バルコニーの植物や花が、生き生きとしている。いつもながら、やさしげな陽光と、青空と、木の葉をすり抜けてくる風と……実に心地のよい週末である。
アルヴィンドの微熱も下がり、しかし今日はおとなしくしておいたほうがいいだろうと、家で過ごす。TVを観るのはよくないから、むしろ寝た方がいいから、というのに、全米オープンを見続けている。
わたしは、原稿の校正をしたり、本を読んだり。
夕方、彼が一緒に映画を見ようと言う。デリーに行った折、義父ロメイシュからもらってきていたDVDを観ることにする。ロメイシュのDVDコレクションの充実ぶりは、かなりのものなのだ。
どこで仕入れてくるのか知らないが、インドには海賊版が出回っていて、簡単に手に入るのだ。などと公言すべきことではないが、知的所有権やら著作権といった問題について、まだまだこの国は甘い状況である。
さて、見た映画は、チャールズ・ディケンズ原作の『Great Expectations (大いなる遺産)』。
妻はワインを飲み、スナックを食べながら、夫はパイナップルヨーグルトアイスクリーム的、を食べながら。我は、聞き取れない会話の多さにがっくりときつつも、見終える。
主人公は画家であった。
絵を描きたくなったので、色鉛筆と紙を出してくる。アルヴィンドも誘う。わたしたちが、絵を描くなんてことは、旅の途中のノートくらいで、普段はないのだが、さておき彼は、味のある絵を描くのだ。
わたしは自分で誘っておきながら、酔いが回って描く気になれず、しかしアルヴィンドは真剣に、ワインのある景色を描き始めた。対称や遠近法や均衡を気にしない、「ヘタウマ」な感じが、彼らしくていい。
台の上には、リモートコントロールやネイルエナメルやらも載っていたのだが、それらを除けもせず、しかし描きたいものだけを描いているあたりもいい。
平和な、土曜日である。