今日の午前中は、OWC主催のレクチャーに参加し、バンガロールの歴史の断片を学んだ。その興味深い話のレポートは、また、後日に譲るとして……。
本日は、LOVEな日である。本命、義理、その他、チョコレートの贈答を巡る諸問題は、日本独自のものである。
欧米でも、最近の一部インドでも、ヴァレンタインズ・デーといえば、シンプルなもの。心を通わせ合うカップルが、その気持ちを形にし合う日である。
贈り物がなくとも、いつもとは異なる食事をしたり、夫が帰宅時に花束を抱えて帰ってきたり……といった感じで。
さて、我が家はといえば、今年に入ってから、めっきり「外食欲」が減っている。
更には「肉欲」いや、「肉食欲」が減っている。
3度目のアーユルヴェーダグラムにおけるヴェジタリアン食のあと、スリランカでヘルシーな食事をとり続けたせいか、その心地よさが身体に染み付いたようだ。
かといって、ふたりして減量しスリムになっているかといえば、そうではないところが謎なのだが、ともあれ、年々代謝は落ちるもの。
それにあわせて食生活も見直さねばならぬということであろう。
とはいえ、時には気分転換に、いつもとは違う食事を愉しみたい。
しかも、ヴァレンタインズ・デーとあっては。
家でごちそうを作ろうかとも思ったが、夫の提案でITC Gardeniaのレストランの一つを訪れることにした。
ここはグリル料理の店。初めて訪れる。
7時半に到着した時には、我々は一番乗り。
夕食が遅いインドの人々。特に外食は9時過ぎくらいからということで、店内はガランとしている。
ヴァレンタイズ・デーの特別コースメニューも用意されていたが、どうにもヴォリュームが多すぎる。いつものブッフェメニューを見せてもらったところ、なかなかの充実ぶりなので、こちらを試すことにした。
何がうれしいって、魚介類が豊かなこと。好みの素材を選び、調理を依頼できる。軽くグリルしたものを、好みのソースにつけて食するスタイルなので、味の調整をできるのがよい。
魚介類だけでなく、肉類や野菜の選択肢も豊富だ。
ゲストがいないこともあり、ブッフェの一部を、撮影させてもらった。前菜類も、いずれもシンプルな味付けで美味。
テーブルにサーヴされる焼きたてパンのプレゼンテーションもかわいらしい。スパークリングワインで乾杯し、気分のよいひとときだ。
自宅の食卓では、たいして華のない話題に終始しがちだが、いつもと異なる雰囲気の場所では、ちょっと違う話もしてみたくなる。
せっかくのヴァレンタインズ・デーなので、それらしい話をしてみようと、夫に尋ねた。
「わたしたちの関係を、あなたはどのように定義づけますか?」
日本語にすると、やたら堅い質問である。
"How do you define our relationship?"
英語でも、堅苦しい質問ではある。
しかし夫はこの質問に、躊躇することなく、即答したのだ。
「プロフィトロール」と。
プロフィトロール。それは熱い愛のシンボル……。
ではない。日本人には耳慣れない音かもしれぬが、これは、シュークリームとエクレアを合体させて小さくしたような菓子のことだ。
↑こちらはその参考資料。左上写真は、ワシントンD.C.在住時に作ったもの。シュー皮にカスタードクリームと生クリームをはさみ、その上にチョコレートをかけている。
右上は、ラスベガスのBoushonで出されたもの。これは、「シューアイス」のごとく、アイスクリームがサンドされ、その上にチョコレートソースがかけられている。
即ち、プロフィトロールとは、冷たいものあり、室温のクリームありと、さまざまなのだ。
米国在住時の記録『片隅の風景』を見ていたら、あれこれとおいしそうな画像が出てきた。
これは、自分でトッピングを楽しむための、手巻き寿司ならぬ手詰めプロフィトロール。ご覧の通り、一口サイズで食べやすい。
おいしそうでしょ〜。米国時代は夫の好物につき、よく作っていたのだが、シュー皮は温度調整が結構たいせつ。
インドの不安定電力のもとでは、失敗しそうな気がして、実は一度も焼いていない。今度、挑戦してみようかしら。
……と話がそれた。
夫が我々の関係をプロフィトロールに例えたのは、こうである。
「冷たくても温かくても、苦くても甘くても……おいしい」
ワンダフル! ワンダフルすぎる!
アイスクリームの「冷たさ」、チョコレートの「苦み」は、負を想起させる言葉だが、どちらもおいしい。
本来なら自分の心にしまっておくべきラヴなエピソードだろうが、ワンダフルなので思わず書く次第だ。
普段はお互いの習性があまりに異なる故、互いにストレスに思うところは少なくない。決して文字にはできない、さまざまな「軋轢」がある。
なにしろ日本人vsインド人だもの。そら、「意思疎通も速やかに、意見の一致を見て夫婦円満♥」なんてことばかりでは、ない。
まあ、これはどんな結婚にも当てはまることであろうが。
偶然に出会い、よくわからんが引かれあって付き合い、結婚し、こんなところまで来てしまった。
そもそも、生まれ育った環境の異なる、赤の他人だった二人が、15年間、一緒にいられるということだけでも、たいへんなことである。
そら、相手に対して望むところ、多々あれど、わたしとて、相手にあれこれ望まれていることもあろうし、それを改善できるかといえば、できぬ。
そんな次第で、我が身を省みることを忘れずに、これからも、なるたけ諍いなく、暮らしていきたいと思う15回目のヴァレンタインズ・デーであった。
ああ、おいしいプロフィトロールが食べたい。