどよい。
このマスタードがまたおいしい。きっとホームメイドであろう。
インドには、豊富にマスタードシードがあり、さまざまなインド料理に使われるというのに、おいしいマスタードが手に入らないことに不満を持っていたことはすでに何度か記したが、ムンバイに来て以来、INDIGO DELI といい、この店といい、フランスの ディジョンに勝るとも劣らぬマスタードを食べられることに感嘆する。
食べきれなかったら持ち帰ろうと思っていたのだが、きれいに平らげてしまった。
ここはまるで、マンハッタンのユニオンスクエアにあるABCカーペットのようだ。インテリアショップの中にあるダイニング。よく似たコンセプトだ。しかし、この店の方がむしろ、洗練されている。
……ムンバイ。やっぱり都会だとの思いを新たにする。バンガロールとは、全然違う。
思いがけずおいしい料理に巡り会えたので、誰がシェフなのだろうと気になった。ウエイターに尋ねたら、今シェフを呼んできますという。
歳のころなら三十代。肌は浅黒いものの、国籍不明な印象の、にこやかな男性が登場した。アミッシュ氏。握手を交わし、彼も椅子に腰掛けて、しばしおしゃべりをする。
実はこの店、数カ月前にオープンしたばかりで、まだ正式に開店のアナウンスメントをしていないそうだ。
アミッシュはつい最近まで広告業界に身を置いていて、日本のLEVI'Sのコマーシャル制作にも深く関わっていたらしく、日本へも訪れたことがあるのだという。
しかしながら、広告業界で働くことに疑問を覚え始め、料理が好きだったこともあり、カナダの料理学校で学んだ後、ここムンバイで店をオープンしたのだとか。
「自分の作品への評価が、お客さんの表情や雰囲気で、すぐにわかる。成果がすぐにわかること、喜んでもらえることに、仕事のやりがいを感じているんです」
今はまだ準備期間。キッチンも狭いため、テーブル数も控えめに、大きく宣伝もしていないようだ。
ステーキソースなどの調味料はもちろん、マスタードはやはり、この店のオリジナルだとか。
「何人かのスタッフに手伝ってもらっていますが、みな仕事熱心で一生懸命なんです。このマスタードはベンガル地方出身のスタッフが、それはもう丁寧に作ってくれるんですよ」
「みんな料理にかける真剣味はピュアなんです。たとえばお客さんからおいしくないとの評価を得たときなど、涙を流して悔しがるスタッフもいましてね。ちょっとおかしいけど、愛おしいなと思うんですよ」
そんな彼は、カナダや米国、シンガポール、欧州など各地で転々と暮らしてきたNRI。加えて祖母がフランス人と、一言では語れないバックグラウンドのようだ。
インドに暮らし始めて2年余り。多くの出会いがあって、多くのバックグラウンドを見ている。「十億分の一のインド」は、頓挫したままだが、いろいろな人にまた、インタヴューをする日々を始めたいと思わせられた。
「今度はぜひ、ご主人と一緒に、ディナーでも食べにいらしてください」
笑顔で勧められた。自宅からは少々遠いが、近い将来、訪れたいと思う。
●FABINDIAでリネン類などを調達
FABINDIAもまた、デリー拠点のリネンショップであるが、ムンバイ店の規模は大きく、買い物がしやすい。今日はここで、ベッドルームやキッチンのリネン類をまとめて調達した。また、この店オリジナルのオーガニックな調味料やサプリメント、シャンプーソープ類も購入。
インドでは、天然素材の商品が手軽に入手できるのが本当によい。
ケミカルな匂いがしない、ナチュラルで優しい香りの天然素材の商品を使えることは、インドでは珍しいことではないが、先進国から来た者にとっては、むしろ贅沢なことである。
買いものをすませたあと、店内のメザニンにあるMOSHE'Sの支店でカフェラテ休憩。
今日はこの他に、BOMBAY STOREでインテリア小物をチェック。加えて「肉屋開拓」というミッションがある。
もうひとがんばりである。
●肉屋で肉を買う。
インドの肉屋。クロフォードマーケットをはじめとする(我が家の近所ではコラバマーケット)地元の市場で調達するのもいいが、若干、エネルギーを要する。
まるで屠殺場な肉屋を経験するのも悪くないが、今日のところはちょっと軽く買いたいところだ。やはり9階のキムさんに教わった、THE TAJ MAHAL HOTELに隣接する肉屋へと赴いた。
今日のところは鶏肉を3羽。1羽は丸ごと、2羽は裁いてもらう。それに豚肉、鶏肉のミンチ、豚のショートリブ、鶏肉のレヴァー、卵などを購入。
中国人なら足付きの鶏を買うのだろうが、さすがに日本人としてのわたしはそのあたりを調理したことはないので、頭と足だけは切り落としてもらう。
見ているだけで「あいたたた〜」な光景である。我は生き物の肉を食らって生きているのだ、ということを、実感させられる光景である。これがいやなら、ヴェジタリアンになるべし。である。
●本日、結婚記念日(米国編)であった
夏場の我々は、記念日、誕生日が目白押しである。
本日6月30日は米国で結婚申請をした日。7年前のことだ。
7月7日七夕は出会い記念日。12年前のこと。
7月18日はインドでの結婚式記念日。
8月9日はアルヴィンドの誕生日で31日はわたしの誕生日。
夏場に集中していることもあり、個々の日がおろそかにされがちでもある。案の定、アルヴィンドは夕方の電話でわたしから「今日、何の日か知ってる?」と言われて、しばらくして思い出したようである。
帰宅直前、電話が鳴る。
「今日は僕たちの特別な日だから、MOSHE'Sに予約を入れたよ」
「特別な日」と言うわりに、まったく特別感のないレストランではないか。なにしろ外食続きだし、外は大雨だし、今日のところは家で食事をしようということに。
本日調達したポークのリブ肉を切り、FABINDIAで買ったガーリックとジンジャーのチャトゥネを砕いてあえてみることにした。本当はニンニクやショウガ、リンゴ、タマネギなどを自分ですりおろすのが美味なのだが、今日のところは面倒だ。
チャトゥネ、醤油、白ワイン、ブラックペッパーなどを適当に入れ、両の手でしっかりと揉み込んでしばらく寝かせておく。
タマネギのみじん切りをオリーヴオイルでじっくりと炒め、マリネした肉を入れて焼く。
ニンジンと冷凍食品のグリーンピー(インド産は歯ごたえがあり、食べごたえがある)を茹でて、付け合わせとする。
どう見ても付け合わせの野菜が多すぎるが、それはそれである。
明日のランチにすればいいのである。
ポークは謎めいたレシピで作った割に、かなりいけた。
骨がちで食べにくいが、その部位だからこそおいしいのだ。
わたしに関して言えば、本日、肉の食べ過ぎである。
ともあれ、今後チャトゥネやペーストなど、インド産の調味料を隠し味として積極的に利用してみようと思う。
外は激しい雨。
モンスーンの本領発揮と言わんばかりに、風は吹きすさび、雨は打ち付ける。
このモンスーンの時期をかいくぐって、こうして新しい住まいを得、無事に結婚7周年(まだまだ新婚)を迎えられたことに感謝である。