モルディヴ共和国は、ムスリムの国。
遠い昔、毎月一度、
処女を人身御供として捧げなければ、
海の神が荒れ狂うとされていた。
一晩を寺院で過ごした娘は、姦淫され、
翌朝には殺されるのだった。
あるとき、イスラム宣教師が、ここを訪れた。
滞在先の家庭は、悲しみに沈んでいた。
聞けば、明日、娘が神に捧げられるという。
宣教師は娘の代わりに、寺院へ赴き、
コーランを唱え続けた。
海が荒れ狂うことは、なかった。
以来この国では、
イスラム教が信仰されるようになったという。
* * *
バンガロール空港の免税店で、
ワインを買おうとして、
ふと思い当たり店の人に聞いた。
やはりモルディヴは、酒類持ち込み禁止だった。
入国カードの裏にはしっかり、
持ち込み禁止物のリストがある。