バンガロールは半月以上、毎日のように雨が降っています。バンガロールに住んで10年になるみほさんによると、こんな長雨は初めてだ、とのことです。
この季節、数日間、雨が降って冷え込むことはあるようですが、今回は格別、なのでそうです。
インド南部にサイクロンと呼ばれる台風みたいなのが、しつこくやってきていて、その影響だとのこと。
雨が降り続くと、人間も動物も、調子を悪くします。特に南インドの人たちは、寒さに弱いらしくて、病気の人が多いみたいです。
NORAは皮膚病の、ROCKYは心臓肥大のお薬を毎日飲んでいますが、それ以外は、とても元気です。でも、外を駆け回る時間が少ないので、少しストレスが溜まっているようです。
ところで日曜日、ROCKYは1歳のお誕生日を迎えました。動物病院からお祝いのメッセージが届きましたよ!
ROCKYはご存知の通りテニスコートの排水口で拾われて来たので、正確な誕生日はわかりません。拾ったときが生後2カ月程度、だったので、便宜上2カ月遡って11月15日にしたのだそうです。みほさんが。
NORAの誕生日を元旦に決めたのも、みほさんです。
排水口で育っただけあり、ROCKYは小さいころから水を触るのが好きです。こうして雨のあとの庭を駆け回り、手で水をすくって飲みます。冷たい水も、平気なようです。
その濡れた足で家に入って来るので、フロアがすぐに汚れます。みほさんが、出入り口にマットを敷いているのですが、そこを無視したりして、足跡をペタペタとつけるんです。
濡れた足のまま、NORAと全速力で追っかけっこをして、カーブするときに足が滑ってスライディング状態になり、そのまま家具に激突したりもします。
おばかですね。
と、非常にブルーなNORA。
寒いのが苦手なNORAは、暖かな家電にくっついています。テレビのケーブルボックスの下が、本当にお気に入りです。
みほさんが何度ひっぱりだしても、入っていきます。何か対策を練らねばなりません。
このごろは、書斎の蛍光灯付近もお気に入りです。みほさんが「感電するよ!」と、これまた引きずり下ろすまで、動こうとしないんです。
見た目、怖いですね!
みほさんが夕飯を作っていると、NORAは必ずキッチンにやってきます。魚の料理をしているときには、たいへんな圧力で、ミャオミャオミャオミャオをみほさんに迫り、キッチンの台に飛び乗る勢いです。
軽く茹でたイワシを、分け与えます。
ROCKYは、あっという間に食べて、去って行きます。お皿には、まだ食べ残しがあるというのに。
NORAは、それがたとえチキンだろうが豚肉だろうが、自分の口に合わない時には、決して食べません。そのかわり、おいしいものは、きちんと残さずに食べます。
この日は、ROCKYの食べ残しまで、片付けていました。
自分の好みの匂いがする食卓には、積極的に迫ります。
雨の夜。外に出られず退屈しているROCKYは、インテリアの一部と化しています。
ROCKYは表情が豊かです。相変わらず、あくびは豪快ですね。
?
まるおさんと遊ぶROCKY。楽しそうですよ! まるおさんが。
寝る前、NORAが寒そうだからと、まるおさんが「ブランケット」をかけてやってます。
このごろは、毎晩、かけてやってます。まるおさんは、たいへんな猫煩悩です。
ROCKYはといえば……。やっぱり細長いポジションを作りたいみたいです。でも、このごろはデブロなので、あまり細くないです。
寝ぼけている時、みほさんに抱っこされると、贅肉界隈にもぐります。
ROCKYや、ご近所野良猫のMOCHA、そして多分、NORAのお母さんでもあるJULIEが、数カ月に一度、妊娠していることは以前にも触れました。
実は、マルハン家の隣にあるアパートメントコンプレックスに、CUPAと呼ばれる動物保護団体に勤めるお姉さんが住んでいます。みほさんは、これまで2回ほど、CUPAを訪れたことがあり、そのお姉さんとは知り合いです。アルヴィンドも、捨て猫のことでCUPAに電話をしたことがあり、たまたまそのお姉さんと知り合いになっていました。
JULIEの避妊手術について相談したところ、いったん出産を終えて数週間経ってから、捕獲して病院に連れて行くことになっていました。
ところが、2カ月ほど前、出産前に姿を消し、その後、出産した後に、一度だけ、一人で姿を見せたのですが、そのときは捕獲できる状況ではありませんでした。
それからはずっと、姿を見かけなかったので、どこか遠くで子どもを産んで、いなくなったのだろうと思っていました。
ところが10日ほど前、またご近所に戻ってきました。その姿を見て、みほさんは驚きました。また、妊娠しているんです! 猫は3カ月に1回、出産できるというのですが、それにしても、間断なさすぎます。
子宮稼働率100%。
と、みほさんは言っていますが、本当に、お腹を休める暇もありません。
ご近所さんは、彼女の4匹の子猫(最新版)を見かけた、というのですが、みほさんも、そしてまるおさんも、一度も見かけたことがなかったので、どこか遠くで育てているのだろうと思っていました。
まるおさんは、JULIEが前回出産した「ジンジャー」と「インヤン」、そして前々前々回に出産したMOCHAの3匹に、毎日餌をやっています。ちなみにROCKYは、前々前回の出産だと思われます。ジンジャーとインヤンも、近いうち、避妊手術を受けさせねばなりません。
JULIEが生んだ子どもは、お察しの通り、生き延びている方が少ないです。どこかにもらわれていった可能性もありますが、定かではありません。
さて、前置きが長くなりました。
それはディワリの日の夕方のことでした。
