2泊のフィラデルフィア滞在を経て、昨日から郊外田舎ドライヴの旅に突入した。
昨日の午後、フィラデルフィアから車で1時間ほどのバックスカウンティへ。目的は、アルヴィンドがアスペン・インスティテュートでお世話になっている人生の「師匠」とも言うべくキースに会いに行くこと。
夕べは彼のファームハウスの近くにあるB&Bに宿をとった。上の写真は、今朝、その界隈を散策&ジョギングしたときのもの。視界に人間が見当たらない光景を見ることが稀なインドにあっては、この地に人間は生息しているのだろうか、と訝しくさえ思えるほどに、誰もいない。
ペンシルベニア州でのドライヴ旅の記録に入る前に、フィラデルフィアでの出来事も、軽く残しておこうと思う。
土曜日、アルヴィンドは終日、MBAの同窓会関連のイヴェントへ。彼はセミナーなどに参加していたが、わたしはランチとディナーだけに同行した。それ以外は、街で買い物をしたり、ホテルで寛いだり、比較的ゆっくりと過ごしたのだった。
街角でおしゃれなイタリアンカフェを見つけた。新鮮なクリームとベリーがデコレーションされたカノリとカフェラテでコーヒーブレイク。実はカノリを食べるのは初めてのこと。クリームが多すぎるかと思ったが、ほどよい甘みとコクがあとを引いて、しっかり完食。おいしかった。
米国の大学やMBAの多くは、5年おきに大きな同窓会が開催している。2000年にMBAを卒業した夫は、クラス2000というカテゴリー。2005年、2010年にも同窓会が開催された。2005年に参加して以来10年ぶりだ。
15年前、夫と親しかった友人とも顔を合わせ、わたしもまた、旧交を温めた。
翌日の日曜日は、バーンズ・ファウンデーションへ。かつては郊外にあったのが、フィラデルフィア市街に移設されており、ホテルから徒歩圏内であった。
基本的には予約制のミュージアム。約1カ月前に、バンガロールからネットで予約をしておいたので、つつがなく入館できた。
バーンス・コレクションに関する詳細はこちらをご覧いただければと思う。
■THE BARNES FOUNDATION(←CLICK!)
■バーンズ・コレクション (←CLICK!)
諸々、書き込むと長くなるので、備忘録としてのメモを。
・セザンヌの球体の果実、まろやかさと力強さ、郷愁の独特。
・ルノアールの豊満な裸婦らの肌色サーモンピンク。
・モネの陽だまりの中の冷たく儚く無垢な犬と子供。
・ゴッホの過剰な絵の具のうねりうねって強大な吸引力。
・グレコの赤、黄色、青い衣服の輝き神々しく静謐。
・ルソーの雨林、野生の中で悪い夢を見ている長い夜。
・モジリアーニの女性の首筋滑らかに長く裸体の背中の憂い。
・ボッシュの魑魅魍魎は悪夢か。浮世の人事こそ悪夢か。
ランチはミュージアムのレストランで。出会った当初から食べ物の趣味だけは一致する我々。食べたいものは大抵同じ。昔は異なる2種を頼んでシェアしていたが、このごろは、一番食べたいものをそれぞれに、のコンセプト。
ゆえに、二人揃って注文するは、懐かしきクラブケーキ。チェサピーク湾で穫れるカニ。ワシントンD.C.在住時には、よく食したものである。
クラブケーキはカニ肉たっぷり、ポテトやシシトウの付け合わせも美味で、とても満たされたランチであった。
バーンズ・ファウンデーションで数時間をゆっくりと過ごしたあとは、フィラデルフィアを離れ、バックスカウンティへ。目的は、夫がアスペン・インスティテュートのプログラムでお世話になった、ディレクターのキースとその妻シーナの暮らすファームハウスを訪問すること。
彼らの住まいにほどちかい場所にあるB&Bに予約を入れていたので、まずはそこへチェックイン。
広大な田園風景広がるただ中。鳥のさえずりが響き渡る、なんとも言えず平和な場所。あいにくクイーンサイズのベッドしかなく、窮屈なのが難であった。
夕刻、宿から10マイルほど離れたキースとシーナの邸宅へとドライヴ。
長閑な田園風景。途中で、鹿が道路を横切る。野うさぎが路傍で跳ねる。動物たちを見るたびに、NORA&ROCKYを思い出す。元気にしているかなあ。
とてつもなく広いフロントヤード。前庭。すでに、ファームハウスの敷地内。
かつて夫妻は、西海岸に暮らしていたらしいが、3年前にこの地が気に入り移住したらしい。が、冬の寒さには辟易しているらしい。
キースは87歳。14歳年下のシーナと再婚したのは、彼が58歳のときだったらしい。彼には前妻との間に子供が4人、彼女には前夫との間に子供が2人いる。
彼らの人生の話の、ほんのわずか断片を聞くだけでも興味深く、数時間が瞬く間に流れる。
かつてブロードキャスターだったキースは、エミー賞を4度も受賞した経験がある。UCLAで教授をしていた時代もあった。49歳でフルマラソンをはじめ、以来96回もレースに出場した経験があるのだとか。100回にまで至れなかったのは、心臓に疾患が見つかったから、らしい。
アルヴィンドは彼を非常に尊敬しており、アスペンのプログラムでも、人生のさまざまを教わったらしい。そんなこともあり、敢えて彼に会うべく、今回の小旅行だ。
シーナは英国生まれ。ジャーナリストとして若かりしころから精力的に活動。つい最近、大学で脳神経学の勉強をし、卒業したばかりとのこと。
おいしいチーズとワインをいただきつつ、語り合うひとときの心地よさ。初めてお邪魔するお宅なのに、とてもくつろぐ。シーナのインテリアのセンスもまた洗練されていて、華美すぎず、良質な感じが随所に。
アスペン・インスティテュートのメンバーを招いてのセミナーなどもここで行うという。そのセミナールーム兼ライブラリーを見せてくれるというので隣の棟へ。
この部屋がまた、いい。本に囲まれ、座り心地のいいソファーに腰掛けると、ずっと寛いでいたくなる。この部屋で、人々は議論を交わしつつ、時を過ごすのだろう。
ワインとチーズのあとは、シーナが準備してくれていた料理をいただく。
毎日近所で開かれるオーガニックのファーマーズマーケットで買ってきたのだという新鮮な野菜がたっぷりのサラダ。
そして、チキンと野菜の煮込み。カリフラワーのソテー。
どれも、シンプルながら心のこもった、優しい料理。改めて、おもてなし料理というものについて、考えさせられるいい経験だった。
品数が少なくても、心に刻まれる良質のものであれば、むしろ、その方がいい。あれこれと、たくさんの種類がなかったとしても。
デザートはレモンケーキのサワークリーム添え。たっぷりのブルーベリーやブラックベリーがまた、おいしい。今回の旅で一番、おいしいディナーだった。
キースとシーナの「運命的な出会い」の話を聞くも楽しく、彼らもまた、我々の出会いの話に聞き入り。
「ミホとの出会いは運命的だったと思うかい?」
と、キースに尋ねられ、口ごもる夫。考え込む夫。
おいおい!
