●椰子の木々揺れる田園地帯を走り、マイソール目指す。
土曜から月曜にかけての2泊3日、母と二人で古都、マイソールへ旅をすることにした。マイソールは2003年のクリスマスに、インド家族とともに一度訪れたことがある。その際に泊まったグリーンホテルという小さな宿を、わたしは気に入っていたので、そこに予約を入れておいた。
マイソールのバックグラウンドや観光地に関する描写は、すでに前回、レポートしているので、ここでは重複する内容を記さない。できることなら、2003年12月24日から25日にかけての記録の写真と文章に目を通していただきたい。この3年の間に明らかに変わった道路事情について、後に記すつもりなので、そのあたりに注意を払って見ていただければと思う。
土曜の朝。夕べは雨が降っていたものの、朝には青空が広がり、爽やかなドライヴ日和だ。マイソール観光は日帰りで出かける人も多い中、2泊3日の予定だから出発ものんびり。10時過ぎに家を出る。
先日、ペリカン村へのドライヴの際に通ったので、すでに変化には気づいていたが、バンガロア(バンガロール)とマイソールを結ぶ道路は格段によくなっている。
かつては主に一車線の、ハイウェイとは到底呼べない道路で、トラクターなどが逆走して来たりしており甚だ危なっかしかったが、今は道路も2車線になり、車は滑らかに走って行く。それでも、村々に出くわすと渋滞となり、車は遅々として進まず。ともあれ焦らず、のんびりと行く。
ランチは、前回の旅の際に立ち寄ったTiffany(!) という名のドライヴインでドサを食べるつもりだった。が、あいにく、本日休業。何より驚いたのは、その店の周辺風景が変わっていたこと。
以前訪れたときには、椰子の実やスイカを売る露店がぽつぽつと立つ、田園地帯のただ中にぽつんと立っていて、のどかな雰囲気だったのに、今では道路が大幅に拡張されているばかりか、界隈に商店がたくさんできていて、一つの集落になっている。
最初はドライヴァーのクマールに「ここじゃない! この店じゃない!」と文句を言っていたのだが、よくよく見てのち、その店だと気づいた次第。昔、絵本で読んだ「ちいさいおうち」を思い出す。
あのときのおいしいドサが食べられないとわかってがっかり。仕方なく、次に現れたドライヴインでランチ。フィンガーフライ(フライドポテト)と、タマネギの揚げ物、それからチャーハンという、極めて不健康な料理を注文する。
味は案の定、いまいちだったが、最後のミルクたっぷりな甘いチャイがおいしいわ〜と思っていたら、天井の梁に走るネズミを発見。
ま、田園地帯だし、インドだし、ネズミの一匹や二匹や三匹、大したことはないと思うが、気分はよくない。早々に店を出る。
●ティプー・スルタンの夏宮 Daria Daulat Baghへ
さて、マイソールの町に入る前に、郊外にあるティプー・スルタン・パレスに立ち寄ることにする。ここは前回訪れた場所につき、詳細は割愛。
パレスの外壁を彩る絵画、館内の所蔵品などを一通り見学したあと、少々庭を歩く。
空気が乾いているので不快感はないものの、日差しが鋭く容赦なく、日陰でもない限り、長い間歩き続けるのは不可能だ。大木の傍らに立ち、手に触れて、大木の育んだ歳月の重なりを手のひらで受け止める。
中学生だろうか、学校の先生に率いられ、少女たちが列をなして歩いて行く。その彼女らの色とりどりの衣類が、緑の中に花のように浮かび上がり、美しい。この国は本当に、色が豊かだ。
●鳥たちの住むところへ ドライヴァーのクマールの勧めで、マイソールの手前にあるバードサンクチュアリへ立ち寄ることにした。きれいに整備された駐車場。傍らにはカフェやガーデンがあり、なかなかにいい雰囲気だ。
緑の中を歩いていると、制服サリーに身を包んだ女学生たちがにこやかに、こちらを見て手を振る。上の大きな写真が彼女たちだ。教員養成の学校に通っているとのこと。「あなたはなに人?」「どこから来たの?」と、質問する。
一言返すたびに、みな、キャラキャラと笑う。笑うような回答じゃないだろうとも思うが、なにかしらおかしいらしい。箸が転げてもおかしいガールズなお年頃だからやむを得まい。
園内には大きな湖があり、対岸の河畔や浮島の茂みに、無数の鳥たちがとまっているのが見える。本来はボートで湖に出て、間近で見るのがいいのだが、母がボートに乗りたがらないので、遠くから平和に眺めるだけにしておいた。
主にはサギのような鳥が見えるが、ある木には、コウモリのような黒い鳥、というかコウモリが、大量にとまっているのが見える。
日向の、日射が容赦ない場所に立つと、その暑さにくらくらとやられるが、一旦、木陰に入れば、風も涼しくしのぎやすい。しばらく木立の中を歩いてのち、いよいよ、マイソールの町へ。
クリスチャンなクマールの勧めで、前回は外観だけを眺めて通り過ぎたカテドラルの、中をも訪問する。ここでもまた、愛らしい女学生らに「どこから来たの?」と、声をかけられる。
マイソールの町は、ここもまた喧噪の渦で、町の中央にあるパレスの存在を除いては、とりたてて格別の情趣を得難い場所ではある。車は町を横切り、少し外れた場所にある我々の滞在先、グリーンホテルを目指す。