だから、なぜバナナが品切れになるんだという話だ。よくもまあ懲りずに、恥ずかしげもなく。どこまでも、よくわからない国だ。インドとはまた、違った意味で、わからない我が祖国。
いろいろとこの件に関しても、書きたいは尽きないが、「口うるさい女」になりかねないので、控えておく。というか、すでに「古い話題」か。
それにしても、こんにゃくゼリー。こんにゃくゼリーが、ちょっと気の毒だ。餅を喉に詰まらせて死ぬ人の方が断然多いことを考えると。
ちなみにわたしの母方の祖父は、かれこれ40年前、餅を喉に詰まらせて他界した。いやいやほんとに。笑わないでくださいな。
だからって、
「祖父を死に追いやった憎っくき餅!」
「二度と餅を食べぬ!」
などと叫んだ親類縁者は、誰もいなかった。はず。
「おじいちゃんは、老衰だった」
という気運さえ、漂っていた。ひょっとすると、平和な時代だったのかもしれない。
餅はおいしい。大好物である。おじいちゃんのことを、わたしは大好きだったが、餅も大好きだった。
餅に罪がなく、こんにゃくゼリーに罪があるのは、いったいどうしてだろう。ああ、なんだかよくわからんが、餅が食べたくなって来た。
今、実はバンガロールだ。マイハニー(夫)も一緒である。というのも、インドは本日、ガンディの誕生日につき休日なのだ。従っては、明日金曜日を休暇にして、4連休にしてバンガロール宅に戻って来た次第。
それに加えて、昨日からナヴ・ラートラ(九夜)と呼ばれる祭りが始まった。
詳細は以前書いた気がするので割愛するが、ともあれ、また祭りである。
ムンバイのご近所は、またしてもお祭り騒ぎであった。
みんな、たいそう元気がよい。
右の写真は、我が家から撮影した近所の「お祭りコーナー」である。ネオンがピカピカ光っている。加えて音楽がガンガンと鳴り響いている。宗教音楽ならまだしも、ボリウッド的カジュアルな、しかし重低音がドスドス響く、近所迷惑な音楽である。
しかし、祭りである。だれも近所迷惑だとは思っていないようである。夜の11時頃まで、それはそれはもんのすごい音量で、「ご近所総ディスコ状態」であった。バンガロール宅が静かな分、このムンバイ宅近隣のうるささは、別世界である。
これもひとつの人生経験であろう。
昨日、今度は我が家の「裏」にあるTaj President Hotelで、またしてもエキシビションが行われていたので、足を運んだのだった。
このごろは、ディワリ(インドの正月)が近く、また結婚式シーズンも近いとあって、いろいろなフェアが多いのである。
一応見学をした後、今度は買い物の用事があったので、Taj Mahal Palaceへ。ランチは久しぶりにお気に入りのSea Loungeへと赴く。インド門を眺めるこのラウンジが気に入っているということは、これまで何度か記して来た。
初老の給仕たちの面々は、久しく変わらないのに、メニューはしばしばかわり、そのたびに、値段が上がっていく。今日はさすがに、「なにかが、おかしい」とさえ、感じてしまった。
格別においしいとも思えないクラブサンドイッチと、コーヒー。サーヴィス料やチップを入れると1000ルピーを超える。3000円近くもするのだ。場所代というには、もはや高すぎる域に達している。
移住前に宿泊していたころ、つまり少なくとも3、4年前は、間違いなく半額以下だった。いや、移住後に夫の出張や自分の出張で訪れたとき、つまり2年前ですら、こんなには高くなかった。
「高級ホテルでも、インドでは手頃な値段で食事ができるのがいい」
と思えていたはずだったが、これではもう、先進国の高級ホテル並みではあるまいか。過激に安い素材の原価や人件費を考えれば、さらにその上をゆく。地価が高いから、仕方がなのか。高く設定しても、お客は絶えないから、それでいいのか。
雲泥の差が、よりいっそう広がって広がって、毎日わけがわからない。小さいものも、大きなものも、その「お金のつかいかた」について、考えらせられることが多い日々。
振り子が左右に振られるように、右へ左へ、揺れて揺られて振り回されている。軸を、しっかりと持たなければと、この小さなランチのひとときにさえも。
もう、お気に入りなんだか、気に入らないんだか、わけがわからぬSea Loungeである。
今朝、10時半の便に乗るべく家を出た。今日もまた、途中で乳製品大手AMULの広告を激写した。
このお子様は経済問題にも敏感に、憂慮の表情を見せている。
$が溺れている。
ちなみに、Makhanとはヒンディ語で「バター」の意である。
"Market" にかけているのだろう。
ちょっと、無理があるんじゃないか。
とはいえ、"Market" にかけているとわかってしうまうということは、無理があるとはいえないのではないか。
この広告を楽しみにしている人、わたし以外に、いったい何人くらいいるのだろう。
しばしば飛行機に乗っている。
「疲れるでしょ?」
と言われるが、しかし毎日、日本の都心の通勤電車に揺られるよりは、疲れないと思う。昨今のインドの空港は、どんどん快適だ。
カフェもあるし、ラウンジもあるし、インターネットの接続もできるし、多少飛行機が遅れても、さほど辛くはない。
チェックイン時、満席ではないことを確認した上で、三つのシートのうち、窓際と通路側をとっておいた。こうすると、中央に誰も座らない可能性があり、2人でゆっくりできるからだ。夫が窓際に座る。
明日の電話ミーティングのため、眉間にしわを寄せながら、ノートにメモをぎっしりと書き込んでいる夫。仕事中の夫は、普段とは別人の様相で、端から見ても脳内にさまざまな情報が渦巻いているのがわかる。
脳内高速回転状態の夫に比して、わたしはといえば、飛行機の心地よい揺れとともに、脳内低速回転状態。うとうととまどろむ。
食事サーヴィスのカートの音に目覚め、ふと夫の方を見る。
……ん?
ノートをのぞきこめば、メモをとってはおらず、スケッチをしている。
ノートの半分近くを使い、そこには飛行機の翼と、ポカポカと浮かぶ雲が描かれている。
お、お絵描きですか?
「今日の空は、きれいだねえ」
そう言いながら、雲に陰影を付けている夫。
それにしても……。へ、へたくそ。
でも、そのへたくそさ加減が、かわいい。
わたしはのろけているのでありましょうか?
ともあれ、今日の空が、彼の絵心をかきたてるほど美しくて、本当によかった。