四季の起伏が浅い、デカン高原のこの街。
しかし、そのときどきの、
ささやかにして、確実な表情の異なり。
盛夏の終わりを告げるこの時節、
モンスーンの到来のころの空は麗しく。
昼間は、青く高く澄み渡り、
夕暮れは、陰影深く、雲の表情豊かに。
時に茜色、
時にクリーム色、
時に紫色の夕映えは、
そのときどきで、生き生きと、空を彩る。
雨が降りだすころはまた、
書斎の向こうの、椰子の葉が、
その向こうのインド菩提樹の葉が、
ざわざわ、ざわざわと、
大きな音を立てて揺れ始め、
インド菩提樹に絡み付く、ブーゲンビリアの花が、
その鮮やかに紅紫の花が、
はらはら、はらはら、と、舞い降ってくる。
たちまち、空はかき曇り、
遠く近くで雷鳴轟き、
ひゅ〜っと冷たい風が吹き抜け、
さればたちまち、ザ〜ッと、強い雨、強い雨……。
豪雨は街を洗う。
ザブザブと、洗う。
道路は随所で冠水し、
立ち往生の人々、雨宿りの人々……。
雨に濡れた緑や土の匂いを嗅ぎながら、
五感を覚醒させながら、
あたりが暗くなるまで、
天然の劇場を、眺む。