When I was 20's, I was living and working in the big city Tokyo.
The area "Omotesando" was my most favorite place.
Lot's of memories...
1996年3月。ニューヨークでの語学留学への出発を約1カ月後に控えた、肌寒い、しかし晴れた日のこと。
1年間の不在に備え、フリーランスだったわたしは、当時、まさに「馬車馬のように」働いて、資金をためていた。普段から歩くのが早いわたしだが、そのときは、取材先から取材先へと移動するために、さらに高速で、歩いていた。
ちょうどこの緩やかな坂道の、このあたりを歩いているとき、中年の、地味な雰囲気の男性に声をかけられた。いつもなら、なにかのセールスだろうと気に留めないところだったが、そのときは、ぴたりと足をとめた。
いや、彼の言葉に、足をとめた。
すれ違いざま、彼はわたしに言ったのだ。あなたは、珍しい「ガンソウ」をしています、と。
ガンソウ? どういう意味ですか? と振り返って問うた。「顔相」と書くらしい。
「わたしは、今、姓名判断や占いの勉強をしています。あなたは、とても珍しい顔相をしているので、ちょっとお話をさせてください」と、彼はそのようなことを言った。
「いい顔相」とは言わず「珍しい顔相」と表現するところに、少し誠実さを感じた。
「あなたは額から、光を発しています」
「あなたにとって、今年は大きな転機となる年です。強く縁のある人と出会います」
「それは、恋人とか、結婚相手とかいうことですか?」
「それはわかりません。善し悪しはともかく、強い縁のある人です」
それから数カ月後、彼のことば通り、わたしはニューヨークで、インド人男性と出会った。
確かに、強い縁である。非常に濃厚な縁である。
あれから、この坂を歩く機会があるたびに、あのときのことを思い出す。
運命とは、奇妙なものだと思う。