6月も半ばを過ぎ、あの暑かった盛夏の4月が幻のように、モンスーンの時節となったバンガロールの日々過ごしやすく。朝晩はひんやりとした高原の風が庭を包み、夜の雨を経た朝には、瑞々しい緑が朝日にきらめく。
猫らは足の裏を濡らしながら庭をかけまわり、何とも言えず、平和なひととき。毎日、大中小の、何かしらの事件が起こる日常でもるからこそ、束の間の平穏がありがたくもある。
今の時節のインドの風物詩はマンゴー。その土地その土地で、そのときどきにおいしい旬のマンゴーが出回り、いくつもの種類を味わえる楽しみがある。わたしはといえば、インドに移住した当初の数年間はあれこれと試していたものの、このごろはすっかり情熱を失い、マンゴーに対するありがたみが減っている。
金曜日はミューズ・クリエイションの活動日である。先週は参加者が24人と少なめだったので、かつてはしばしば焼いていたタルトを焼くことにした。
長方形に焼いたタルト生地に、カスタードクリームを載せ、今、バンガロールでおいしいマリカ・マンゴーを載せ、ザクロを鏤め、好みで生クリームをトッピングする。
横(短い辺)を3、縦(長い辺)を8等分して24人分。これ以上、小さくカットすると食べた気がしないので、一定の大きさを維持するべく、24人以内、である。
実はこの日、リーダーとして、ミューズ・クワイアの成長に貢献してくれたメンバーが最後の参加であった。近々、日本へご帰任である。
発足した4年前は、「カラオケ」を歌いつつ練習するなど「緩いところ」からスタートしたミューズ・クワイアは、徐々にメンバーが変わりつつも、少しずつ難しい曲に挑戦しつつ成長してきた。
もちろん、これまでもそのときどきで、懸命に練習をしてきたが、彼女の専門的で的確な指導によって、大きく成長したように思う。指揮者がおらず、一定した指導者がいないグループではあるが、一度学んだ「よきところ」を、これからも引き継ぎつつ、成長できればと思う。
さて、昨日日曜日は、ミューズ・リンクスのインドライフスタイル・セミナー入門編を実施した。このセミナーは、毎度のことであるが、時間があればあるだけ語れてしまうものであり、最低でも実質3時間半はかかってしまう。
参加者の様子を伺いつつ、途中でコーヒーブレイクをはさみつつ、夜まで残れる人には残ってもらい、ビール&スナック類を出して懇親会という流れだ。
金曜に引き続き、土曜はこれもまた比較的久しぶりに、ロールケーキを焼いた。いつものニルギリーズのビニル袋入り生クリームを使用したが、いつもに比べると酸味が少なめで、乳脂肪分の濃度が高めだったこともあり、加えたラム酒との相性もいっそうよくなり、シンプルながらも美味であった。
濃厚なセミナーのあとは、よく冷えたビールで乾杯。
この日、参加者の一人がミューズ・エキスパッツのメンバーで、彼から「チキンスープ」を熱く所望されていた。そもそも、セミナーの実施に際して、なぜチキンスープのリクエストなのか。という疑問はさておき、朝から丸鶏2羽を使って、じっくりとスープを煮込んでおいたのだった。
これがやはり、他の参加者にも大好評。我が夫を含め、みなおかわりをして、瞬く間になくなってしまった。
Freshtohome.comでケミカルフリーの鶏肉を入手できるようになってからは、今まで以上に、「ヘルシー度」の高い鶏スープを実現できるようになり、うれしい。ヒマラヤの岩塩、しょうゆ、バルサミコ酢。これだけで、すばらしいチキンスープが作れる。シンプルで、幸せだ。
このほか、自家製鶏ハム&トマト、蒸しトウモロコシ、蒸しインゲン、水切りヨーグルトのドライフルーツ添えなど、朝のうちに準備していたものを出す。
シンプルでヘルシーなおつまみは、あっというまに消えて行く。聞けばランチを食べずにいらした方も少なくなく、それではお腹もすくだろう。2時開場、2時半開始なので、みなさん当然ランチをすませているだろうと思っていた。
今後は、ちゃんと食べてきて欲しいと告知せねば、である。
立ったまま、数時間に亘って語り続けるセミナーは、それなりに体力&精神力を使うものであり、翌日(本日)は毎度、だら〜んと過ごしてしまうのであるが、せめて2カ月に1度は実施して、少しでも多くの人に多様性のインドの断片を伝えたいと、改めて思う。
今回の参加者は単身赴任の男性やインターンの女性たちなど、みな働きつつ暮らしている人たちで、「自炊」もたいへんなご様子。また近々、『インドでの食生活と健康管理:調理実習付き』を実施することになりそうだ。
