久しぶりに、自然と戯れる午後であった。マダムが野猿と化しているのは、IIS(インド科学大学)のキャンパス内だ。
なにしろバンガロール、昨今では排ガス地獄につき、散歩するところが限られている。公共の公園などは人々があふれかえっていて、喧噪を好まぬマイハニーが行きたがらない。
本日、ヴァラダラジャン家(スジャータ&ラングヴァンち)にランチに招かれた。ラグヴァンの教授仲間とその奥方とともにランチを食べ、ラグヴァン特製のマルガリータを飲み、長々とおしゃべりをしたあと、午後のキャンパスを散歩したのだった。
特に手入れがされているわけでもない、ただ、広々とした、緑の豊かなキャンパスである。しかし、枯れ葉を踏みしめながら歩くそれだけで、心地よい。
「セントラルパークはよかったよねえ」
「ダンバートン・オークスを思い出すよねえ」
「あそこには、排気ガスを撒き散らすオートもなくて、平和だったねえ」
と、いちいち過去を回想するハニー。まったく米国時代のよかったところばかりを見事に思い出したがる男である。しかし確かに、ワシントンDCのジョージタウン在住時代、ご近所だったダンバートン・オークスは、見事な庭園だった。
確かに、懐かしいな。
いかにも「ちょいとのぼってお行きなさいな」と言わんばかりの木々が並んでいる。
二人して、樹上に横たわり、しばらくの間、木肌の温もりを感じながら過ごした。
気持ちのよい、午後であった。