インドに来てからというもの、十数年の空白を埋めるがごとく、クリケット観戦を楽しんでいるアルヴィンド。国民的スポーツを心底楽しむことに異議はないといいたいところだが、いかんせん、長過ぎる。
試合とあらば、四六時中、ソファーに座ってTVに釘付け。身体にも悪いというものだ。
数日に一度は、「今日のは、すごく大事な試合なんだ」
と、言い訳がましく前置きをして、リモートコントロールのスイッチを押す。毎度毎度、大事な試合ばかりが続いて、たいへんですこと。
今日もまた、夕食のときですらTVを切ろうとしない。妻は怒る。しかも、試合はもう終わっている様子だ。これ以上何を見るのだ。
ん? とTVに視線を移せば、そこにはパキスタンのムシャラフ大統領。お、これはパキスタンで行われている試合だったのね。確かに大事な試合だったのかも。
ムシャラフは、勝利したインドチームを笑顔で讃えている。いいムードである。見入るわたしに夫は、まるで鬼の首でもとったかのように、
「ね。だから大事な試合だって言ったでしょ? 印パの友好のためにも、クリケットっていうスポーツは大切なんだよ!」
それはそうと、ついこの間も、インドチームはパキスタンに行って試合をしなかったっけ? そのことをメールマガジンにも書いた気がする。と、記録を遡ってみれば、2年近くも前の話。すでに古い話だったのね。
ちなみにこれは、試合の翌朝、14日の新聞。顔にインド国旗をペイントして叫ぶインドチーム応援団。そのそばで、耳を覆うパキスタンのポリス。ちょっと楽しい一枚だ。