風が強くて肌寒いくらいのバンガロール。ここ数日は、このような天気らしい。
日曜日、深夜に帰宅したにも関わらず、夫はワールドカップ鑑賞で夜更かし。翌月曜の朝は出足も遅く、オフィスへ向かわず自宅仕事。午後になって、水曜からのムンバイ出張へ向けてバタバタと仕事をしていた。
一方のわたしは、のんびりと過ごす一日。荷解きをしたり、写真の整理をしたり、キッチン収納棚の「日本食材コーナー」を片付けたり。日本米で満たされた一画を見て、ささやかな、しかし確実な充足感。
そして今日、火曜の朝。久々にヨガ道場へ行く。なにしろ遠いのが難だが、やはり道場でヨガをやると、集中度が高い。日本から二人の男女が「修行」に来ていた。3カ月、道場で過ごすとのこと。
さて、帰宅後、TVのニュースでムンバイが大雨だと知る。4日続きの大雨は、向こう1週間、降り続きそうな勢いで、死者も出ている様子。去年の今頃も、ムンバイは大水害にやられていた。
夫が訪問予定の会社がある空港付近エリアの道路は水没し、とても仕事どころではない様子。早速、各所に電話を入れて、今回の出張はキャンセルとなった。
香港から戻って来たばかりで、体調も芳しくないゆえ、キャンセルになったのはよかったのかもしれない。
* * * * *
先週の香港旅のこぼれ話。帰路、シンガポール空港での待ち時間で、夫は張り切っていた。なぜなら「iPod nano」を購入すると決めていたからだ。
とはいえ、待ち時間は6時間もあり、トランジットホテルに予約を入れておいたので、まずはシャワーを浴びたり、夫は仮眠を取ったり。
わたしは、彼と別行動。航空会社のラウンジでくつろいだり、日本の新聞を読んだり、ショップをのぞき歩いたりして過ごす。
仮眠を取ってエネルギー充電したアルヴィンドは、電化製品店で待望の「iPod nano」を買いに出かけた様子。
夫は普段、あまり買い物をしないので、わたしはたいてい「欲しい物は買えば?」の姿勢である。我々は経済感覚が近いので、従っては値段、品質、テイストその他、細かに干渉するつもりはないのだが、彼は買い物の折、必ずわたしの意見を聞きたがる。
「これ、どう思う〜?」と、しつこいくらいに聞きたがる。慎重といえば慎重だが、優柔不断といえば優柔不断だ。
わたしは即決型なので、何度も聞かれると鬱陶しくなる。しまいには、「何度も同じこといわせないで!」と喧嘩になる。なので、別行動である。無論、「iPod nano」には、さほどの選択肢もないだろうから、そう困難な買い物ではあるまい。
さて、搭乗ゲートで再会し、飛行機に乗り込む。
「ミホに、プレゼントがあるんだ!」
と、彼。自分が何かを買うときは、わたしにも何かを買わなければ悪い、と、彼は思っているようである。日常生活を省みるに、金額の大小はさておき、わたしの買い物頻度の方が明らかに高いのだから、気にすることはないのだが、気にするようである。
で、免税店のビニル袋から取り出されたそれは……
クマ……。
「ねえ、かわいいでしょ? このクマ。気に入った?」
気に入った……って言われても……。
まあ、かわいいといえばかわいいけど……。
そうして自分はおもむろに、iPod nanoを取り出す。おおう! こんなに小さくて薄いのか! こりゃすごい!
ひとしきり、iPod nanoの「自慢話」をしたあと、今度は機内販売のカタログを見始める夫。これまで新しい腕時計が欲しいと言っていたのだが、気に入ったものが見つからず。
だからって機内販売で買うのはどうかと思われるが、どうも、自分の好きなデザインのものがあるらしい。結局、悩んだ挙げ句に、それも購入したのだった。非常にうれしそうである。
で、わたしには……
クマ……?
夫はわたしが、たいそうなクマ好きだと信じている。確かに好きかもしれない。赤ちゃんのときに両親に買ってもらったクマのぬいぐるみを、未だに大切に持っている。名は「みいこちゃん」という。
みいこちゃんはそもそも薄いピンクだったが、永い歳月を経て、薄いグレイと化した。洗濯されたり干されたりするうちに痛みは加速し、耳や鼻は幾度も「手術」を受けた。それでも大切に持っている。
「古びたぬいぐるみ」と言えばそれまでだが、「アンティークベア」と呼ぶと、価値が上がる気がするのは気のせいか。
当初、夫はそれをクマとは認めず「ネズミ」と呼んでいた。失敬な話である。
みいこちゃんのほかにも、いくつかの小さいクマのぬいぐるみを所持していた。故に、クマ好きと思われても仕方がないといえば仕方がない。
そんなわけで、彼はこれまでも、すでに2つのぬいぐるみをわたしにプレゼントしてくれていた。下の写真がそれである。
ニューヨーク時代、彼がサンフランシスコへ出張に行った折、空港で買って来てくれたのが、左の茶色いクマである。
「これ、自分にそっくりじゃ〜ん!」
と言ったら気分を害されたので、以降、口にはしていないが、実際、夫によく似た体型の、過剰に丸いクマである。変なのだかかわいいのだか、よくわからん。そもそも、米国のぬいぐるみやら人形やらは、日本人のテイストからは遠いものが多いからね。
ともかくは、「ポンタ」と命名しておいた。
さて、ワシントンDC時代。やはり彼がサンフランシスコへ出張に行った折、空港で土産を買って来た。
「ミホ! ポンタのガールフレンド、見つけたよ!」
うわ! ポンタと全く同じ体型だ! しかし待てよ、これ、クマじゃないでしょ。シッポもあるし、髭もある。第一、模様がクマじゃない。……ネコ? 双方は異なる種(しゅ)ゆえ、カップルにはなり得ぬのではないか。
ともあれ、安直に「ポンコ」と命名し、以降、カリフォルニアを経て、インドまで連れて来た次第である。
そして三つ目のプレゼントである今回のクマは、さらに安直に、チャンギ空港の名を取って、「チャンギ」と命名。セーターにも名前が書いてあるしね。
……しかし、もう、クマはいいぞ。
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香港最終日の記録、更新しています。下へ遡ってご覧ください。
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