87歳の人生経験豊富な人が口にする「運命」という言葉は、我々が口にするそれとは、まったく異質の重みを感じさせるがゆえか。
彼らの出会いの背後には、かなりの波乱があったであろうことを感じさせもして、人生は、おとぎ話。
……映画『ホテル・ニューハンプシャー』(ジョン・アーヴィング原作)を見たくなった。あるいは、『ビッグ・フィッシュ』(ティム・バートン監督)。
今の二人の見るからに、の穏やかさ。
一方で、激しさもまた見え隠れして、人間は死ぬ瞬間まで、生き生きと生きているべきものなのだ本来は、思う。
心身の健康。結局は、そこがすべての始まりであり、基本。
ともあれ、すばらしき人々に出会う機会を得られたことに、感謝である。
■Keith Berwick (←CLICK!)
今朝は6時半ごろ、さまざまな鳥のさえずりに、叩き起こされた。せめて7時半までは寝かせてくれとベッドの上でごろごろしてみるも二度寝できず、起きだして、朝食前に近所を散策することにする。
この、果てしのない緑の光景。気分が突き抜ける。緑の匂いを含んだ空気の、なんと清々しいこと!
この広大な光景を前にしては、駆け出さずにはいられない。
アーユルヴェーダの治療で完治しているかにみえるが、しかし腰痛の種を持っている我。はずみで再発するのを恐れ、普段はウォーキングしかしないのだが、たまに若かりしころの全速力が懐かしくなる。
今、全速力で走ったら、あちこち、痛めること必至。が、軽くジョギングなら、たまにはいいだろう。
……と言いながら、調子に乗って走る。走らずにはいられない。大平原だもの。
49歳でフルマラソンを始めたという、夕べのキースの話に影響を受けたともいえる。
ともあれ、『太陽にほえろ』における犯人を追いかける刑事の走りのフォーム(腕を大きく振ると速く走っているように見えると渡辺徹が先輩刑事に教わったと話していた遠い昔)を模した、思い出の一枚。
頭がライオン丸。
……ライオン丸って、何ですか? (by うさぎのアリス)
B&Bの猫。よそんちの猫を見るとまた、尚更思い出されることよ、NORA&ROCKY...
ところでこの車が今回の旅の足。いつものHERTZで借りた。車種指定ができず、KIAという韓国の自動車メーカーの車を初めて運転することに。シロクマ的風貌の車。好みではないが、特に問題なく快適にドライヴできている。
1時間ほどのドライヴで到着したのは、ブランデーワイン。この、いかにも酔っぱらいそうな名前の街にあるロングウッドガーデンを訪れるのが、もう一つの旅の目的。
ホテルにチェックインする前に、界隈で評判のピッツェリアへ。
かつての米国では、郊外のレストランのサラダといえば、ウマの餌か、というくらいのヴォリュームで、しかもドレッシングだらけというのが定番だったが、この上品な量。オーガニックのグリーンらしい。くるみのローストも美味でうれしい。
ここ10年で、米国の外食事情もかなり変化したことを実感する。
バーベキューチキンのピザもシェア。これもまた、クラストが香ばしく、とてもおいしかった。チキンが多すぎたので残してしまったけれど。
このホテルには2泊滞在。のんびりと田舎の空気を楽しめる。キッチン付きのスイートは、非常に快適。夜は近所のスーパーマーケットでワインや食料を調達し、ゆっくりと部屋で夕食を楽しむことにした。
チェックインして直後、雨が降り出した。なんとも際どいタイミング。午後はホテルでゆっくりと過ごすことに。
……かくなる次第で、食欲は戻りすぎるくらいに戻り、もう2週間前に入院していたことなど夢のよう。健康的な食事をおいしく食することができる有り難さを、心底、痛感する。
さて、明日は降水確率50%。せめてロングウッドガーデンにいる間は、雨が降らずにいて欲しいものだ。無数の花々に出合えることを楽しみに……。今夜は早めに眠りましょう。