この写真は、みほさんがお料理中のNORAとROCKYです。夕方になると、いい香りの漂うキッチンに入って来ては、二匹そろって、
「なにか、ください」
という顔をして、みほさんを見つめます。たいへんな目ぢから、です。
このごろ、NORAはご近所パトロールに出なくなり、これでも随分、性格がとても穏やかになりました。みほさんはとてもうれしく思っている反面、
「猫を被っているのかもしれないから、油断はできない。猫だけに」
と、警戒心を保つ努力をしています。なにしろ、何度となく「裏をかかれて」脱出されましたからね。でも、あの「逃亡の果ての憔悴/激やせ事件」のあとは、みほさんも心を鬼にして「家庭猫」にしようと努力しています。
さて、この1週間の間にも、マルハンさんちでは、またまたいろいろなことが起こりました。なかでも大きな出来事は、ROCKYの「去勢手術」です。ドクターの勧めに従って、みほさんは7カ月になるROCKYを、病院に連れて行きました。
まずは手術の前に、一度、病院へつれていき、健康状態を見てもらい、血液検査をする必要があります。ROCKYは、車に乗ることに慣れていませんから、とても怯えています。
病院の待合室では、壁一つ隔てた向こう側に犬たちがたくさんいて、時折、吠えたりしますから、カゴの中で小さくなっています。みほさんは、そんなROCKYがとてもかわいそうに思え、本当はカゴから出さない方がよいのですが、逃げないようにしっかりと掴まえつつ、抱っこしてやります。
するとROCKYは、みほさんの肘のところに顔を埋めて、震えています。本当に、可哀想です。男子の大切なものを取り除かれるわけですから、みほさんとしては、仕方がないと思いつつも、いっそう、心が痛みます。
さて、血液検査も健康状態も良好でしたので、翌週月曜日の手術に決まりました。
ところで先週、先々週と、マルハン家は猫以外のこともたいへんでした。というのも、まるおさんが体調を崩し、まず最初の1週間は、リンパの腫れ物ができて、熱が出たりとたいへんでした。その免疫力が落ちた時に、今度はなにかウイルス性の疾患を患ったらしく、熱が出て数日会社を休みました。
今、バンガロールは、季節の変わり目、そのた諸々の理由で、まるおさんに限らず、多くの人が、お腹を壊したり、熱を出したりしているようです。
みほさんは、まるおさんの看病などをせねばなりませんし、なにしろ、お世話がたいへんなんです! 詳細は、とてもプライヴェートなことですから、わたしは明るみにはしませんけどね。
でもって、まるおさんは病院に検査に行く前に「ひょっとしたらデング熱かもしれない。念のため、デング熱に効果があるパパイヤの葉っぱのジュースを飲む」と言って、ドライヴァーのアンソニーさんに葉っぱをどこかから取って来てもらうよう、頼みました。
それからココナツウォータージュースを毎日所望し、そのほかにも、ニンジンやリンゴのジュース、ムサンビのジュースなどを、みほさんに作ってくれるよう頼みます。
ちなみにムサンビとは、スイートライム、というマイルドな味の柑橘系果物です。ムササビじゃないですよ!
