1996年。マンハッタンに初めて降り立ち、この街にすみ始めたころ。
この街のさまざまな表情を捉えることが、楽しかった。
あのころ、感動したことの一つは、この工事現場の様子。
マンハッタンの工事現場の防壁には、必ず「覗き窓」がついている。
そこから、どのような工事が行われているのか、見ることができるのだ。
工事現場、作業現場を眺めるのが好きなわたしは、
この「覗き窓」の存在がすばらしいものに思えたものだ。
どういう経緯でこの覗き窓が設けられているのかは、わからない。
市民は、工事の実態を知る権利がある、故の
規定されたルールなのか。
単なる「見てみたい?」「じゃ、見せるよ」
というところから、始まった気軽な慣習なのか。
マンハッタンが一枚の巨大な岩盤の上に広がる街なのだということが、
この地面の様子を見るだけでもよくわかる。
セントラルパークでは、この岩盤の露出が随所に見られ、
天気のいい日など、岩の上に寝転ぶと、
まさに「岩盤浴」状態で、とても気持ちがいいものだ。
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〈以下、Wikipediaから一部引用〉
マンハッタン島は1枚の岩盤から構成されており、島の大部分を構成している基盤岩はマンハッタン片岩 (Manhattan Schist) と呼ばれる雲母の結晶片岩である。この岩は強度が高く、その構成成分の変成岩はパンゲア大陸が形成された過程で作られた。この岩盤上は高層ビルの建設に適しており、ダウンタウンとミッドタウンの表面はこの岩石に富んでいるためこれらのエリアには高層ビルが多く建ち並んでいる。セントラルパークにはマンハッタン片岩の露頭があり、ラット・ロックはその一例である
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ランチタイムに友と会い、
そのあと、インドでは手に入らなさそうな服を求めて買い物に出かけたのだが、
どうにも、これといったものを見つけられず、
手ぶらで、夫と待ち合わせのリンカーンセンター前に戻る。
このごろは、自分がどんな服を着たいのか、よくわからない。
インドに来た当初は、インド服が珍しく、
インド的派手な洋装を好んで着ていた。
インドのジュエリーも楽しくて、ネックレスやイアリングもじゃらじゃらと。
しかしこのごろは、シンプルな嗜好に回帰しつつあり。
加えて年齢の変化。
どんな服を着たいのか。どんな服が似合うのか。
すっかりわからなくなってきた。
サリーが似合う、と言われても、
サリーを日常から着るわけにもいかぬ。
ジーンズにTシャツが、自分のユニフォームのようで楽だけれど、
それでは、大人のエレガンス(!)に欠ける。
ヘアスタイルにせよ、服装にせよ、
50代を間近にして、
きちんと考えなければならないなあ、
とショーウインドーに映る自分の姿を見ながら思う。
一方の、昔からちっとも老けないマイハニーは揺るぎない。
昔からお気に入りはBrooks Brothers。
体型がラウンドなだけに、若いころからスタイリッシュな服装は無理で、
キャラクター的にもトラディショナルな服装がお似合いなのだ。
もう、何年も前のことだが、
旅のときの写真で、彼が常にアーガイルのセーターやベストを着ているのをして、
「いつも同じような服装ですね」「たまには違うファッションを」
などという、とてつもなく余計なお世話なメールを送って来た読者がいたけれど、
そういう風に見ている人も多いのだろうなと思う。
彼もわたしも、アーガイル、即ち格子模様のセーターが好きなのだ。
流行り廃りなく。
それに、インドでは普段冬物を着ないから、
旅のときに同じ服をひっぱり出して着るわけで、
毎回同じような服でも、仕方ないのだな。
セーターはさておき、新しいシャツを買い求めるのは、毎年のこと。
実は今年に入って、バンガロールにもBrooks Brothersがオープンした。
しかし、品数などはニューヨークの方が圧倒的に多く、
ここでの買い物は夫の楽しみでもある。
ところで、夜はミュージカルを観に行く予定があり。
夕食は早めに、5時半からのプレシアター・ディナーを。
5時半に夕食だなんて、インドではとても考えられない。
が、ブロードウェイ界隈には、観劇前の夕食を出す店がたくさんある。
夫が予約してくれていたのは、
シアターに近い場所にある、懐石風日本料理を出す店。
シンプルで、美味な料理であった。
キリンの一番搾りを飲みながら、
タコの刺身に舌鼓を打ち、
「このみそ汁は、おいしい!」といいながら、
牛肉の陶板焼きを堪能するインド人。
幸せそうで、なによりだ。
肝心のミュージカルはといえば、
わたしはあまり、好きではなかったが、
夫は楽しんでいた。
ミュージカルは、ストーリーの面白さももちろん重要だけれど、
舞台の展開、衣装の変化、俳優たちの魅力、
そういうさまざまな入り乱れてわくわくするものが好きだ。
とても子供っぽく素人的な見方だと思うが、
間近で見るから尚更のこと。
同じ舞台、同じ衣装で最初から最後まで。
しかも女優の動きが、エレガントというよりは体育会系、
歌声はすばらしかったけれど、見た目で感動できず、
ちょっと残念ではあった。