毎年恒例、初夏のニューヨーク。この街に住んでいたのは1996年から2001年までの5年間。それ以降ワシントンDCに移った後も、しばしば訪れていた。そしてインドに移住後は、グリーンカード(永住権)を保持し続けるためにも、米国滞在が必要とされ、毎年戻っている。もはや、旅というよりは、里帰り状態。正直に言えば、新鮮味はない。
それでも、毎年、旅行をするたびに、記録を残してきた。
わたしのキャリアの出発点は1988年、旅行ガイドブックの編集者として、である。コンピュータを使う以前から、旅の記録は克明にノートに記してきた。インターネットが誕生し、ホームページに記録を残すようになり、さらには、ブログに移行、インスタグラム、Facebookと、書き残す場所は変われども、かれこれ30年近くも、旅を記録することは、習慣になっている。
ノートにせよ、ネットにせよ、紐解けばいつでも、当時の記録に遡れ、旅の光景だけでなく、そのときどき、即ち過去の心情をも明確に思い出せるのは、「最新の自分」にとってかなり貴重な財産となっている。
しかし今回の旅行は、半月余りに及んだにもかかわらず、じっくりとラップトップに向かって書く衝動がわかなかった。インスタグラム経由でFacebookに投稿したものばかり。一般的には十分な量なのかもしれないが、自分としてはほとんど書いた気がしない。
書かねば、旅が完結した気もしない。
というわけで、自己満足と自己完結のために、インスタグラムの記録を転載しつつ、他にも残しておきたい写真と言葉を、改めて整理しておこうと思う。
滞在先は、かつての住まいがすぐ近くにあるブロードウェイ沿いのアッパーウエストサイド。右の高層ビルがかつて住んでいたアパートメント・ビルディング。右端に見えているのがリンカーンセンター。左手、大樹の向こうに見えるのが滞在先のHOTEL EMPIRE。ここ5年は、このホテルの利便性に惚れ、定宿としている。
マンハッタンのホテル事情はなかなかにタフ。狭いのに高いのが一般的。しかも設備が古かったり、機能的でなかったりというところも多い。このホテルも決して快適とはいえないのだが、わたしたちにとっては非常に地の利がいいのが魅力。毎年「他のホテルにする?」と相談しつつも、結果的にここに落ち着いてしまう。いつも、少し広めの部屋を予約している。
朝食は、タイムワーナーセンターにあるホールフーズ・マーケットで、新鮮なジュースやヨーグルト、果物などを購入し、インドから持参(!)しているお気に入りのシリアルや蜂蜜、コーヒーなどを準備し、部屋ですませる。旅行中は、外食ばかりなので、ほんの少しでも「家で食べている感じ」を演出する。
この時期、アメリカン・チェリーが旬。ニューヨークに移り住んだばかりのころ、このチェリーのおいしさに感動し、日本へのギフトサーヴィスを利用して、毎年実家に送っていたものだ。
部屋から眺める夜景。左側に見えているのがリンカーン・センター。観劇スポットが目の前というのは、本当に便利である。ミュージカルシアターが立ち並ぶミッドタウンのブロードウェイ周辺へも徒歩10〜15分。セントラルパークへも徒歩5分。コロンバスサークルへも徒歩5分。
曇天の朝、少し肌寒い中セントラルパークへ。夫は旅行中、雨の日以外は毎日、ジョギングに出かけていた。今年に入って、週に3回、トレーナーに来てもらい、真剣にトレーニングを始めた夫。体調はかつてなくいいようだ。
このところ、旅にでるとセルフィーでのツーショットをやらずにはいれられないバカップル。
夫が走っている間、わたしはパーク内をのんびりと散策。腰痛&膝痛さえなければ、わたしも走りたいのだが、走ると痛みが再発するのでウォーキングにとどめている。
この季節のニューヨークは天候が不安定。以前は4月下旬から5月初旬に来ていたが、徐々に日にちをずらして、今回は5月下旬から6月初旬。少しは暖かい日が増えたとはいえ、曇天の日は肌寒く、ジャケットは必携。しかし一度晴れると、真夏日になったりするから、ややこしい。
バンガロールでは楽しめないエンターテイメントを楽しむのは、ニューヨーク滞在中の恒例行事。リンカーンセンターがホテルの目の前ということもあり、オペラにバレエ、クラシックコンサート、そしてジュリアード音楽院の各種コンサートなどが気軽に楽しめるのは大きな魅力だ。
今回、リンカーンセンターのメトロポリタン・オペラで、アメリカン・バレエ・シアターの新作『ホイップクリーム』を観劇した。
セットもコスチュームも楽しくて、斬新なようで古典的、ユニークではあったけれど、今ひとつの迫力に欠けた。『くるみ割り』に続く作品と評されているらしいが、個人的には『くるみ割り』の印象が格段に強い。
主演の男性が怪我をしたため、代役だったということにあとで気づいた。それもまた、精彩を欠いた理由だったのかもしれない。代役の彼には申し訳ないが、あまりにも、オーラが薄かった。ともあれ、ホイップクリームみたいな服で出かけて、久しぶりにエンターテインメントを満喫の夜であった。
ミュージカルを観に、ホテルから9番街を南下。徒歩で15分ほども歩けば、シアター・ディストリクトだ。ヘルズ・キッチンと呼ばれるエリア。わたしたちが住んでいたころにはなかったレストランが、ここ数年のうちにもたくさんオープンしている。
楽しいコメディでも、ということで、GROUNDHOG DAY。昔、ビル・マーレイ主演の映画で見た作品。ちなみに邦題は『恋はデジャ・ブ』というらしい。なんだか、野暮ったい。
気象予報士の男性が田舎町に出張中、目覚めても目覚めても、同じ吹雪の2月2日を繰り返すという話。主演男優の声も風貌もすばらしくチャーミング(わずかに玉木宏風味入り)、楽しいミュージカルであった。