みほさんはもう、朝から3食プラスαで、たいへんなことです。前置きが長くなりましたが、この写真は、パパイヤの葉っぱと遊ぶROCKYです。ROCKYは野菜や葉っぱも好きですから、興味を示しています。
こういうときのROCKYは、丸い目をキラキラと輝かせて、まだまだあどけない少年です。むさいオヤジ顔とは、全然違います。
NORAはといえば、このごろは、以前よりも、人間に触られることに慣れてきました。でも、長い時間はいけません。短い間だけです。
まるおさんは、加減がわからず、いつまでも撫でたりするので、決まってNORAにいやがられます。
ROCKYは、そのときの気分によって、じっとしていたり、逃げたがったり。
ROCKYは、どんなに身体が大きくなっても、NORA姉さんには敵いません。取っ組み合いの喧嘩をしていても、NORAが威嚇すると、たちまち怯えた目になって、後ずさりするのです。
でもこのごろは、以前よりも格闘が減って、仲良く遊ぶ時間が増えたんですよ。NORAがROCKYの毛繕いをしてやったりするのも、珍しいことではなくなりました。
さて、ROCKYが手術の日。みほさんは、朝一番に動物病院へ行き、ROCKYをドクターに託します。前夜の12時から飲食物は一切禁止でしたので、早めにおいしいチキンを食べさせておいたのでした。
ROCKYは、何かを察したのか、車の中でも、とても怯えています。車の中で猫を放すのは危険なことなのですが、あまりにもカゴのなかで小さくなっているので、みほさんはまたしても見ていられず、抱っこしてやりました。
すると今度は、肘のところ、ではなく、みほさんの脇の下のところにグイグイと顔を突っ込んで、隠れてしまいます。背中を丸めて、しっぽもくるんと丸めて、呼吸も早く……本当に痛々しいです。
病院についたら、手術室に直行のはずが、なぜか待合室でしばらく待たされました。看護師さんたちがなんだか混乱しているので、確認したところ、先ほど去勢手術をした「犬」も、ROCKYという名前だったそうです。
ROCKYは麻酔の注射を打たれたあと、病室の中に待機です。するとこの直後、ROCKYは、嘔吐してしまいました! 夕べ食べたチキンが、未消化のまま吐き出されたので、みほさんはびっくりです。
10時間以上も消化しないままだなんて、ストレスかしら……などと、みほさんは心配になってドクターに尋ねましたが、「ノープロブレム」といわれました。インドの「ノープロブレム」とは、プロブレムだらけなので、余計にみほさんは心配になりましたが、ドクターの言葉を信じることにしました。
手術自体は数十分で終わり、麻酔が切れるまで1時間ほどは待機せねばならないらしいのですが、みほさんは午後、太極拳のクラスがありますので、一旦、家に帰って、夕方引き取りに行くことにしました。
でも、太極拳をしながらも、ROCKYのことが気がかりです。夕べ、鶏肉を食べさせるんじゃなかった。ペットフードの方が消化がよかったかもしれない。せめて挽肉状にすればよかった。などと、いろいろ反省が脳裏を駆け巡っていました。
ともあれ、夕刻に迎えに行った時には、ROCKYはすっかり元気でした。でも、2、3日は養生をさせた方がよいので、庭には出ずに、家で過ごします。
ところで、このごろのNORAは、自分と人間を同じようなものだ、と思っている節があります。実は先日、みほさんがお手洗いで用を足していたときのことです。
NORAがドアの隙間からぐいぐいと入って来て、便器の横にあるバスルームの排水口のあたりをうろうろとしています。みほさんが、「なにしてるの、NORA」と声をかけた矢先、NORAはそこで、おしっこをし始めたんです!
連れションです!
みほさんは茫然と驚いています。いったい、なにをしでかしてくれるのでしょう。みほさんは、バスルームの排水口周辺を洗い流したりして、たいへんです。
NORAがこのような行動に出るのには、多分理由があります。NORAは庭で用を足すよりも、ペット用のおトイレを使うのが好きなのですが、ROCKYは、NORAのトイレを使うのが好きなのです。
NORAは潔癖性ですから、ROCKYが使ったトイレには決して近寄りません。ちなみに猫のトイレの砂は特殊なもので、特にケミカルっぽいのを嫌うみほさんは「自然派」のものを購入しています。餌と同様「輸入もの」ですので、インドで買うと、びっくりするほど高価です。
みほさんとしては、「庭でやって」と思うのですが、仕方ありません。でも、ROCKYが使うとNORAが使わないので、しょっちゅう砂を取り替えねばならず、たいへん不経済です。
そういえば、以前こんなことがありました。ROCKYが見つからないので、家中を探したところ、なんとROCKYは、NORAのおトイレの中で寝てたんです! みほさんは、「ROCKY、変態!!」と叫んでROCKYをトイレから引きずり出し、シャンプーをしていました。
それ以来、ROCKYは、みほさんから、たまに「変態ROCKY」と呼ばれています。
変態って、なんですか?
それでは、みなさん、ごきげんよう!