ひどく遠いところまで、来てしまったね。
子供の頃、校区外に出かけて、はじめての町をさまよったときの心細さ。
夏のキャンプ地の、森の湿気に満ちたひんやりとした朝の、よそよそしさ。
おばあちゃんの家の、蚊取り線香の匂いと、知らない近所の子供たち。
遥か遠い場所を、好きに、自由に、転々と、訪ね歩ける大人になって、
心もとなさは封じ込められ、どんどん、どんどん、強くなる。
たくましく勇敢に、歩いてゆくのはすてきなことだけれど、
ぐらりと揺れる心のさまもまた、やさしい。
その瞬間は、自らをとりまくすべてが、いとおしく見えるので。