みほさんが、気分転換にアパートメントコンプレックスの通りを散歩していたところ、たいへん大きな声で、ミャオ、ミャオ、と鳴く子猫の声に気づきました。
屋外の駐車場の一隅から聞こえる声のもとに近づくと、そこには、数十分前に「ジンジャー」たちのためにまるおさんが置いておいた餌を食べる、子猫の姿がありました。
ものすごくお腹がすいているのでしょう。ミャオミャオ、ガフガフ、ミャオミャオ、ガフガフと言いながら、すさまじい勢いで、子猫はごはんをたべているんです。
みほさんは、呆気にとられて見ていました。そのうち、JULIEが近くを通りかかったのですが、その子猫が「おかあさ〜ん」と言いながら近寄っていくのに、JULIEは威嚇しています。
子猫はお母さんに近づきたそうなのだけれど、とにかく「シャーッ」と威嚇されて、とてもかわいそうです。
事情はわかりませんが、その日は駐車場で、ディワリの花火会が開催されますから、みほさんは子猫のことが心配になりました。そのことをまるおさんに話した結果、CUPAのお姉さんに相談することにしました。
幸い、お姉さんはご自宅にいたので、数日間、保護すると言って連れて帰りました。
CUPAのお姉さんは、その後、デリーへ出張へ行かねばならず、家族は誰も面倒を見られないので、一旦、預かって欲しいと言われたのです。
CUPAのお姉さんは、保護して数日世話をしたら、また近所に放す予定でした。インドは日本と違って、野良猫、野良犬がたくさんいます。
ちなみに、CUPAのお姉さんの場合は、狂犬病などのワクチン接種や、避妊手術などは、お姉さんがCUPAを通して、受けさせているようです。
預かって欲しい、しかも脚の付け根に大きな腫れ物ができているので、病院に連れて行って欲しいと言われました。最初に保護をお願いしたのはみほさんたちですから、嫌とはいえません。
それで日曜日の夜、ROCKYの誕生日の日に、その子猫は一旦、マルハン家にやってきました。
お姉さんは「ノミだらけだったのを、きれいにしたのよ」と言っていましたが、それでもその子猫からは大変な異臭がします。
みほさんは、改めてお風呂に入れました。バケツの水が激しく濁るほどに、まだまだ汚れていて、ノミも出ていました。きれいに洗って初めて、子猫の姿がよくわかりました。
みほさんが子猫の世話をしている間、NORAといったら、たいへんだったんです!
異臭に反応して、ワオ〜ン、シャーッ! ワオ〜ン、シャーッ! と誰彼構わず威嚇します。ROCKYは怯えて、隅の方で小さくなっています。
デブロ、なのに。
みほさんが、子猫を乾かして、湯たんぽを用意して、一段落したところで、階下からまるおさんの叫び声が聞こえました。
"OH! SHIT!!"
なんと、NORAが玄関フロアのど真ん中に、大きな糞をしたんです!
不満を最大限に表現しているようです。
まさに、"OH! SHIT!!"ですね!
翌朝、みほさんはその子猫を病院に連れて行ったのですが、朝もNORAは非常に不機嫌で、みほさんにもまるおさんにも、おはようの挨拶さえしません。それどころか、物置の棚の奥の方に隠れて、出て来ないんです。
みほさんが何度呼んでも、この姿勢を崩さず、みほさんを睨んでいます。ず〜っと10分以上も、この状態でしたので、みほさんはもう諦めて、NORAにおはようのハグをしないまま、雨の降る中、病院に行きました。
ドクター曰く、この子猫はヘルニアなので、すぐに手術をする必要がある、と言われました。翌々日の手術のアポイントメントを入れて、帰宅したあと、みほさんは、この子猫の写真を撮ったりしていました。
猫の母親は、子猫に先天性の病気があるなど問題があった場合、育児放棄をすることがあるそうです。1匹に手をかけていると、他の子猫が育たないから……という、弱肉強食の自然の摂理があるからかもしれません。
JULIEがこの子猫を無碍にしていたのは、このヘルニアのせいかもしれません。
すでに生後2カ月近くたつはずなのに、とても身体が小さいのも、栄養を与えてもらっていないからだと思います。
毛が長めでふわふわとしているので、まるっこく見えますが、お風呂に入って濡れたら、本当に細くて、小さいんです。
小さいながらも、元気よく動きますし、ヘルニアさえなければ、健康なようにも見えます。鳴き声もとても大きいんです。
こうして見ると、顔の上半分がROCKYに、下半分がNORAにとてもよく似ているんです。身体の模様も、2匹を合わせて2で割った感じなんですよ。
鼻の黒いマークが、NORAとそっくりなんです。
こうなると、ご縁を感じずにはいられません。
だから、まるおさんが、ジンジャーとインヤンを飼いたいと言ったときも、ダメだと反対しました。
明日の手術が終わったら、10日間は自宅で様子を見てやらなければなりませんし、途中、経過を見せに病院へ連れて行かねばなりません。
そうこうしているうちに、マルハンさんちの猫になってしまうかもしれません。
でも、みほさんは、NORAのことが気になります。まるおさんも、
「僕はNORAが優先だから。NORAが絶対に嫌がるんだったら、飼わない方がいい」といいます。
でも、みほさんは、それは乗り越えなければならないハードルだ、とも思っています。
結局のところ、餌を与えたり、撫でてやったりと、簡単な愛情表現は、まるおさんもやっていますが、病院に連れて行ったり、薬を与えたり、お風呂に入れたりという世話は、全部みほさんがやってますから、みほさんにそれをやる覚悟があるか、というところです。
この子猫。病院でオスとわかりました。
名前はまだありません。
手術のあと、100%、元気に生きられるか、それもわかりません。それでも、それもご縁かもしれません。
次回のレポートでまた、進捗状況をお知らせしますね。
では、ごきげんよう!