先日、久しぶりに夫の故郷ニューデリーを訪れた。気がつけば、2年以上のブランクがあり、自分でも相当に驚いた。旅の記録はきちんと残しておこうと思っていたものの、日々のあれこれにかまけて、このごろはすっかりこまめなジャーナルを書かなくなってしまった。
せめて滞在中の記録は備忘録としても残しておきたく、Instagramに載せた写真と言葉を、ここにまとめて転載しておく。
久しぶりとは思っていたが、まさか2年以上も来てなかったとは、夫の故郷ニューデリー。去年はムンバイにも訪れておらず、自分なりに、ときの流れのはやさ、国内旅の少なさを、もどかしく思っている昨今。ライフスタイルを見直さなければと思いつつ、空港へ。
夫のマイレージでわたしもビジネスクラスにアップグレードしてもらい、久々のジェットエアウェイズ。国内線とはいえ、なにしろ2時間半のフライト。ゆったりと快適に過ごせるのはうれしい。
フライトのお伴は、繁田女史の著書。彼女とはちょうど10年前、同じクライアントの仕事を通して出会った。本の内容がどこを取っても共感度が高く、そうだそうだと、頷きながら読み進めていた。
さて朝食は、スムージーに始まり、好みのシリアル、メインと続く。トマトソースが添えられたスパニッシュオムレツを注文したが、パンがなかなか出てこない。メニューには、焼きたてのロール、クロワッサン、デニッシュと書いてあったはずだが……。
フライトアテンダントのお姉さんに確認したところ、
「申しわけありません。パンを飛行機に積み忘れて、離陸してしまいました」
出た! インド!!
思わず笑いがこみ上げてくる。なにしろ、朝食をとろうと栞を挟んで閉じたそのページがまさに、「詰めが甘い」だったこともあり。
実家では、義父ロメイシュと義継母ウマがにこやかに出迎えてくれた。パパへはバンガロール産のナイスなシングルモルト、アムルートのフュージョンを、そしてウマには、ミューズ・クリエイションのチーム・ハンディクラフトの作品をいくつかお土産に。
長年、マルハン実家に仕えていた料理人にケサールは、昨年、病で他界した。今は新しい料理人が彼の味を引き継いでいる。家族揃って辛い物が苦手なマルハン家。チリなしのマイルドな北インド料理にほっとする。
さて、夜は親戚の家へ訪問だ。ちょっと昼寝でもするとしよう。
2001年7月。ニューヨークに住んでいたわたしは、結婚式を挙げるために、初めてインド、ニューデリーを訪れた。
夫の実家で迎えた最初の朝、使用人が新聞と一緒に紅茶とマリービスケットを持って来てくれる様子が、新鮮だった。英国統治時代のライフスタイルの断片は、今でもそのまま、息づいている。この家は、16年経った今でも、当時とほとんど、変わらない。
一昨日、突然、髪がだらしなく伸びていることに気づいた。思い返せば年明け以来、あれこれと立て込んで、2カ月以上、髪を切っていない。ショートはこまめなカットが必要だというのに。後ろの髪だけがスピーディに伸びるのが困りもの。80年代のワムみたいな髪型になってしまう。
バンガロールに戻ってから切ればいいものを、気になりはじめたら仕方ない。そういえば、デリーには日本人経営の美容室があるはずと思い当たり、ネットで検索。幸いにも実家から車で15分ほどの近場だ。昨日、予約を入れ、今朝、ヘアカットへ。襟足すっきり、絶壁カモフラージュ、とてもいい感じに仕上げたもらった。
ランチのあとから用事があるので、その前に、駆け足でハウズカース・ヴィレッジ、そしてカーンマーケットへ行くことに……。
ハウズカース・ヴィレッジを訪れるのは何度目だろう。来る度に、店の構成が大幅に変わっていて、進化しているというよりは、ひたすら変化し続けている不思議なエリア。
そんな中、早い時期からあった皮革製品のNAPPA DORIは、お気に入りのブティックでもあり。ノートブックのカヴァーと、妙にひかれて革のバングルを買う。
そしてカーンマーケットへ。結婚式を挙げるため、初めて降り立ったデリー国際空港。今の空港と比べたら「小屋」としか思えないような、小さくて古びた空港だった。義理の両親に出迎えられ、結婚式の夫の衣装を採寸するために、自宅に行くより先に、このマーケットに立ち寄ったのだった。
ここもまた、来る度に変容しているのではあるが、常に「親しみ」や「懐かしさ」を感じさせる場所でもある。それにしても! ファッション関連のブティックの、値段の高騰ぶりにはもう、呆気にとられるばかり。このところ、バンガロールでもあまり衣類の買い物をしていなかったので、尚更の驚きだ。
かつてはインドのデザイナーズなど、よく買っていたものだが……購買意欲を完全に喪失。もうインド服はサリーと、部屋着のコットン類に留めておき、年に一度のニューヨークでまとめ買いの方が、賢明な買い物のように思えてきた。
玉石混淆で物価上昇の事態は、これからも益々加速するのだろうか。ムンバイもきっと、同じなのだろうな……。
Spending time with my family and relatives.
