一面の、大きな窓から、ときおり外の世界を眺む。
人々の、犬の、車の、行き交うさま。
汚れた海の、汚れた岸の、汚れたヤシの木。
人々の語らい。犬の語らい。
見飽きることなき、詰まり詰まった光景。の変化。
やがて、アラビア海を照らす夕映え。
この国の、沈みゆくときの太陽の、橙色、桃色、朱色。
胸迫る色、ほとばしらせながら、
じりじりと海に、落ちてゆけ。
熱く、じゅうじゅうと音立てながら、落ちてゆけ。
日がな一日、ホテルで過ごした。インドに来て以来、最も静かな一日だった。朝食をすませ、書き物をして、久しぶりに少しTVを見て、雑誌をめくり、それからランチに出かけ、書き物をして、それからサロンへ。
ヘッドマッサージ、それからフットマッサージ、フェイシャルを受けに。マッサージはすんなりとした青年が、慣れた手つきで。手の力加減が絶妙で、抜群に気持ちのよいマッサージだった。近くに住んでいれば毎週でも来たいと思うくらいに。そもそもインドには、マッサージのスキルを持つ人が多いから、バンガロアでも上手な人はすぐに見つけられるだろう。
夫のために、夜7時に予約をいれておく。彼もきっと、喜ぶに違いない。打ち合わせを終え、帰って来た彼をサロンへ促す。1時間あまりの後、戻って来て一言。
「あ〜。今までの人生で、最高のマッサージだった!」
毎度おなじみの第一声。期待を裏切らない男だ。