実は先週の日曜日、ミューズ・クリエイションのメンバーのひとりから、『食生活アドバイザー』なるものの存在を聞いた。サイトを見てみると、なかなかに興味深い。インドでの食生活を語る際には、アーユルヴェーダの世界観などを参考にしつつ、自分の経験値に基づいて語っているが、日本的な知識を身につけておくに越したことはない。
ということで、Amazon.jpで早速テキストを注文したところ、昨日到着した。ざっと目を通してみたところ、食にまつわるさまざまな事柄が、テーマごとにまとめられて、非常に興味深い。試験は日本で実施されているので、受験することは難しいと思われるが、テキストをしっかりと学んでおけば、今後、役立つことは間違いなさそうだ。
歳を重ねるごとに、食生活の重要性を肌身に感じる。若いときからの蓄積が、現在の健康を左右する。学ぶに価値のあるテーマだ。
ところで先週の木曜日は、市内のアートスクールへ久しぶりに赴いた。現在、インド各地の手工芸品が一堂に会するバザールが開催されている。
インド移住以来、この手の展示会には「飽きるほど」に足を運んできたが、しかし、そのときどきで必ず掘り出しものがあり、また継続して購入したいお気に入りの品もある。オープン初日は開店していない店もあるので、普段は避けたいところなのだが、今回はその日だけが都合がよかったので、午後、足を運んだ。
紙袋を模した陶器製の器は、我が家ではフォークやスプーンなどを入れるのにも使っている。今回、かわいらしいデザインのものが増えていた。
バンガロール在住、陶芸家の青年が自ら、店を出していた。和食にも合いそうな器もみられた。
カラフルな革製のスリッパ。我が家は「土足」につき、ゲストにスリッパを出さないが、土足禁止のご家庭では、このようなスリッパをゲスト用にしてもいいのではないかと思う。かわいい。
以前から、こまごまとしたものを調達してきたニームの木の工芸品店。ニームは殺菌効果もある木。その葉は従来、歯みがきに使われていて、今でもニーム配合の歯磨き粉はインドで一般的だ。
この小さなスプーン。調味料などに使ったり、ゲストがいらしたときに、マスタードなどや薬味を出す時に添える便利な存在。以前買ったものが、少しずつなくなっていたので(小さいのでゴミと間違えて捨てられているのだと思う)、調達。表面が滑らかになって、微妙に進化していた。
そして劇的に進化していたのは、このマニプールの石鍋。もう、10年来の顔見知りのお姉さんと、久しぶりと挨拶を交わす。彼女は北東インドのマニプールから、何日も列車にゆられ、こうして行商に来ているのだ。
このウェザーストーンという石の粉を練って焼成し、作られているこの伝統的な石鍋は、素材の味や旨味を引き出すと同時に、石に含まれるミネラルのようなものも加わるらしく、料理がおいしくなる。
たとえば、野菜などを炒めると、緑が鮮やかに、おいしそうに仕上がるのも特徴だ。炊き込みご飯、煮物、炒め物とさまざまな用途に使えるのだが、「割れやすい」という欠点がある。最もよく使っていたサイズの鍋がダメになったのを機に、このごろは他の鍋も使用頻度が減っていた。
今回、鍋の見た目が、なにやらメタリックに見えて様子が違っていることから、彼女に尋ねたところ、従来は900℃で焼成していたのを、最近1200℃で焼いていることから、格段に丈夫になったのだという。
なんでも、シカゴに販売代理店があり、米国でも販売しているとのこと。ゆえに、強度を改善したようだ。今までは、調理が終わったら、なるたけ早めに別の器に移してすぐに洗うなどしなければならなかったが、今では残り物を鍋ごと冷蔵庫に入れて、翌日温め直すという使い方さえできるようになったとのこと。
これはいい機会である。使用頻度の高かったものと同じサイズの鍋を購入した。使うのが楽しみだ。
このようなバザールでは、必ず購入している天然素材の石鹸。消耗品ゆえ、いつも多めに購入している。今回は初めて見る商品だ。使い心地がよければ、また改めて紹介したい。
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2016年も半ばを過ぎて。確実に積み重ねてきた事柄に、目を向けよう。
未来に希望を託すよりもむしろ、いまここにある、一日を、確かに。