1996年5月。初めてマンハッタンに降り立ったとき、土産物店で自由の女神像を買った。その日からずっと、窓辺に置いてきた。
2005年11月。バンガロールに暮らし始めた。小さなアンティークショップで、銅製の自由の女神像を買った。以来、二つの像は、並んで書斎の一隅に立つ。
インドに移住してからも、毎年5月、ニューヨークを訪れていた。2003年に取得していたグリーンカード(永住権)を維持する目的が大きかった。いつか、また米国に帰るかもしれない。
わたしよりも、米国拠点の企業に在籍していた夫の方が、その思いが強かった。
しかしパンデミックが理由で、2019年5月以来、米国の土を踏んでいない。これまで二重課税にも対応し、維持し続けてきた永住権を、夫は放棄した。米国での収入がないわたしは、一応、保持している。しかし、来年には期限が切れる。更新は困難だろう。
ニューヨークが遠くなった。
しかし昨年、ニューヨーク州の運転免許証は、オンラインで更新手続きをしていた。半ば諦めていたのだが、先日、夫婦揃って新しい免許証を受け取った。
写真は10年前のまま。有効期限は10年後。
まだ、ニューヨークとは、繋がっている。それは心のなかで揺れる、一縷の灯火。
歳月の巡りに心と精神が追いつかない。永住権を取得したときの、約20年前の記録を引っ張り出す。『片隅の風景』と称した記録を、日々残していた。
InstagramもFacebookもTwitterもなかった。ブログさえもまだ、普及していなかった。そんな中、Instagram的なコンセプトで、日々、写真と言葉を、記していたのだ。
グリーンカードを取得したのは、2003年6月12日だったらしい。あの感無量が蘇る。
ニューヨークに、行きたい。
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