午前中は、米国から旅行中の、夫のMIT(マサチューセッツ工科大学)アラムナイ(同窓生)の友人夫妻をお招きし、共にランチタイムを過ごす。インド系米国人のお二人は、インドにおけるMITアラムナイの活動にも尽力されている。
昨今の米国事情。トランプ政権とハーバード大学の問題は、日本でも報道されている通り。トランプ政権は、多様性を求めるプログラムの廃止や学生の取り締まりを大学側に要求して対立。結果、税制上の優遇措置の取り消しや、新たな助成金の申請を認めないと通告するなど、事態は悪化している。同じボストンにあるMITとて他人事ではない趨勢。世界の随所で、困難の火種が燻っている。
午後は、先日訪問したThe Registry of Sareesで働く若者4名がご来訪。日本の絣(かすり)を実際に見たいということだったので招いた次第。せっかくの機会なので、日本の手工芸の美を体験して欲しく、絣以外の着物や羽織、帯、京友禅サリーなども引っ張り出し、トルソーも4体準備してディスプレイ。気づけば展示会状態だ。袋帯の結び方、間違っていると思うが、ご容赦を。
先月の一時帰国時に、またしても購入した中古の着物や帯。わたしは「掘り出し物発見」の才能があると、自分でも思う。螺鈿引き箔の帯や、絞りの赤い着物や、琉球絣の着物など、いずれも古いが、仕付け糸がついた新品を、見つけ出してきた。1年前に購入した辻が花の着物も、本当に麗しい。いずれも、廉価である。
着物だけでなく、久留米で開催された展示会で購入した久留米絣の洋服も飾り、詳細を説明した。久留米絣は、手織りと機械織りの両方がある。伝統的な手法は、糸を束ねて手括りで柄を作り、天然藍で染め、手織機で織る。
一方、色彩の豊富な反応染料を用い、機械で織り量産される久留米絣もある。伝統柄もあれば、モダンにアレンジされたものもあり、用途や目的に応じて選べるのが魅力だ。いずれも木綿で丈夫、着心地がよいことには変わりない。ただ、手織りの風合いには、得もいわれぬ魅力があり……と書き始めると長くなる。
4人の若者ら。テキスタイルを学んだ人もいれば、建築から転向した人もいる。空間デザインを学んでいる人もいる。異なるバックグラウンドを持つ彼らは、しかし「人間の技」に対する関心が強い点において共通している。我が家にある漆器や陶磁器、茶器、博多人形、鉄瓶に銅器、江戸切子に曲げわっぱなど、日本の伝統工芸を食い入るように見ている。
👘
今回、天然藍染の端切れを入手していたのだが、それらを眺めていたら、一人がくんくんと匂いを嗅ぎ始めた。「僕、藍(インディゴ)の匂いが好きなんです」と笑顔。みな笑いながら、しかし一斉に、端切れを手に取って、くんくんと匂いを嗅ぐ。
決していい香りとは言い難い、独特の土っぽい、少し埃っぽい匂いがする。今、調べてみたところ、これは藍染の過程で発生する「藍玉菌」というバクテリアの活動によって発生するものらしい。ちなみにこの匂いには防虫効果があるという。ゆえに古くから、店舗などでは藍染の暖簾が利用されていたのだという。面白い。
実際に、見て、触れて、匂いを嗅ぐ。体験することの尊さを、改めて思う。
👘
何度か掲載している、祖母の写真。大正時代、100年以上前の久留米絣。特に集合写真の女子らの着物の、その柄の美しいこと。実際には、どのような藍の濃淡だったのだろう。カラーで見てみたいと夢想する。
コメント