Morning walk in the lovely park behind the house.
実家の真裏にある公園を散歩。インド菩提樹が再生の時節。落葉と芽吹きが同時に。4階建ての大きな家。その3階のフロアに、我々夫婦は滞在している。正面は大通りに面しているが、裏は緑豊かに野鳥たちもさえずり、とてもいい場所。
自分も周りもどんどん歳を重ねていく昨今。親類たちに聞きたい話もたくさんあるのだ。もっと頻繁に来なければと、つくづく思う今回のデリー。
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日増しに気温が上がっているデリー、昨日の午後。タクシーを飛ばしてディフェンスコロニーへ。かわいらしい内装のビストロ風レストランにて、繁田女史と会合。
彼女がインドでビジネスを始めた約10年前、共通のクライアントを通して出会って以来、頻度こそ少ないが、バンガロール、コルカタ、チェンナイ、ムンバイ、デリーと、折に触れて顔を合わせて来た。
仕事の内容やライフスタイルなど、一見すれば共通項がなさそうなのだが、「インドに好きで来たけれど、インドが好きで来たわけではない」などという理屈っぽくも肝要な心情に始まり、話すたびに、つうと言えばかあ、打てば響く会話の応酬に、シンパシーを感じてきた。
今回、デリー旅が決まったとき、彼女とぜひ会いたく連絡をし、遅ればせながら、日本のアマゾンより彼女の著書『デリー勤務を命ず』を取り寄せた。読めば本当に、うなずくことばかり。多忙な最中、的確にポイントをまとめて執筆、一冊に仕上げた彼女に改めて敬服した。
わたしたち以外にお客のいない、午後3時から7時まで、のびのびと、ひたすら語り合う。気がつけば、スパークリングワインと赤ワインをそれぞれ1本ずつあけていた。インドにおける自分の仕事。視点や取り組みを見直す時期にある現在のわたしにとって、今回は特に刺激となるひとときでもあった。楽しかった。
ひとまず次回は、AMRUTかKRSMAの工場見学か。これからは、有言「即」実行で行きたい。ともあれ、また近々!
— at Bonne Bouche.
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さすがデリー。まだ夏は序の口だというのに、暑い! いやはや、バンガロールの過ごしやすさのありがたさを、改めて痛感する。
さて本日のランチは、デリー在住の泰子さんと。実家からほど近い、ユネスコ世界遺産であるところのクトゥブ・ミナールに面した日本料理店。泰子さんが、眺めのよいテーブルを予約しておいてくれたのだ。窓越しに、ミナレットを眺めつつ、プレゼンテーション麗しき、美味なるお料理を。
振り返れば、インド移住直前の2005年。まだ米国に住んでいたころ、現地情報を収集すべく、当時はまだ数少なかったインド関連のブログなどを読んでいた。そのときに見つけた「じゃんく王デリーに住む」というデリー駐在の男性のブログのコメント欄を通して、インド人男性との結婚を機に、1999年からデリーに住まわれていた泰子さんとも知り合ったのだった。以来、バンガロールで、デリーで、共通の故郷、福岡で、やはり折に触れて、お会いして来た。そして今日は2年余りぶりの再会であった。滅多にお会いすることはないとはいえ、淀みなく会話は弾み、楽しいひととき。
たとえ海外生活が20年を過ぎ、身内はインド人で、インド人の友人らが多くても、日本に生まれ育ち学び働いて来たわたしは、日本語で自己表現をし、日本とは切り離すことのできないライフを送っている。祖国を離れれば尚更に、「日本人である自分」を意識せねばならない局面が多いのは、わたしに限ったことではないだろう。
「日本人としての自分が今、なすべきこと」について、軌道修正が必要だと感じていた昨今。
こうして異なる都市で、異なる空気に触れ、前向きに暮らす人たちと話をすることは、それが身内であれ、友であれ、知人であれ、大切なことだと改めて思う。たとえそれが小旅行だとしても、日常を脱し、意識的に旅へ出よう。日常にかき消されてしまいがちな、自分の本能の声に耳を傾けよう。
— at En - Fine Japanese Cuisine.