昨日、新聞の記事(The Hindu)に、現在バンガロールの植物園、ラル・バーグにて、北東インド8州のオーガニック農家が集ってのフェアが開催されているとの記事があった。
パイナップルやキウイなどが販売されているという。インド北東部でパイナップルが栽培されているとは知らなかった。
国産のキウイに関しては、栽培されているものの、ニュージーランド産のそれに比べて形が小さく、見劣りするということから、普及しないままであるという話を聞いたことがある。
少なくともバンガロールで国産キウイを目にしたことはない。味さえよければ形など問題ない、インド産を購入したいと思っていたこともあり、早速、OWCコーヒーモーニングのあとに、植物園へ赴いたのだった。
週末ともなると、家族連れやグループで激しい混雑となるこの植物園。平日の今日は人出もそこそこ、歩きやすい。
さてここ数年のうちにも、インドにおけるオーガニック農作物の生産に力が入り始めていることを顕著に感じる。
たとえばひところ話題になった、綿農家の自殺者多発のニュース。あのころと同時発生するように話題になりはじめたオーガニックコットン。
などといった話になるとまた長くなるので話を戻す。
ムンバイを離れた直後、確か今年の1月あたりからは、北ムンバイで近隣のオーガニック農家によるファーマーズマーケットが開催され始めた。
ここカルナタカ州でも、オーガニック農家への支援が積極的に行われ始めているとのニュースを目にする。
オーガニック農作物専門の店も市街に点在するが、チェーン展開しているスーパーマーケットでも、オーガニック農作物のコーナーを設け始めているところが増え始めている。
たとえば、オランダ発のスーパーマーケットSPARをはじめ、SPENCER'S、FOOD WORLD GOURMETといったチェーン店の一部店舗において、その傾向が見られる。
インドの農作物に関しては、高濃度の化学肥料や農薬を使っている農家が少なくないとのニュースをこれまでも幾度か目にして来た。
従っては、路傍の露店などで購入するのではなく、バンガロールでは主にNAMDHARI'Sなど信頼のおける店、ムンバイではNATURE'S BASKETなどで意図的に購入して来た。
加えて、オーガニック専門店も利用している。
過度に神経質になることはないと思う一方で、野菜たっぷりの食生活を営んでいる以上、そのクオリティには気をつけたいもの。
先進諸国ではオーガニック野菜といえば高価だが、インドではさほどでもないというのが手軽に購入できる理由の一つだ。
インド生活の醍醐味のひとつともいえる。
さて早速、園内に入り、フェアが開催されているエリアへ。プロムナードの両側に、いくつもの店が並んでいる。まず一番に目に飛び込んで来たのは、パイナップル。
目、というよりは、鼻に飛び込んできた、と表現するほうが正しいかもしれない。甘酸っぱいパイナップルの香りに吸い込まれつつ、味見をさせてもらう。
これが、甘酸っぱくもマイルドな酸味で、実に美味!!
一両日中に食べられるようにと熟れているものを二つと、来週のためにまだ青いものを2つ買った。一つ40ルピー。約80円。
ちなみに販売しているのはナガランド州から来た農家の人たち。毎度親しみを覚える顔つきだ。写真撮影にも快く応じてくれて、なかなかにいい感じの一枚である。
こちらの、なんとなく昭和なムードが漂うお兄さんもナガランドから。こちらは日本の温州みかんを思わせるみかんを売っていた。
みかんは薄汚れ、不揃いで、しかしそれこそが、自然のありのままの姿。味見をすればこれも美味。こちらも500gほど購入。
メディアが取材に訪れていて、インタヴューを受ける店の人の姿も見られた。わたしもどこぞの新聞社のカメラマンにつかまり、
「パイナップルを持って笑ってください」
などと言われ、そのやらせな感じに、しかし対応。だが、どこの新聞社のカメラマンだったか、忘れてしまった。
左上が、キウイ。確かに小振りで不揃いだ。しかし味見をさせてもらえば、やさしく甘く、酸味はほどよくなかなかに美味。というかニュージーランド産とさほど差異がない。
他の果実に比べればかなり高めの1キロ200ルピー(400円弱)。しかし、かなり高いといっても安い。
右上はカルダモン。このどっしりとした感じがたまらない。
先日夫がコーヒープランテーションへ出張へ赴いたおり、大量カルダモン&ブラックペッパーを買って来てくれていたので、当面は不要ではあるが、つい欲しくなる重量感!
