瞬く間に、3月も中旬に入ろうとしている。ワシントンDCの、日本の、桜がそろそろ開き始めるころだろうか。四季の変化が緩やかなこの地だが、それでもこの初夏の時節は、新芽の息吹、植物の漲る生命力が伝わって来て、これまでの数カ月とは異なる趣だ。
さて、今日はその「緑の息吹」を存分に味わおうと、わたしのお気に入りのホテルであるTaj West Endへ赴いた。まずはRain Treeというブティックに立ち寄り、いくつかの店舗を眺め、それからホテルへ。
わたしたちが渡印した当初の数週間を過ごしたこのホテル。母にもぜひ、この緑の庭園を見せたいと思っていた。Leela Palaceの庭もいいけれど、Tajの方は、自然のままの有様が残されていて、わたしは断然、こちらが好きなのだ。
緑の匂いがあふれる静かな庭園を、母もとても気に入った様子。しばらく散策した後、カフェでコーヒーを飲み、MGロード沿いのBombay Storeを見学し、帰宅した。
潤沢にある時間。「頭の体操」も兼ねて、今日もまた母に日記を記してもらった。
●3月8日 ホテルでお茶
タージウエストエンドにて、今日もお茶の一日を過ごす。広い芝生の前のテーブルにて、美味ミルクコーヒーとクッキー。隣のテーブルでは、5、6人の男性がミーティングの様子。かと思えば、これまた各国から訪れているビジネスマンらしき男性が数名、携帯電話を耳に当て、青空の下を動き回り、まるでクマのようで、見ていると笑いがこみ上げる。
バンガロールは観光するところは少なく、ビジネスマンの出張が多いらしい。
こうして、どの国のビジネスマンも一生懸命働いているのかと思うと、ありし日の主人の多忙だった日々のことを思い出し、胸が、いや心が少々切なくなる。
しかしわたしはこうして、娘と毎日のようにいろんなホテルで羽を伸ばし、別世界で生活をしている。日本に帰ると現実の生活が待っているが、それもこれも喜びにかえて人生を楽しもうと思う。
インドという国を、本当に説明したり話すとなると、あまりに混沌としていてむずかしい。でも、もしインドを訪れることのある方は、できるかぎり、騒がしい町にも汚い市場も、緑したたるホテルの庭(散歩したり)も、とにかく行って、自分の目でインドを受け止めると、この国は異文化の集合体だということがよくわかるような気がする。
善悪が入り交じり、やさしい目の人、恐い目で見つめる人、それもこれも、こちらの心の内なるものかと感じる。
それにしても、わたしは朝目覚めると、お茶が出され、飲み干す頃には朝食の準備が整い、数々のフルーツ、ミルク粥、パンがおいしそうにセッティングされ、あとは食事をするだけ。
その間、ベッドメーキング、部屋の掃除、バルコニーの清掃、とにかくすべてが風に舞うように、モハン(使用人)がしてくれる。勘違いしそうな日々だが、ここにいる限り、思い切り甘えて生活を、と思う。
インドの食事(モハンが作ってくれる)は身体にやさしく、とてもおいしい。余分な贅肉を少しでも落として日本に帰れそう。
●3月9日(朝) アーユルベーダのマッサージ
少し膝の弱い(痛み)わたしに、娘が自宅にマッサージの方(女性)を呼んでくれ、頭、手、足と全身をオイルでマッサージ。いろんなエステに連れて行ってもらったけれど、この方のが一番気持ちよかった。小さい手で各ツボに強く弱く、全身の疲労が取り除かれてゆくようで、本当に気持ちよい。
日本でも足湯とかいうけれど、わたしみたいに足の弱い人は、本当に足湯を20〜30分するといいらしい。今後実行しようと思う。
軽く朝食もすませたし、これよりシャワーにしようかな。今日もこうして、優雅な一日が始まる。