インド生活も8年目を迎えた昨今。移住直前から、「お試しに」と書き続けてきたこのブログ(「今しばらくはインドにて」&「インド発、世界」)は、果たして膨大な量となった。
玉石混淆。
とはいえ、「ライターとして」それなりにわかりやすく、インドの氷山の一角を読者に伝えるべく、貢献をした部分もあると自負している。
が、そろそろ、潮時のようだ。
インターネットが普及して、情報の価値が低くなり、「無料で有効情報を」が当然の趨勢となった。
プロのライター、編集者としての矜持を保ち難い事態には、これまでも幾度となく遭遇して来た。
しかし、「インドを伝えたい」「自らの経験ををシェアしたい」との思いが優位にあったから、続けてきた。続けずにはいられなかった。
書くことそのものも楽しかったし、ストレスの発散になることもあった。このブログを通しての出会いも、数多くあった。
が、やはり、潮時のようだ。
わたし自身は、「ブログ」「ウェブログ」とは、あくまでも文章と写真を公開するのに便利な場所という意味で活用して来た。
それ以前は、ホームページ上に記録を残して来たわけで、それをブログに移行したという感覚。
しかし、世間には「ブログ」という一つの概念が存在しており、素人もプロも入り交じって、「ブロガー」などというカテゴリーに一括されてしまう。
わたしが世間から認識される時、ライターとしてではなく「ブロガー」「ブログを書いている人」として認識されているということへの違和感も、今まで看過して来たことであった。
が、今年に入って、おせちの写真をアップロードしたあと、ふと、思ったのだ。
「もう、ここは十分かな」と。
そう思った理由はまた、別にある。
このブログはTypepadという「有料サーヴィス」のブログを用いているのだが、Typepad Japanが米国との契約を切るとのことで、今年の3月までの利用となることになった。
今後は米国の仕切りのもとで継続使用するか、日本のサーヴァーに移行するか、せねばならない。
有料だから、目障りな広告のない画面だった。また、有料だから、安全性は高いだろうとも思い続けていた。しかし、確証はないということがよくわかった。
過去の記事を公開し続けるためにも、今後もこの月々数十ドルとはいえ、払い続けることになる。
念のため、自分のコンピュータに過去の記事も保存をしているが、それを改めて他のブログに再アップロードすることはないだろう。
つまりは、なんだか、面倒くさくなってきた。
少なくとも10年前のわたしは、10年後の自分が、ちゃらい文章をも、世間に公開し続けているだろうとは、予測していなかった。
もう少し、思慮深い自分であって欲しいと願っていたはずだ。少なくとも、ネット上で関わり合う不特定多数の人間の前では。
10年前と比して、感性も人間性も大して変化していないのだから、文章が劇的に成熟するわけもないのだが、それでも、人生の後半。
そろそろ軌道修正のころだ。
「あれもやりたい」「これもやりたい」と欲望を広げすぎて、すべてを中途半端にする時代は、そろそろ終わりにすべきだとも思うようになった。
本当に為すべきことを、続けて行きたいと思うことを、仕事にせよ、プライヴェートにせよ、絞り込み、丁寧に携わる生き方に、移行していきたいと思うようになった。
年が明けて、強く、そう思った。
自分の置かれた環境を最大限に生かすために、自分のできることを選び取らねばならない時機なのだと思う。
もちろん、文章はこれからも書き続ける。今まで以上に、きちんと書き続ける。
文章をやめるわけではなく、日々轟々と流れ落ちるが如く忘れ去れるような文章を、ブログという媒体に書き続けるのをやめる、ということだ。
ひとまずは、ホームページを整理して、そちらに書くことになるだろう。
ただし、ミューズ・クリエイションの活動については、ブログを用いるかホームページを用いるか、いずれにせよ、こまめに記す心づもりだ。
写真に簡単な言葉を添えた、米国在住時からの「片隅の風景」的な記録は、iPhoneからブログ経由で発信し続けるかもしれない。
その他、今年から寄稿を始めた情報誌のAvanti。このウェブ版e-avantiにも記事が転載されることになり、わたしのページが設けられた。
いずれにせよ、方向性が決まったら、都度、このブログか、ホームページで静かに告知していく所存だ。
最後に。
ここで記してきた情報を、実際に役立ててくださり、そのことを、わたしに伝えてくださった読者の方々に、感謝します。
異論、ご指摘、真摯に受け止めつつ、しかし前向きなレスポンスが、綴る衝動を高めてくれたことは、言うまでもありません。
(2013年1月9日 坂田マルハン美穂)
★追伸:地道に、しかし確実に続いている「ローカルフード探検隊」のレポートは、今後もホームページ経由で掲載します。