遠近感が出過ぎていて、いかにも大振りの果実に見えるが、これは小さなインドで言うレモン。ライムのような形状だ。こちらも毎日摂取していることから、迷いなく購入。
ちなみにレモンは、毎朝の野菜&フルーツジュースに入れるほか、食べ過ぎた日などは寝る前に、お白湯に絞って飲んでいる。
パイナップルやリンゴには酵素が含まれているため、他の野菜や果物と混ぜると、それらのヴィタミンCを破壊してしまう。それを防ぐためにも、酵素の働きをとめるレモンが役立つのだ。
野菜類も売られていた。種類こそ少ないが、新鮮である。聞けばこれらは、バンガロール郊外の農村で栽培されたものらしい。彼らはインド北東部にも同様の農場を持っているとのこと。
トマトやキュウリ、ナスなどを購入。トマトは1キロ9ルピーと極めて安価。現在、雨が多くてトマトが不作につき、1キロ30ルピーあたりと通常の2倍ほど値上がりしているが、その3分の1である。
ちなみに1キロ9ルピーといえば18円弱。
もっともこれは、貧富の差著しいインドにおいて、先進国基準での経済力があるからこそ、うれしいと言っていられること。
たとえばメイドやドライヴァー、更なる低所得者層の人々にとっては、わたしたちにとって「安い」と思われるもの高騰が、生活に大きな影響を与える。
そういうピラミッド型をした社会構造の上に我々の食生活も成り立っており、従っては無闇に「安い!」「うれしい!」とも言い切れないのも事実だ。
その一方で、人間が生きていく上で必要とされる野菜や果実、穀物などの食材、特に自然に近い生鮮食品が高価な先進国の矛盾を思う。
経済が豊かになって、しかし、農作物が高級で、たやすく口に入らないというのは、本当におかしなものだと、今回も日本帰国時に思った。なぜ新鮮な野菜より、加工食品の方が安いのか。
などと、このようなことについてもまた、書き始めると尽きないので、また時を改めよう。
ヴィタミンCたっぷりの果実、アムラの加工品もある。アムラは、あまりにも酸っぱすぎてそのまま摂取するのが困難であることから、乾燥させたものをパウダーにしたもの、ドライフルーツにしてシュガーコーティングしたもの、あるいはジュースにしたものが売られている。
左上は、我が家が日常的に利用しているNAMDHARI'Sのブース。インド北東部以外の、ローカルの店もいくつか出ており、これはその一つ。
一番上の写真、ターバンを巻いているお兄さんの写真もNAMDHARI'Sだ。創設した人々はシク教徒。日本人がインド人をイメージする際の典型的な姿であろう「ターバン頭」の人たちだ。
ちなみにシク教徒。インドでは数パーセントに満たない。
彼曰く、NAMDHARI'Sの野菜は完全にオーガニックではないが、しかし清潔で安全な環境のもと、栽培されているとのこと。
「NAMDHARI'Sの野菜は、どの野菜よりも、いいんです!」
と、笑顔で断言する。インド移住以来、農場見学に行きたいと思いつつ、機を逸して来た。近々、取材に訪れようかと思う。
かくなる次第で、非常に楽しい買い物であった。店の人たちと言葉を交わしつつ、少しずつながらも情報を得て、さらには健康的な野菜や果物も入手できた。
熟れていたパイナップルは、縦に6等分したあと、薄めにスライスし、密封容器に入れて冷蔵庫へ。夕刻、疲労困憊で帰宅した夫、キッチンのパイナップルの香りに鋭く反応。
冷蔵庫から早速取り出して食べるに、「おいしい!」と大喜び。
非常に疲れ気味で、愚痴っぽい態度だったのが、一口、二口とパイナップルを食べるうち、たちまちご機嫌。
「喉に鋭い感じがしない。おいしいね〜!」ともぐもぐ食していた。恐るべしパイナップルの威力。というか、夫の立ち直りの早さ。というか、単純さ。
