図らずも、王様といい感じでカラー・コーディネーションの今宵。
★ ★ ★
バンガロールからニューヨーク。飛行時間に乗り継ぎその他を加えると、片道に20時間ほどもかかる。2週間弱、といえば長い気がするが、よくよく数えてみるに、実質10日ほど。しかも10日目の夜には空港へ飛ぶから、ゆっくりとした気持ちでは過ごせない。実に、あっというまだ。
今日はコロンバスサークルから地下鉄でミッドタウンまで赴いた。なにしろ連日歩き過ぎで、足がすっかり疲れたので、今日のところは張り切りすぎず、地下鉄利用である。
構内を歩いていて驚いた。一隅がこぎれいな「地下街」と化していたからだ。
いくつもの飲食店やブティックなどが立ち並び、かつての薄暗くて汚れた雰囲気から、ガラリと一転している。これはすばらしい。
むしろなぜ、今までこのような改善がなされなかったのだろうと思うくらいに、いい感じだ。
ホームのダークな雰囲気は相変わらずだが、こうしてミュージシャンが演奏をする姿とはよく似合い、これはニューヨークらしいとも言えるのだが。
ランチをすませたあと、ミーティングに出かける夫と別行動で、わたしはミッドタウン界隈を街歩き。今日は「必要な買い物」をすべく、日本食料品店のサンライズマートへ。
インドでも日本料理を日常的に作っているが、素材の大半はインドものを使用する。必要最低限のものだけを、年に一度のニューヨーク、そして日本で調達している。
ニューヨークでは、米国在住時から購入し続けているカリフォルニア産のコシヒカリ、田牧米ゴールドを、大量に。その他、良質の生醤油やごま油を購入する。今回は、昨年の秋にも夫が渡米した際に、いろいろと買って来てくれていたので、在庫がまだあることから、控えめに調達だ。
ちなみに日本では、食ブログをお読みの方はご存知の通り「茅乃舎」の製品を主に購入している。だし、野菜だし、みそ、醤油である。
ニューヨークで調達する日本食以外での必要な調味料は、すでに買い物をすませた。
MODENA産の良質なバルサミコ酢や、Nielsen Masseyのヴァニラ・エッセンスなどは、SUR LA TABLEやWILLIAMS SONOMAなどのお気に入りのキッチン用品店で購入する。これらの店は、買い物をせずとも、商品を眺めて歩くだけで楽しい。
ミッドタウンを歩いていたら、出張CPAの車を発見。こんな車、かつては見なかった気がするが……。おもしろい。
五番街に、無印がオープンしていた。そういえば、近々バンガロールのショッピングモール内にもオープンするようだ。
一旦、ホテルに戻り、買ったばかりの服に着替えて、ミュージカル「THE KING AND I (王様と私)」を観るべく、リンカーンセンターへ。
夫は、秋に一人で訪れた際にすでに観ていたのだが、わたしが関心を見せたこともあり、チケットを買っておいてくれたのだった。
昨年の一時期、渡辺謙が主演だったこともあり、日本でも話題になったかと思う。彼がパフォーマンスをするときに観てみたかったが、あいにく去年もタイミングが合わなかった。
タイムズスクエア周辺のブロードウェイ界隈に点在するシアターに比して、このリンカーンセンターのシアターは空間が広々としており、空気が澄んでいる感じがして、個人的には非常に居心地がいい。
オーケストラの様子をちらりと見下ろせるのがまた、臨場感が出ていいものだ。
座席のレイアウトも、「前の人の頭」が気にならないすり鉢状になっていて、舞台を観易いのも魅力だ。なにしろ劇場によっては、前にジャンボな人が座ると、舞台が半分ほどしか見えない悲劇に見舞われることもあるからだ。
音楽も舞台も、歌声(特に今回は女優の歌声がよかった)も、心ときめかせてくれるものだった。
コミカルな台詞の、いかにコミカルか、が聞き取れぬ箇所もあり、100%楽しめたとはいいきれないが、それはこのミュージカルに限ったことではない。
ところで劇中、サイアム(現在のタイ)の王様であるところの主人公が、声を高らかに、(外からの干渉を防ぐために)「サイアムを壁で取り囲む!」と叫ぶシーンがある。
本来は、そこは笑うところなのであろうが、多分、今の米国人は笑えないだろうな、と、思った。
なにしろ大統領候補のトランプは、就任した暁には、メキシコと米国の国境に壁を作る、と宣言しているのだから。言っていることが同じ、なのである。
さて、残り少なくなったニューヨーク滞在。今年は本当に、のんびりと過ごしている。こんな年もあっていいだろう。
夜、即ちインド時間の午前中、メイドのマニに電話。彼女には、我々の不在時、普段は行き届かない場所の掃除などをお願いしているのだが、その確認などはさておき、まずは猫らの安否、である。
わたしは軽く「彼らはちゃんと食べてる?」と聞くにとどめているのだが、アルヴィンドがもう、コンピュータの画面に入り込まんばかりの勢いで(Skypeで話をしているため)、ノラは元気か、ロッキーの具合はどうか、ジャックがノラのご飯を横取りしてはいないかなど、詳細を尋ねる。
すると、書斎で寝ていたはずのノラが階下におりて来て、マニの傍らにやってきたらしく、ミャオミャオと言い始めた。
「ノラ〜! ノラ〜!」と画面に向かって叫ぶ夫婦。
マニは気を利かせてスピーカー設定にしてくれたらしく、ノラには我々の声が聞こえるようす。ミャオミャオと返事をしているのがまたいじらしく、会話にすらならないコミュニケーションを図る人間と猫。
飼い主バカ丸出しにもほどがあるというものだ。
それにしても、ロッキーやジャックにはない、ノラには賢さがあると改めて思いつつ。ノラが人間だったら、家のことを丸ごと任せられるのに、と思わずにはいられない。あと数日で会えると思うと楽しみだ。
やれやれ。