スリランカで滞在したGALLE FORT HOTEL。あのホテルの、デイベッドが気に入った。我が家にも欲しい……。
と思っていたところ、帰国の数日後に、アンティークショップで見つけた素敵なデザインのそれ。
テキスタイル店で、サンプルの中から布を選び、取り寄せてもらい、それを家具店に届けてもらい、布張りしてもらったデイベッドが昨夜、届いた。
物事が速やかに運ばない部分ばかりがクローズアップされるインドだが、うまくやれば、うまくいくこともあるのだ。
ティークウッド(チーク材)の本体に、いい塩梅で取り付けられたマット。その上に、丁寧に施された布張り。インド製のその布は、無数の見本の中から選んだ。
ちょっと地味かとも思ったが、しかし、他のソファーとのバランスも考え、うるさくなりすぎないものを選んだ。
布は1メートル1,000ルピー程度。このデイベッドで使用するのは5メートルだから、5,000ルピーほど。先進国に比べると、本当にお手頃価格だ。
今回の布張りは、家具代に込まれている。今後また、別の布に張り替えたいと思ったら、また布を買って同じ店に頼めばよい。
これもまた、手頃な人件費で張り替えてもらえる。こういうことが気軽にできるのが、インド生活の醍醐味だ。
ムンバイ在住時に購入したレザーのソファーも加わって、この家に引っ越してきた当初よりもずいぶんと「座る場所」が増えた。
ごちゃごちゃとした装飾は、極力控えている。しかしこのごろは来客も多く、くつろいで座れる場所がたくさんあるのは、悪くない。
何より、自分たちが、心地よい。
思えば27歳で独立して以来、わが自宅は常に、「オフィス兼」であった。
もっとも東京在住時には、自宅に仕事関係者を招くことはなかった。招けるような住環境ではなかったからだ。
しかし、ニューヨークに移って、ミューズ・パブリッシングを起業してからは、自宅が大切な打ち合わせの場の一つとなった。
それがたとえ狭いステュディオであったとしても。
朝起きてすぐ、寝具を畳んでクローゼットに押し込み、ソファーベッドを折り畳み、オフィスの体裁に整える。
フリーランスにとって大切なのは、気持ちの切り替えだ。そのためにも、「自宅で仕事をしている」というよりは、「オフィスに寝泊まりしている」という感覚を重視していた。
そして、時を経てインド。
インドの家には、日本とも、米国とも異なる「来客に対するウェルカムさ」がある。
人は気軽に、人を家に招く。そもそも、使用人ら外部の人たちの出入りが激しいインドでは、他者を家に招き入れることに抵抗が少ない、ということもある。
たとえばご近所さんがなにか用事で訪れたら、玄関先で話すのは失礼なこと。家の中に招き入れるのが一般的なのだ。
そんな習慣がすっかり身に付いたこともあり、我が家もまた、人の出入りが多い。
本日、日曜日。急に思い立って、友人夫妻を招き、我が家でサンデーブランチをした。小鳥や蝶が舞い飛び、風が心地よく、庭が本当に、気持ちいい。
しみじみとヤシの木の成長を思う。先ほど、この物件を購入した当初、まだ引っ越しをする前の写真を遡って見た。下は5年前の写真である。
見て。このしょぼいヤシの木。ヤシの木かどうかもわからんくらいだ。ハイビスカス(左端)と区別がつかないくらいの小ささだ。
ゲストに、このヤシの木の成長を語る際、
「5年前は、わたしの背丈くらいで、しかも幹は、わたしの太ももくらい細かったのよ」と説明している。
が、こうして見るに、わたしの太ももよりも細かったようだ。
上の写真も5年前。逆方向から見た様子だ。上空を遮る何もなく、木陰がなかったころ。
ヤシの木がこれだけ大きくなれば、葉が木陰を作り、芝生がなかなか育たなくなるのも仕方がないと、納得する。
右上は、L字型の庭の、目立たないエリア。我々のプチ遊歩道となっているのだが、ここにあった緑もすっかりなくなって赤土が露出している。