【以下、本日の雑感】
昨今のインド。スーパーマーケットが急増し、加工食品やインスタント食品の販売スペースが拡張されるなど、食生活が「現代的に」変化する一方で、オーガニック食品や、従来の穀物(雑穀)や豆類への見直しが図られているところが、非常にユニークだ。
たとえば、中流層以上。特に核家族で料理もままならない若い世代は、レトルト食品などインスタント食品や加工食品を積極的に取り入れはじめている家庭もあるだろう。
一方、料理人などを抱える富裕層、特に数世代が同居するジョイントファミリーにおいては、従来からの食生活(家庭料理)が存続され続ける傾向にあると思われる。
富裕層に限らず、農作物や健康についての知識が豊かなアカデミック層、昔ながらのライフスタイルを尊重する人々、また料理に関心の深い人々、欧米帰国組(元NRI)など、欧米のオーガニック志向の影響を受けている人々もまた、現在の「合理的な食生活」に対して懸念を抱いている人は多い。
従っては、彼らが「物珍しさ」や「利便性」のみから、インスタント食品などに飛びつくとは考えにくい。
いや、貧富の差、階級差を問わず、たとえばアーユルヴェーダに基づいたライフスタイルが身に付いている人々も同様であろう。
たとえば、我が家のメイドはシリアルなどは高価で入手できない一方、数種類の豆類を購入し、それらを「挽いて」もらって、朝食としている。
友人宅のメイド。あるときレトルトのカレーを渡して「今日は夜遅くなるから、これを食べてて」と言ったところ、「それを食べるくらいなら、何も食べない方がいい」と拒否されたとのこと。
本能的な忌避感が働いているのだろうか。
幾度となく記したが、そもそもインドの食生活とは、「原料に近いもの」「調理したてのもの」を食べるのが基本。自然に近いスパイスやハーブ以外の調味料などを、殆ど使わない調理法が主流であった。
流行っているのは、せいぜいケチャップくらいのものだ。
それをして、日本からの視察旅行者が「立ち後れている」というスタンスから「調味料が少ないね」と指摘したが、わたしはむしろ、出来合いの調味料に頼りすぎないことこそが、素材の旨味を生かす、豊かで健康的な食生活だと認識している。
添加物があれこれと入った調味料などを使わずとも、自然の恵みを健康的に食べる方法が、特にこの国には根付いているからだ。しかし、そうはいっても、海外諸国から調味料あれこれが怒濤のように流入しているのも事実。
インドにおいては、その階級によらず、作ったものはその日のうちに食べるが常識とされている。残り物の冷蔵したり、ましてや冷凍して数日後に食べる、ということは、基本的には忌避されて来た。
街をゆけば、たとえそこがスラムであれ、残りごはんなどを路傍に処分している様子が見られる。それを牛や野良犬が食している光景は、日常茶飯だ。
なにかと温かい食べ物が尊重されるのはまた、その食習慣が理由である。サンドイッチは「ホットサンド」が多く、クラブハウスサンドイッチが人気である。
街角のカフェでは、スコーンやマフィン、パウンドケーキなどですら、加熱して出される。
また、どんな短時間のフライトであっても、温められた機内食が陶器の皿にて出されるのも、その食生活に沿っているからである。
……などということを、書き連ねているときりがない。ちょうど一年前の今頃、西日本新聞の「激変するインド」にインドの食文化について数回に分けて記した。
その一部をここに転載する。下の写真をクリックすれば、大きな画像が出て来るので、興味のある方はお読みいただければと思う。
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