旅に出ることが少なくないわたしたちにとって、バンガロールにいる間は、身も心も胃もリラックスさせられる大切な時間。
昼食はさておき夕食は、外食よりも、家で料理をすることの方が多いのですが、しかしときには気分を変えて、新しい店を開拓したいもの。
このところ、バンガロールにおける開拓精神に欠けていたわたしたち。
今日のランチは新しい店に挑戦しようと、夫が情報誌などをめくっていて見つけたスペイン料理(タパス:小皿料理)の店を訪れることにしました。
ZARAというその店。入った瞬間、「夜のムード」です。メニューは興味深いのですが、サンデーブランチには向かない、薄暗い店内。お客さんもまばらで活気がありません。
どうやら、ライヴなども行われるようで、ここは夜、訪れるべき店のようです。(※この店は後に閉店)
他の店にしようと方向転換したところ、同系列らしき、タイ料理店BENJARONGが同じビルディングに入っていました。
インドでタイ料理と言えば、ムンバイのタージ・プレジデントというホテルにあるTHAI PAVILIONというレストランへは、しばしば訪れていましたが、バンガロールでは訪れたことはありません。
店の雰囲気もよく、メニューも比較的オーセンティック(正統)な内容だったので、試してみることにしました。
まずはシンガポールの「タイガービール」を注文します。しかし、メニューにはあるのに、在庫がないとのこと。いきなりインド的な展開です。インドのビール「キングフィッシャー」も切らしているとのことで、カールスバーグを注文します。
タイガービールやカールスバーグ、バドワイザー、ハイネケンなどは、ハイダラバード(また出ましたね!)に工場があり、国内で生産されているのです。従っては、国産ビール並みのリーズナブルな値段で楽しめます。
さて、わたしはどんなに「ありがち」と言われても、パッドタイ(米製の平たい麺で作られる焼きそばのようなもの)が好き。
インドのパッドタイは、時に「ケチャップ」などが使用される邪道な仕上がりもありますが、ともあれ最初から怯んでいてはなりません。何でも試してみるべし。
パッドタイとメインに魚、それと前菜に野菜料理にしようと、まずはウエイターにお勧めを尋ねます。
彼は魚のレモングラス風味を勧めるので、それにしようと思うのですが、わたしがパッドタイと言ったところで、彼は首を横に振ります。
「マダム。パッドタイに、レモングラス風味の魚は合いません。白いご飯にするべきです」
そ、そんな~。
「じゃあ、このエビ料理と、それからこの野菜にするよ」
と、夫が言ったところ、
「このエビのソースにも、パッドタイは合いませんね。むしろ、このフライドライスの方がいいです」
なんなのよ~。この店のパッドタイは、なにか問題でもあるんですか?!
「ちょっと、もう少し考えさせて」
ウエイターに退散してもらい、もう一度メニューを再考します。インドでは、タイ料理や中国料理でも、インド料理的な注文方法を勧められます。
どういうことかというと、「グレイビー(汁気のある料理)」と、「ドライ(汁気のない料理)」の組み合わせを重んじるのです。
例えば、タンドーリチキンと、魚のグリルと、ナンやチャパティなどだけを注文したら、速攻で指摘が入ります。
ダル(豆の煮込み)やカレー類を、必ず勧められるのです。
さっきのウエイターはどうにも「我が嗜好を貫くムード満点」だったので、通りかかった別のウエイトレスに声をかけてみたところ、彼女が注文をとってくれました。
パッドタイを否定されることはありませんでした。
インドでは、タイ料理に限らず、スパイシーな料理はよりいっそうスパイシーさが増して出されることが多いので、それがたとえ初めての店でも「チリは控えめに!」を忘れぬようリクエストします。
わたしは辛みも平気なのですが、夫が苦手なのです。
夫は辛いものを食べると、シャックリが出ます。義父ロメイシュもまた苦手で、少しでも辛いものを口にすると、額に汗をかきます。インド人でも、辛いものが苦手な人はいるのです。
ついでに「ソースは軽めに」というリクエストも忘れません。
外食は、味が濃い場合が多いので。
そういう鬱陶しい客のリクエストにも、快く応じてくれるのがインドのよさでもあります。もっとも、2回に1回は、忘れ去られているとはいえ。
ウエイターが、料理をつぎ分けてくれるのもインドならでは。ということは、以前も書いたような気がしますが改めて。
インド料理的に、インド料理以外の中国料理も、イタリアンも、なんでもかんでも、シェアすると言えばつぎ分けてくれるのです。
その親切なサーヴィスはうれしいのですが、大半のウエイターが、「均等配分が下手」という、あり得ない弱点を持っています。
パスタなどの場合、ある人は具だらけ、ある人は麺だらけ、という困った不平等も多発します。
シーザーサラダのアンチョビーが、友人には2匹、わたしには0匹だったときには、さすがに「それ1匹ちょうだいね」と奪わせてもらったものです。
さて、お料理の味は、いずれも予想以上に美味でした。
「辛みを控えて」と頼んでも少々辛かったのですが、それでもパッドタイも、葉に包まれたチキンのグリルも、そしてシーフードのガーリックソテーも、野菜炒めも、いずれも(インドにしては)、おいしいものでした。
バンガロール。暮らし始めて4年以上たちますが、そのうちの2年間はムンバイ宅にいる時間が長かったことに加え、新しい店も次々にオープンしており、知らない店はたくさんあります。
これから少しずつ、開拓していこうと思います。