40年前。
年若い両親は、貧しい貯えの中から、
小さな、しかし精一杯の雛人形を、
初節句を迎えるわたしのために、買った。
それから3年後、妹が生まれた時には、
お内裏様とお雛様だけの、
しかし大きくて上品な、雛人形を買った。
子供心に、ガラスケース入りの小さな雛人形を、
地味なものだと思っていた。
一方、妹の雛人形は、今思えば大人っぽい趣味で、
子供の好奇心をそそるものではなかった。
だから幼稚園の友達の家の、
赤い毛氈が敷き詰められた
「豪華七段飾り」な雛人形を見て、
うらやましかった。
けれど、こうして小さかったからこそ、
緩衝剤に包まれて、
小さな段ボール箱に詰められて、
東京、
ニューヨーク、
ワシントンDC、
そしてインドまでも、
連れて来ることができた。
あちこちに、傷みがあるのもまた、歳月。
今となっては愛おしき、小さな人形ら。