午後は、新居関連のことで過ごした。世間はヴァレンタインデーではあるが、明日から出張ということもあり、加えては、やることもたくさんあるということで、特別なイヴェントはなし。
さて、内装作業の進行具合を偵察するため、午後、新居へと赴く。大工衆はのんびりと、しかし着実に作業を進めているようで、クローゼットの基礎部分が着々とできあがっている。びっくり。
「ここは幅が広過ぎるな」とか、「この部分は狭過ぎる」など、図面上では雰囲気が掴めなかった部分で、想像と異なる箇所がいくつか見られたものの、概ね問題はない。
ただ、一カ所、内装設計士の採寸ミスで、壁に取り付けるタイプの本棚のサイズが大きすぎている。作り直しだ。早速、設計士に電話を入れ、夕方、棟梁のカヒニヤラールともどもここに集合し、問題点などを相談し合うことにする。
左は台所の小さな棚。右はゲストルームのクローゼット。この状況からいかに進化して行くか、見ものである。
2階の書斎。左は本棚の下部分。引き出しや開きが設置される。右は、宙に浮く本棚。この上下のサイズが大きすぎた。大き過ぎると、電気の配線に支障が出てくるのだ。作り直しである。
マスターベッドルームのクローゼット。普段着るものを入れ、たまに着るもの(サリーなど)は隣室(書斎)のクローゼットに収納する予定。バンガロールは年中、気候の変化が緩慢で温暖だから、衣替えの必要がない。服もあんまり必要ない。だからって、夫のスペース(右側)の方が広めというのも、あんまりか。
ちなみに隣家の破壊活動は終了していて、建設作業に入っていた。どうやらドアや窓枠をすべて、取り替えるようだ。確かに、庭に続くドア、これがいまいちなんだな。うちのもついでに替えてほしいな。引き続き、偵察を続けたい。
さて、夕方までの数時間、コマーシャルストリート周辺やインファントリーロード界隈を巡る。この辺りは、「各種部品屋」が多いのだ。キッチンやバスルームのパーツを売っている店も見られる。店頭はぱっとしない店でも、中に入るとイタリアやドイツからの直輸入品を扱っている店などもあり、高級な素材も手に入る。
今日、下見をしたのは、クローゼットや引き出しなどのハンドル(取っ手)、チムニー(換気扇)、作り付けにするオーヴン、バスルームのタオル掛けやソープケース、キッチンの収納小物など。
たとえば、トイレットペーパーのスタンドやタオル掛けなど、同じステンレス製でも、インド製とイタリア製とでは、光沢や質感が違う。当然ながら、イタリア製の方が洗練されている。無論、インド製が安っぽいものばかりかと言えばそうでもなく、中にはなかなかいい感じの商品もあり、選択の幅が広い。
引き出しのハンドル類も、実にさまざまな品質。一つ1ドル程度のものから10ドルを超える物まで幅広い。
今のところどの銘柄にすべきか悩んでいるのがチムニー。フード付きの換気扇だ。このごろのインドは、この大型換気扇が主流で、イタリアもの、スペインものなどの輸入品だけでなく、国内産でもいくつかのブランドが販売している。
相場は10000ルピーから、高いところでは30000、40000ルピーなんていうものもある。たかが換気扇に10万円である。ちなみに一番出ているのは15000〜20000あたりのものと察せられる。無論、一握りの富裕層の需要としてではあるが。
輸入品はもちろん数割高にはなるが、品質がインド製より必ずしも優れているとはいえない。
いろいろとスペックを見比べる。幅は60センチと90センチがあるが、我が家は90センチを。更には、音のボリューム、吸い込む量、なんやかんや。あっちこっち、数字だらけだ。
数軒の店でカタログをもらい、店の人に話を聞き、イタリア製にするか、いや、このインド製の方が実用的か、などと悩む。
「お宅はノンヴェジタリアンですか? であれば、こちらがいいですよ」
料理の内容によって、チムニーを決める訳? 悩んでいるうちに、だんだん、どうでもよくなってくる。
だいたい、たかが換気扇じゃないか。悩んでどうする。
だいたい、マンハッタン時代は、換気扇すらなかったじゃないか。あそこじゃ、高級アパートメントですら、換気扇はついていなかったりもするのだ。ということは『街の灯』にも書いたけどね。
ニューヨーカーは料理をしないから。がその理由らしいが。アメリカって、そんな国よ。
それよりも作り付けのオーウンの方が大切だ。それに関しては、もう、アメリカが懐かし過ぎる。
大型オーヴンの需要はまだインドではあまり高くなく、従っては品数も少ない。国内産は小さなサイズしかない。米国の家庭やアパートメントに、普通に取り付けられている、あの大きなオーヴンが欲しいのだが、ない。
やや大きいもので、よさげなものを見つけたが、それらはやはりイタリア製だ。6月には米国製が入ると某店。
それにしても、インドマーケットに激流の如く押し寄せている先進諸国の製品、商品の広がりには目を見張る。いずれも5年10年前のインドにはなかったはずのものばかり。
店員との話を通しても、彼らが欧米諸国の製品を扱い始めたのがここ数年のことだということがよくわかる。
顧客からの商品に対する反応はどうなのか、と尋ねれば、オーヴンの販売実績は、まだ10台ちょっとだが、今のところなんの不満も聞かない、などと正直に教えてくれる。
かような側面から鑑みても、日本はインド市場への進出に、かなり出遅れている気がする。この件に関しては、また改めて書きたい。
そうこうしているうちにも、夕方になる。地元ショッピングセンターのサフィナプラザでチャイを飲んで一息つき、それからケララ州の物産展でサンダルウッド製品やヘナパウダー、アーユルヴェーダの薬草ヘアケアセットなどを買う。
ココナツオイル1リットルに、この薬草セットをいれて5分ほど煮込むと、質のよいヘアオイルが出来上がるのだとか。ちょっと面白そうなので買ってみた。
暗闇の中、小さな電球の灯りを頼りに、内装設計士や大工衆らと1時間ほど、あちこちを確認しながら打ち合わせる。
概ね、問題はなさそうだ。
小さな問題はあれこれあるにしても、今のところ、インドにしてはいい方だ。
しかし、「油・断・大・敵」。
細かすぎることだからいちいち書かないが、今日も数回「吠え」た。誰がって、わたしがである。新居のガードマンに吠え、新居のマネージャーに吠える。我ながら狂犬かと思う。
でもね。穏やか〜に頼んだところで、「右の耳から左の耳経由で通過」状態で、全然、記憶にすらとどめてもらえないの。
「マダム、ノープロブレム」の連発なの。
そしてそれは、プロブレムなの。
そんなわけで、自らの主張を貫くためには、適宜、「怒鳴り」や「吠え」が必要なのだ。
3月末までに無事に引っ越しをするためにも、今しばらくは、ビッチ態勢を貫く所存だ。