ぐっと高度が下がるまで、光がまばらな大地を見下ろしながら。
未だ街灯の少ない夜景に、なぜか少し安心した。
大雨の夜。束の間の小降りのころに空港を出た。
道路は随所で濁流で、泳がんばかりに車は走り。
昼間は死んだように寝ている野良犬らが、
水を得た魚のように駆け回っている。
がたがたと、路面は荒れ果て。
自ずと身体が上下する。
やれやれ相変わらずなんてところだ。
しかしおかしさがこみ上げて来て、
一人でくすくすと笑っている。
こんな街に住んでいる。
好き好んで住んでいる。
5年後は、どうだろう。
10年後は、どこだろう。
春夏秋冬。異なる国に住みたいと思っていた20代のころ。
東西南北の人であり続けたいと願った。
ひどく曖昧な志で。
これといった、何があるでもなく。
未だ焦点は、定まらず。
しかし、気づかぬうちに、遠かった未来が近づいている。
叶えられることが、少しずつ増えている。
少し遠い先のことを思いながら、
もっともっと、駆け巡りたい、とだけを願う。
薄汚れた格好で、
バックパックを背負っていたあのころから、
あまり変わってはいない。