« 旅人 | メイン | 故郷喪失。 »
夏の午後。 まどろみの中で、波の音を聞いた。 海からは遠い、この高原の街で。
天井のファンがゆっくりと回っている。 少し汗ばんだ額に、風が届く。 刺すような白い日差し。
コスタブラヴァの、 地中海を望む小さな街の、 安宿の、 固いベッドと、つめたいタイルの床。
封じ込めていた記憶の断片。
遠い日々の果たせぬ願いが、 束になってこみ上げてくる。
グラスの水は、喉に重く、 首筋に滴り落ちて、 シャツの襟元を、つめたく濡らす。