木陰がある庭としてのランドスケープを考え、大胆に庭のイメージチェンジを図りたいと思う昨今。
カゼボ(東屋)を造りたい、屋外ヨガのスペースも欲しいな。それからバーベキュースタンドも設置しよう……などと考え始めると、きりがなく。またしてもエネルギーを要することになりそうだ。
午後1時。ゲストが来訪し、スパークリングワインで乾杯。ひとしきり飲んだ後に、アルヴィンドが、
「バドミントンをやろうよ」
と提案。
やめようよ。暑いし、酔いが回るぞ。と思うのだが、ゲストは意外にも、いや案の定、乗り気。
アルヴィンドは張り切って着替えて来、皆の帽子まで用意。そういうわたしも、ネットやラケットを取り出して、準備万端。
何をやっているのだか。
みな裸足になってのダブルス。さほど長続きせぬものの、わたしも交替してもらい、「気持ち」身体を伸ばして、気分がよい。
この次は、飲む前に、やろうね。
芝生の上にピクニックマットやらゴザやらを敷いて、上に座るのもまた心地よく。やはり、このほどよい木陰はありがたい。
サンデーブランチというだけあり、食事も軽めに準備しておいた。
スリランカ気分がまだ抜けきらないわたしは、ファッションをスリランカンにまとめただけでなく、メニューもスリランカのヘルシーな青菜、ゴツゴラを意識したもの。
フェヌグリークの葉とジャガイモの料理、Alu Methiを作る。
このフェヌグリークはとても身体によい青菜。独特の風味と、ほのかな苦みがあるのだが、それが即ち旨味でもあるのだ。友人らにも好評だったので、レシピを転載しておく。
レシピと言いつつ、いい加減な素材の量。勘で調整していただきたい。なお、青菜は加熱するとしんなり小さくなるので、これは「こんなにたくさん?」というくらいに多くてノープロブレム。
■材料
・ジャガイモ 適量
・フェヌグリークの葉 どっさり一束
・油(マスタードオイルなど) 適量
・塩 少々
・キュミンシード 少々
・キュミンパウダー 少々
・コリアンダーパウダー 少々
■作り方
1.フェヌグリークの葉をちぎりって洗い、みじん切り(千切りでもいい)に。
2.ジャガイモは皮を剥き、適当な大きさに切る。
3.鍋に油を入れて熱し、キュミンシードを加え、はぜて香り立つまで炒める。
4.ジャガイモを加え、5分ほど中火で炒める。
5.塩、キュミンパウダー、コリアンダーパウダーを加えてなじませる。
6.フェヌグリークの葉を加え、よく混ぜる。
7.基本は水を加えないが、鍋底に焦げ付くのを防ぐため、少量をいれてもよい。
8.焦げ付きに気をつけて、時々混ぜつつ弱火で20分ほど蒸し焼く。
7.ポテトに火が通ったら出来上がり。
早くしっかり火を通したい場合は、ジャガイモを小さめに切る方がよい。
そのほか、チキンのバルサミコ酢&醤油の和洋折衷煮込みやアスパラガスのソテーなどを。
あとは新鮮サラダ。これにグラニースミスのスライスも加えた。軽くレモン汁をふりかけて、あとの味付けは、お好みで。そのままでも、ヒマラヤの岩塩をパラパラと散らすだけでも、いける。
我が家はややこしい調味料がほとんどない。オリーヴオイルやバルサミコ酢、胡椒などでシンプルに。
飲んで、食べているうちにも、緩やかに時間は流れて、日曜日の午後の静けさが心地よい。
間断なくしゃべりつつけて元気なのは女子ばかり。スリランカで買ってきた写真集などを眺めつつ、旅に思いを馳せつつ……。
新しいデイベッドの活用シーンを撮影するべく、ポーズを取ってみたり、小道具にお子様を登場させてみたり(子供、いい迷惑)、大騒ぎしつつ……
激写中。
気がつけば、日差しが静かに傾き始めるころ。緑の中で過ごす一日は、それだけでも気持ちがよい。一年を通して、この陽光が降り注ぐバンガロール。
一歩外に出れば、排気ガスだの騒音だの、なんだかんだと社会問題は満載だけれど、こういう日曜日を過ごせることは、本当にありがたいものだ。
さて、今週もまた、あれこれと盛りだくさん。一つ一つを丁寧に、対応してゆこう。